――パロディが受けている一方で、正統派ヒーローというべき『仮面ライダーBLACK』もまた、子どもたちから愛されていました。

『BLACK』で特に好きだったのは、ゴルゴムの3神官(ダロム、バラオム、ビシュム)です。僕は幼いころからホラー映画とかも平気で観ていて、中でも『バタリアン』(1985年)が大好きでしたから、そんなホラーテイストをあの3神官に見出していたんでしょうね。

また、ゴルゴム怪人たちがみな怪獣然としたボリューミーな造形だったのもよかったです。目や口が動くなどのギミックも凝っていて、アメリカ映画に出てきそうな迫力を感じさせました。

こうやって昔のことを話しているうちに思い出してきたのですが、『RX』が終わった後にビデオ作品として発表された『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』(1992年)や、劇場映画『仮面ライダーZO』(1993年)あたりが、僕の一番好きな仮面ライダーでした。

このころになると小学校高学年から、中学生にさしかかっていましたが、まったく特撮作品から卒業してなかったんです。僕にとって『仮面ライダーBLACK』から始まる少年時代の仮面ライダーには、強い思い入れがありますね。

――変身ベルトをはじめとする、仮面ライダー関連の商品の思い出はありますか?

ベルト玩具はまったく持っていませんでした。等身大ヒーローより巨大な怪獣のほうに熱中していたので、玩具も「ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズが中心だったかもしれません。ヒーローキャラクターよりもとにかく怪獣が好きで、だからこそ怪物要素の強い『真・仮面ライダー(仮面ライダーシン)』に愛着があるんだと思います(笑)。

――田口さんは『仮面ライダーBLACK SUN』の特撮監督として、製作のどのタイミングで参加されたのでしょうか。

僕の参加が決まり、初めての打ち合わせの席で、仮面ライダーBLACK SUNのデザイン決定稿と言われる画稿が上がってきました。すでに樋口さんを中心にしたデザインワークはかなりの段階まで進んでいますが、仮面ライダー以外や、怪人などは今取材を受けている時点(2021年9月13日)ではまだこれから煮詰めていく感じです。

みなさんご存じのとおり、樋口さんは光の国からやってきた"アレ"がありますから、今回はコンセプトデザインの段階までで、あとは僕がそのバトンを渡された形になります。

――特撮監督を務めるにあたり、白石監督とどのような打ち合わせをされたのですか。

それもまだ、これからの段階なんです。いろんなことがまだはっきりと決められておらず、今回の取材で待機している間が、いちばん長く白石監督とお話ができたくらいです(笑)。

ちなみに僕が「特撮監督」という肩書で仕事をするのは、今回の『仮面ライダーBLACK SUN』が初めてなんです。ごくたまに「特撮ものの監督だから特撮監督」と、とんでもない誤認識による書き方をされることがありますが、それは違います!と声を大にしておきたい。映画の中で「特撮」パートのみを演出するときだけ「特撮監督」あるいは「特技監督」という肩書を使うんだと、いろんなところで説明してきました。今回は初めて、我が師匠であり、「スーパー戦隊シリーズ」で合体メカや巨大ロボット戦を演出されている佛田洋さん(特撮研究所代表)と同じポジション=特撮監督に就かせていただくことになりました。気持ちを新たにして取り組みたいと思います。

――『仮面ライダーBLACK SUN』における、特撮の見せ場とはどんなところでしょうか。

それもこれから白石監督と話し合って、台本の中から僕が担当するパートを決めていく段階です。確実にいま言えるのは、クライマックス、いわゆる「ラスボス」との戦いのシーンは、特撮の大きな見せ場になるということです。

そもそも樋口さんから「ラスボスとの戦いはミニチュアが主体になるから」と言われてこの仕事を受けたのですが、台本を読むと「これってミニチュアじゃ無理なのでは……」と思えるくらい、映像化が難しそうなシーンでした。

これからどんな方法で映像にするのかを考えるのですが、まったくどうなるかはわかりません。ただ、みなさんのご期待に添えられるものを生み出したいという気概は十分にあります。変身シークエンスや、仮面ライダーと異形の怪人たちが人知を超えた動きで激しく争う……というシーンが特撮の見せ場になるはずです。

――『仮面ライダーBLACK SUN』の特撮監督として、田口さんがぜひやってみたいと思われる映像表現を教えてください。

今回の僕の仕事は、白石監督のやりたいことをバックアップする立場だと思っています。何をどう表現するかは白石監督ですから、僕はあまり前に出ないよう心がけるつもりです。

僕は白石作品の「容赦のないバイオレンス描写」が大好きですから、白石監督と組むことによって、他の作品ではできないようなものすごいハードアクションを作ることができるかもしれないと、かなり興奮しています。

僕は子どものころ『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』で「ライダーが敵の首を引っこ抜く」みたいな生々しいバトルシーンに衝撃を受けました。白石監督が、より激しく衝撃的な仮面ライダーと怪人との戦いを創造されるのなら、僕も全力でお手伝いしなければ……という心構えで取り組みます。どうぞみなさんもご期待ください!

(C)石森プロ・ADK EM・東映