日本テレビが10月にスタートした放送の「リアルタイム配信」(放送同時配信)は、フジを含む各局で準備が進められている。これについては、「今後の大きな視聴者サービスとともにビジネスチャンスも含めて、どのようになっていくというのは未知数なところがありますが、明確にあるのはテレビのコンテンツに触れるチャンスが、特に若年層で増えるということですよね。そういう方たちに、『テレビ発の面白い番組あるじゃん』という気付きになって、継続視聴につながり、ファン化につながり、局のブランドイメージの向上につながる、まで精力的に取り組んでいきたいです」と意欲。その上で、「接触のチャンスが広がるということは、ちゃんと魅力的なコンテンツを作らなければいけないという裏返しでもあります」と気を引き締めた。

編成に戻ってくるのは5年ぶりとなった中村氏だが、こうしたリアルタイム配信を含め、以前に比べて業務内容は「だいぶ変わりました」と驚きを隠せない。

「地上波のタイムテーブルを編成するだけでなく、配信、二次利用も含めて、マルチな視点を必要とされることがすごく増えたなと思います。これを追求すると山ほど仕事があるので、5年前とは圧倒的に違います」といい、「仕事が多様になった分、メディア環境に適した部署が生まれて、編成部と一緒に戦略を練っていくという形になりました。各局もそうだと思いますが、組織の形が迅速に変わってきていますね」と実感を語る。

■女性制作者の活躍でコンテンツ多様化に

今回、民放キー局初の女性編成部長となったが、その意識は「あまり考えたことはないです」とのこと。制作現場でも以前に比べて女性の活躍が目立ってきているが、「もっと女性が増えていいと思います。それは明確に思っています」と強調し、「例えば子育てを経験している女性プロデューサーもいますし、“生活の音”といったものを想像できる制作者は、番組作りにおいて特徴が出るのではないかと思うんです。そうした様々な視点を持った女性制作者がどんどん増えていくとコンテンツにも多様性が出てくると思います」と期待を示す。

クリエイター育成の面では、水曜深夜に編成している単発枠『水曜NEXT!』(毎週水曜24:25~ ※関東ローカル)を重要な位置づけとして認識。「未来に向けての投資枠であり、そこでチャレンジできるディレクターやプロデューサーの育成枠としても、とても大事にしています。私個人としてもこの枠の番組は楽しみにしていますし、今後も絶対残していきたいですね」と力説した。

●中村百合子
1969年生まれ、長野県出身。東京外国語大学卒業後、93年にフジテレビジョン入社。制作部局や編成部でバラエティ・ドラマ・情報系番組の企画・制作を担当。『クイズ$ミリオネア』『1リットルの涙』、12年には『ノンストップ!』などを幅広いジャンルの番組を立ち上げた。17年からグループ会社のディノス・セシール(現・DINOS CORPORATION)に出向し、テレビ本部長(動画通販統括)→CSO(チャネル戦略ディビジョン担当)。21年7月1日付で帰任し、編成制作局局次長職兼編成部長を務める。