フジテレビ系バラエティ特番『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2021』が、今年もクリスマスイブの12月24日(25:15~27:15)に生放送される。

明石家さんまふんする“明石家サンタ”が、クリスマスにひとり寂しくしている視聴者の「今年起きた不幸話」を募集し、採用されれば明石家サンタから生電話。合格すれば豪華プレゼントが当たるという、今年で31年目を迎える名物番組だ。

今回は、1990年の第1回から演出を担当する三宅恵介ディレクターが「番組の肝が凝縮されている」という2017年のVTRを見せながら、『明石家サンタ』の魅力を解説。この時代に“ハガキ”での募集にこだわる理由とは――。

  • 『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』演出の三宅恵介ディレクター

    『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』演出の三宅恵介ディレクター

■“笑いの神が降りてきた”回を見ながら解説

この年はトップバッターで中学1年生の女の子が、80代のおばあちゃんが電話で彼氏に破廉恥なことを言っていたのを聞いてしまった話で、いきなり車を獲得するという波乱のスタート。その後も、さんまの大ファンが矢継ぎ早に小ネタを挟んで折れたさんまが合格を出すも「ハズレ」を引いてしまったり、当時経営危機に陥っていた東芝の社員が職業を名乗っただけで合格するもハイアールの家電を当ててしまったりと、屈指のハプニング続出回で、三宅Dも「本当にすごい番組をやらせていただいて、幸せだなと思います」と大満足だ。

その上で、「俗に言う“笑いの神が降りてきた”という回なんですが、この要因は生放送である、素人の方と電話でやり取りするということがポイントです。テレビの原点、バラエティの基本が網羅されているんです」と解説。

「最初に一番高価な賞品が中学生に当たるなんて、台本には書けないです。この“予定不調和”がバラエティに大切な要素で、『この後どうなるんだろう…』という期待感が生まれてきます。それと、素人さんの間延びしたトークも生放送だから聞いていられるんですが、2時間の番組を4時間収録して、編集で余計な部分を全部排除して、きれいにまとまっちゃうと、何の魅力もなくなっちゃうと思うんです。素人扱いの第一人者のさんまさんがいろいろ振りをやっていくというのがうまくハマりました。毎年本番が終わると、いつもさんまさんと『素人さんはすごい。勉強になる』と話をするんです。そのおかげで、こうして恒例イベントになったと思います」

■メールだとウソや他人からの話が多くなる

毎年、クリスマスイブに向けてハガキを募集し、三宅Dと放送作家で全て目を通し、まずは50枚程度に絞る。そこから放送の10日前あたりにさんまと20枚前後を選び、スタッフが投稿者に連絡して生放送中に電話に出られるかを確認。こうして10~20枚弱のハガキを用意して本番に臨む。

採用されやすいのは、なるべく簡潔なネタで「起承転結がはっきりしているほうが、伝わりやすい気がします」。さらに、「あんまり深刻な不幸話は外します。そういう悩みごとは専門家に相談してもらうほうがよいので、“自分にとっては不幸だけど、他人には笑いになる素材”を選んでいます」という。ちなみに、子供の投稿が採用された場合は、トップバッターにして、なるべく浅い時間に読む配慮をしているそうだ。

合格の秘けつは、さんまいわく「ネタは3割、キャラクター7割」。放送前の投稿者への連絡は電話で行い、そこでキャラクターをある程度把握するものの、「いざ生放送で電話でやり取りするとなると、素人さんなので、用意した不幸話をちゃんと話すのは難しいんです」という。

「でも、そこがいいんです。プロのお笑い芸人さんのようにスラスラと言ってしまうと、テレビを通すと本当の話でも『うまくいきすぎてる』『ネタじゃないのか?』と思われてしまって、笑いになりづらい。生放送で、さんまさんと八木(亜希子)さんが素人さんの話を受けて、しかも対面じゃなくて電話だということが、番組が続いてきた理由だと思います」と、時代に逆行するような程よい距離感や不便さに、ハプニングを生む下地があるようだ。

時代との逆行と言えば、事前の応募をハガキに限定しているという点も挙げられる。そこにこだわる理由は「メールだと、ウソや他人から聞いた話が多くなると思うんです。でも、ハガキという書く作業をすることで、少し盛ることはあるかもしれないけど、そこで“罪の意識”が生まれるだろうと(笑)」という考えから。

「私がやっている『はやく起きた朝は…』という番組も、“不平、不満、グチ”をずっとハガキで募集しています。たまに、面白いネタを番組ホームページから紹介することもありますが、メッセージを簡単に送れてしまうので、こちらも簡単に引っかかっちゃいけないなと思うんですよね。“広がると薄くなる”…そこがハガキにこだわる理由です」