出産シーンでは、悶絶し絶叫するという迫真の演技を披露する。「台本を読んだだけではわからない気持ちが多かったので、母が私を産んでくれた時の様子や気持ちを教えてもらいました。母は小さいお腹がどんどん大きくなっていくのを見て、そこに命があるという重みや、早く出てきてほしいと愛おしく思ったりしたということを知りました。また、その場にいてくださった助産師さんにもいろいろと教えていただきました」

ちなみにこのインタビューに居合わせていた演出家は「出産シーンはおまかせでした。助産師さんに囲まれてお芝居をしてもらいましたが、梨央ちゃんがまず1テークやってみたら、あまりにもリアルだったので、助産師さんたちみんながビックリしていました」と感心しきりだった。

養子縁組を主軸に描く本作だが、普遍的な親子の絆も同時に紡がれていく。鈴木は「私自身、家族が大好きで、これまで育ててくれた母に改めて感謝しなきゃいけないなとも感じましたし、同時に親子っていろんな形があるのかなとも思いました」としみじみ語る。

「血が繋がっている親子もいれば、繋がってない親子の形もあるわけで。私自身、今回妊婦役を演じてみて、こんなにかわいい赤ちゃんの命が奪われているんだと知り、すごく心が痛みました。赤ちゃん縁組によって、そんな赤ちゃんの命を救うことができるんだと思うと、自分自身もうれしい気持ちにもなりますし、命の大切さに改めて気づけた気がします」

もちろん女優としても大いに得るものがあったようだ。「今までいろんな役を演じさせていただきましたが、今回ドキュメンタリードラマに初挑戦してみていろいろな気づきがありました。結のことを思い、ふとしたことで涙がこみ上げてきたこともありましたが、そういう経験は初めてだったので、自分でもすごくびっくりしたんです。撮影中は台詞の確認というよりも、常に結の気持ちになっていたし、撮影が終わってからも、結のことばかり考えていました」

今、まさにスポンジのように多くのものを吸収している鈴木。キラキラした大きな瞳はまさに可能性の塊のように思えた。

■鈴木梨央(すずき・りお)
2005年2月10日生まれ、埼玉県出身。NHK大河ドラマ『八重の桜』(13)で綾瀬はるか扮する山本八重の幼少期を演じて注目される。以来、『Woman』(13)、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(15~16)、『精霊の守り人』シリーズ、『ひきこもり先生』(21)などのドラマや、映画『僕だけがいない街』(16)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『最高の人生の見つけ方』(19)、『こどもしょくどう』(19)などに出演。アニメ『どろろ』(19)、『遊☆戯☆王 SEVENS』(放送中)、『映画おしりたんてい スフーレ島のひみつ』(21)など、声優としても活躍。

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