――高畑さんは大阪ご出身ですが、同じ関西でも京都はちょっと違うと感じる部分もありますか?
気質は全然違いますね。大阪の人間は結構思ったことをそ丸のまま言うし、裏がないので。100%というわけではないけど、むしろ「いいことも悪いことも包み隠さずストレートに言うのが礼儀」みたいなのところがあって。なので、「あの時はこう言われたけど、実はこうだったのかも……」みたいに、相手の心の裏を読む習慣が私にはなかったんですが、京都の文化は少し遠回しに柔らかい言葉で刃物を包む感じがあるんです。ドラマの中にも菜穂が京都の洗礼を受ける場面が要所要所に登場しますが、そのヒヤっとする瞬間みたいなものは、この作品世界においても欠かせない気がしますね。でもその一方で、京都の方って、仲良くなると本当によくして下さるというか。最初の入り口が大切なんですよ。菜穂もドラマの後半になるにつれて、京都の方たちの温かさに支えられていくので、このドラマには京都の怖さと温かさが映っているんじゃないかと思いました。
――撮影中にも改めて京都らしさを肌で感じられたりしましたか?
私は大阪人なので割とペタっとしてるというか。好きって言ったら好きだし、嫌いって言ったら嫌いしかないけど(笑)、京都は人も、場所も、大阪より奥行きがあるというか、もうちょっとグラデーションがあるような気がします。撮影中は1ヵ月半ぐらいずっとホテルに滞在していました。昔から母とよく京都旅行はしていたんですが、観光名所はとにかく混んでいるイメージで。でも今回はコロナもあって全然人がいなくて、"生きている者がいない風景"がものすごく新鮮で。桜や紅葉の時期だけじゃなく、新緑の京都も素敵でした。東京で見る緑とはちょっと色味が違うんです。水彩画で描くとしたら、東京だと3色くらいで描けるけど、京都だと12色くらい必要な感じというか。景色を眺めるだけで1日過ぎてもいいと思いながら滞在してました。
――本作は、ある意味、自分にはない才能に対する嫉妬の感情を真正面から描いたドラマであるとも言えると思うのですが、高畑さんご自身の中にもそういう感情が芽生えることはありますか?
この世界にはすごい才能のある方たちがたくさんいるので、やっぱり自分にはないものを持っている人には憧れますよね。でも年齢を重ねてくるにつれて、たとえば1本のドラマを作るにしても、同じベクトルのすごい人だけ集めてもドラマにならないけど、違うベクトルの人たちが集まると面白くなるんだなぁというのがだんだんと分かるようになってきて。なので今は「私もいつかこうなりたい!」というよりも、「こういうところは足りてないけど、こういうところはいいからこっちを伸ばそうかなぁ」みたいに、木の枝を剪定していくような感覚に変わってきたところがあるのかもしれません。とはいえ役を与えていただいて、そこからどうやって演じるかを考えていく俳優からすると、ドラマの脚本を書かれる方のように0から1を生み出せる方には、常に圧倒的な憧れがありますね。
――0を1にするのはどんな才能だと思いますか?
私は独りでいるのが好きなわりに、人との関わり合いのなかから生まれてくるものに驚いたりする瞬間にもすごく幸せを感じるから、きっと俳優の仕事をやっているんだと思うんです。でも0から1にする方たちは、常に自分との闘いになるわけじゃないですか。このドラマの樹のような画家さんもそうですが、脚本家さんとか、漫画家さんとか、小説家さんとか、部屋に1人でこもって創作することの孤独たるや、きっとすさまじいんだろうなぁって。0から生み出したもので多くの人を感動させられたりする人には自分は絶対なれないからこそ、逆に素直に憧れられるというか……。うまく言葉にはできないのですが、それは嫉妬のような感情とはまたちょっと違うものなんですよね。
――では最後に、ちょっとまだ気が早いですが"2021年の高畑充希"を一言で表わすとしたら?
最近「もう1回初心に返ろう」みたいな感覚があるんです。自分はエンタメを観るのも好きだけど、やっぱり自分でやるのも好きなんだなって、とてもシンプルな感じになってきた気がします。いまは植木鉢を1回リセットして、「今度はどんな木が育つかなぁ」って楽しみにしながら、水を撒いたりしている時期なのかもしれないですね。
『連続ドラマW いりびと-異邦人-』は、11月28日(日)放送・配信スタート(毎週日曜 22:00~全5話 第1話無料放送)。配信は、WOWOWオンデマンドで第1話放送終了後にスタート(無料トライアル実施中)。第2話放送終了後は全話一挙配信される。