倉科は千春の役目について「結ちゃんのような妊娠に戸惑っている女性が最善の選択をできるようにさまざまな選択肢を提示すること」と捉えた。「だから演じるうえで意識していたのは、なるべく彼女たちに寄り添っていくことかなと。戸惑っていると本心が見えなくなるところがあるので、できるだけストレスのないように導いていくことが大事で。考えを押しつけず、あくまでも彼女たちの意志を尊重することが大切だった気がします」
また、本作が、倉科や鈴木が演じるドラマパートと、実際に赤ちゃん縁組で結ばれた家族を追ったドキュメンタリーを織り交ぜたドキュメンタリードラマとして展開されることに意義を感じていると言う倉科。
倉科はそのメリットについて「こういった社会的問題が私たちの耳に入ってくるのは、事件としてのニュースが多いので、概要だけしか伝わってこないんです。でも、ドラマという形を取ることで、登場人物の状況を心に訴えかけることができる気がします」と語る。
「それは、ドラマや映画など、エンターテインメントに共通することかなと。だからドキュメンタリードラマという形にして直に訴えかけていくことは、とてもいい方法だなと私は思います。役柄を通じて社会問題をしっかり伝えられるので、俳優としてのやり甲斐を感じますし、当事者じゃないけど、他人事ではなくて一緒に共感していけるところが最大の魅力かと」
立て続けに放送されるドラマ3本のほか、この秋は舞台 こまつ座『雨』にも出演。12月にはもう1本の舞台『ガラスの動物園』が待機中の倉科。映画の近作はチームオクヤマ25周年記念作『女たち』(21)で、非常にナイーブな役どころを演じていた。倉科に出演作を選ぶポイントについて聞くと「自分自身が面白いと思った作品でしょうか。でも、時々みなさんがびっくりするような作品にも出たりしますよね」といたずらっぽい笑みを浮かべる。
「役柄が面白かったり、ストーリーに興味が湧いたりと、いろいろなポイントがありますが今回の『命のバトン』は、エンターテインメント作品に出演することで、私にもできることがあるんじゃないかと思ったことがきっかけでした。そういう意味でも、この作品を通じて、1人でも多くの赤ちゃんが救われればいいなと、切に願っています」
1987年12月23日生まれ、熊本県出身。2009年にNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』で主演に抜擢。近年の主な出演映画は『遠くでずっとそばにいる』(17)や『3月のライオン』(17)、『あいあい傘』(18)、『半径1メートルの君上を向いて歩こう』(21)、『女たち』(21)など。ドラマは『刑事7人』(15~21)、『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(21)、『らせんの迷宮DNA科学捜査』(21)、『婚姻届に判を捺しただけですが』(21)など。舞台は『パークビューライフ』(21)、こまつ座『雨』(21)などがあり、『ガラスの動物園』が12月12日より上演。
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