――「羨ましい」というのは、女優1本でやる道もあったかもしれないと思うことも?
そうですね……私は演技が全然できなかったので、まずはグラビアのお仕事をさせていただいて、そこで名前を知ってもらわないといけないというところから始めました。その期間に演技を練習して、必死に刀を研いでいたのですが、グラビアをやっていなかったら、皆さんに知っていただくまで、もっともっと時間がかかっただろうし、グラビアをやっていたから出ることができたと思う作品もあります。
元々グラビアのお仕事をするとは想像もしていなかったので、まさかの世界に飛び込んだ感じがあるんですよ。過去の自分が今の自分を見たら、「そんなことできるの!?」って驚くと思います。でも、そういうサプライズがあるのが自分の人生だなって。
なので、「女優さんになりたい!」と言って、大阪から東京に出てきて、そのまま女優のお仕事だけをしていたら、それはそれでまた違った景色が見えていたとは思うんですけど、その道もあったのかな? とは思いません。
■グラビアと芝居の共通点
――そんな風に捉えられていることも、演技をする上で他の人にはない武器なのかなと思いました。あと以前取材させていただいた時にも感じたのですが、柳さんは普段の穏やかな雰囲気とお芝居になった時のギャップも素敵ですよね。
本当ですか? 人懐っこく思ってもらえることもあるんですけど、見えない壁を作っちゃうみたいで、「心を開いているように見えて開いていない」と言われることも多くて。
――そんな風には感じませんが、それは接し方が難しいですね(笑)。
一番ややこしいって言われます(笑)。
人に対してはそれを発動してしまうのですが、お芝居で役に対して心を開くことはできるっていうか、開放する感覚が自分の中でも心地よくて。以前、お仕事をさせていただいた方に「ケモノタイプか猛獣使いタイプなら、ケモノタイプだね」と言われたこともありました。
ケモノタイプは自分でその場をかき回すのが得意で、猛獣使いタイプはその場を操るのが得意らしいのですが、確かに自分がその場を仕切れる時はやりやすさを感じるんですけど、それを周りに任せないといけない役だと急に困っちゃうこともあって、どんどん壁が迫ってくるような感覚になります(笑)。
――井筒和幸監督の『無頼』では、柳さんが登場するシーンは完全に柳さんのものという印象を受けていたのですが、ケモノタイプの話を聞いて腑に落ちました(笑)。小池栄子さん、MEGUMIさんにも同じ印象があって、グラビアを経験することで育まれる要素なのかなと思いました。
それはあるかもしれないですね。グラビアのお仕事って体力仕事だし、のほほんとはやれない世界で、全員を知っているわけではないのですが、私が一緒にやっていた世代の子たちはみんなすごく色々なことを考えていました。
お芝居をする時にも同じことが言えて、自分をいつ開放するべきかがちゃんと見える……空気が読めるっていうんですかね? グラビアとお芝居どちらもそれがすごく大切だと感じます。私はどちらかと言うと、のほほんとしてたんですけど(笑)。
柳ゆり菜
1994年4月19日生まれ。大阪府出身。2014年、映画『うわこい』で映画初出演にして初主演を務め、同年NHK連続テレビ小説『マッサン』でのポスター・モデル役で話題に。2018年、ヒロインを演じた『純平、考え直せ』がモントリオール世界映画祭に正式出品される。2020年公開の映画『無頼』でもヒロインを演じ、映画・ドラマを中心に活躍の幅を広げている。