木月:利根川さんから見て、板谷さんのときと浜崎になって何が一番変わりました?
利根川:芸風が違うというのもあると思うんですけど、板谷さんのときのほうが全体的にゆったりしていた感じがします。
浜崎:年も離れているので世代の違いがあるかもしれないですね。私が担当し始めた頃はAKB48さんとかが全盛になってダンスをどうカッコよく撮るかという時代になってきて、その動きを計算するのがより楽しいと感じて撮っている部分もあると思います。撮り方って、視聴者の方がどこまで感じられているか分からないですけど、カメラのドリー(=移動)の仕方とか、ズームのかけ方とか、カットの終わり割り方というのが、人によって全く違いますよね。
利根川:違いますね。
木月:どのように違うんですか?
利根川:板谷さんが作ってきた歴史で言うと、やっぱりCXさんは1カット1カットじっくり撮るというところが基本としてあるなと思います。そして、美的センスがすばらしい。奥行きの見せ方とか色使いがすごくきれいなので、下手に小細工しなくてもすごく画持ちするんですよね。
浜崎:『FNS』は越野幸栄さんという方がずっとセットデザインをやられているので、皆さんが『FNS』と言われて思い浮かべるシャンデリアのセットは幸栄さんです。他にも『僕らの音楽』などをやられています。
木月:僕も『スモール3』(出川哲朗、爆笑問題・田中裕二、ナインティナイン・岡村隆史)で『FNS』のスタジオに行ってびっくりしたんですけど、奥行きがすごいですよね。スタジオを斜めに使っていて、それも奥行きを作るためだと聞きました。その分、横の幅が取れないんだけど、それでも奥行きのほうが大事なんだと。
浜崎:やっぱり奥行きが命なんで。ライトの当て方を変えたりして、重層的な背景を作ることができるんです。
利根川:奥行きがないところにも奥行きがあるように見せる技術も、すごい上手だと思います。
■今や名物のミュージカルを取り入れるまで
――12月1日には『2021FNS歌謡祭 第1夜』が放送されますが、今年の見どころはいかがでしょうか?
浜崎:第1夜は王道の『FNS』でありつつ、他局の音楽番組とは全く違うラインナップだと思います。初登場で言うと、マツコ・デラックスさん、中井貴一さん…という面々です。およそ音楽番組とは思えないかもしれませんが(笑)、きっと皆さんにビックリしていただける歌なので期待していただきたいです。もちろんYOASOBI、King Gnuなど今を代表するアーティストもいつつ、劇団四季の『アナと雪の女王』から『ウマ娘』まで、とんでもない幅広さでお届けします。
利根川:『FNS』はミュージカルにも力を入れてやってますよね。
浜崎:あれは『MUSIC FAIR』をやってる島田和正がやってるんです。
木月:ミュージカルを取り入れるときは議論に?
浜崎:まずは『MUSIC FAIR』でちょっとずつ試していったんですよ。いきなり『FNS』でやるのは怖いので、『レ・ミゼラブル』みたいな超大作から始めて、有名作品だったら1回入れてみようかという感じで。今では特色になりましたね。
次回予告…~音楽番組編~<2> カット割りに込める思い、“会心の歌唱映像”とは
●利根川広毅
1977年生まれ、千葉県出身。千葉商科大学卒業後、制作会社を経て、フリーランスとして『Music Lovers』(日本テレビ)、『グラミー賞授賞式』(WOWOW)などを演出。13年に日本テレビ放送網へ入社し、『LIVE MONSTER』『バズリズム』『THE MUSIC DAY』『ベストアーティスト』などを担当。18年にテレビ朝日へ入社し、現在は『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』『イグナッツ!!』のプロデューサーを務める。
●浜崎綾
1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『新堂本兄弟』『FACTORY』『僕らの音楽』『ピカルの定理』『水曜歌謡祭』などを担当し、現在は『FNS歌謡祭』『MUSIC FAIR』『KinKi Kidsのブンブブーン』『オダイバ!!超次元音楽祭』で総合演出・演出・プロデューサーなどを務める。
●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『バチくるオードリー』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。