■女優としての覚悟を決めた朝ドラ 20代は「がむしゃらだった」
多部は、来年デビュー20周年を迎える。近年はドラマ『これは経費で落ちません!』(2019)、『私の家政夫ナギサさん』(2020)などでコメディエンヌとしての才能をたっぷりと発揮しつつ、映画『空に住む』(2020)では現代女性の孤独や喪失感を繊細に表現するなど、ますます魅力的な女優として活躍を続けている。
女優としての転機となったのが、NHK連続テレビ小説『つばさ』(2009)で朝ドラのヒロインを演じたことだと明かす。多部は「20歳で朝ドラをやらせていただいて。大学に通いながら撮影をしていたので、とても忙しかったですね。周囲の友達は就職活動を始める時期で、『エントリーシートを出さなきゃ』という話をしたりしていて。その頃の私はこのお仕事をずっと続けていくとは思っていなかったので、『私は毎日撮影現場に通っているけれど、どうするんだろう。就職活動しなきゃ』と感じている部分がありました」と告白。
「でもご一緒した朝ドラの共演者の方々は、お芝居が大好きな方ばかり。『本当に楽しくてこの仕事をしているんだ』というお芝居にかける思いを聞いていると、『こんなにステキな方々の中で主演をやらせていただいているのに、就職活動のことを考えたりしているなんて失礼なんじゃないか』と感じるようになりました。そこできちんとお仕事として認識して、しっかりとお芝居に向き合わないといけないと覚悟しました」と述懐する。
それからは「とにかくがむしゃらだった」という多部は、「忙しいことがすべてという感じで、“この作品が終わったら、次はこれ、次は…”という20代を過ごさせていただきました。お休みがあったとしても、常に頭には次の作品がある状態。次の作品を頑張るために、息抜きとして休んでいるようだった」と回想。
「今年は環境が大きく変わって、あっという間に1年が過ぎていきました。これからはいただけるお仕事、演じられる役も変わってくるはず。より一つ一つのお仕事を大切にして、丁寧に向き合っていきたいです」と決意を新たにし、「そんな中でもこの作品やキャラクターは楽しそう、この共演者の方、スタッフの方とご一緒したら楽しそうなど、“面白そうだな”という直感を大事にしていきたいです」と輝くような笑顔を見せていた。
1989年1月25日、東京都出身。2002年に女優デビュー。2005年、映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞。2009年には連続テレビ小説『つばさ』のヒロイン・玉木つばさ役に抜てきされる。『君に届け』(2010)、『あやしい彼女』(2016)など数々の映画でヒロインとして存在感を発揮し、映画、ドラマ、舞台など幅広く活躍。待機作として『流浪の月』(2022年公開)が控えている。