現在放送中のTBS系金曜ドラマ『最愛』(毎週金曜22:00~)。吉高由里子演じる主人公・真田梨央を取り巻く人々の切ない“最愛”が描かれていくなか、謎の鼻血シーンをはじめ、独特の存在感で物語を彩る「真田ウェルネス」の専務・後藤信介を演じているのが及川光博だ。これまでも劇中に登場するたびに「なにかをやらかすのでは……」とハラハラするキャラクターを数多く演じてきた及川が、自身が“不気味ッチー”と称する後藤という役へのアプローチ方法や、物語をかき回す役を演じるモチベーションなどを語った。
及川と言えば、腹の底になにかを忍ばせるような役柄を演じることが多く、善人だと思わせておきながらの裏切り……を期待する視聴者も多い。日曜劇場『半沢直樹』に出演時も、堺雅人演じる半沢直樹の大学時代からの友人で、陰ながら半沢を支える渡真利忍を演じていたが、SNS上では「渡真利が裏切りそうで怖い」という声が上がっていたほど。
自身もそういった役柄を演じることが多いという自覚があるようで、『半沢直樹』の続編での会見では「裏切りそうで、裏切らない、半沢大好きっ子の渡真利です」と挨拶し周囲を笑わせていた。今作で演じる後藤専務も、現在放送の第5話まででは、これまでのキャラクター以上に、なにを考えているか分からない。
そんな後藤専務という人物に及川は「第4話の冒頭でのモノローグが彼の性格を端的に表していると思います」と語ると、「恐らく彼は完ぺき主義で、孤独で会社を愛している人間」と位置づける。役を作っていくうえで大切にしていることは不気味さ。
「メイクさんがかなり細かくキャラクターデザインをしてくれています。例えば前髪をわざとうねらせて、整髪料で嫌な艶を出すなど、気持ち悪さを演出してくれています。個人的に気をつけているのは、極力表情筋を使わないこと。ほぼ無表情なので、なにを考えているのか分からないような不気味さを意識しています」。
しかも、第4話では、なんの前触れもなく謎の鼻血シーンも。及川は「皆さんあのシーン、大好きみたいですね」と笑うと「僕の家族も大変喜んでくれていました。鼻血のシーンは、クランクインしてすぐの段階で、塚原(あゆ子)監督から相談されたのですが『まったく問題ないです』と答えました。ただ、撮影では何度もやれるものではないので、一発OKになるように“全集中・鼻血の呼吸”で出しました」とノリノリだったという。
なぜ後藤専務が鼻血を出したのかというバックボーンまでは明かされなかったが、及川的には「デヴィッド・リンチの作品にある不条理というかシュールな映像美学を意識していました」とイメージを語っていた。
無機質で不気味な後藤専務だが「よく観ていただくと分かるのですが、社内やその周辺ではマオカラーのジャケットなのですが、帰宅時や真田梓社長(薬師丸ひろ子)と食事をするときは、普通のスーツとネクタイなんです」とポイントを挙げると「つまり、後藤専務は会社に来てからマオカラーのジャケットにわざわざ着替えているんですね。その変なこだわりというかマイルールってなんか可愛らしくないですか? そんな視点で観ていただくと、少しは愛おしいと思っていただけるのではないでしょうか」とプレゼンした。