●ファンのすぐ近くで歌い、届けた、大切な曲と想い
そんな雰囲気を一気に変えて明るさをもたらしてくれたのが、「Happy New World☆」。イントロ中に芹澤が「みんなのもっともっと近くに行っちゃうよー!」とシャウトすると、5人それぞれトロッコに乗車。ステージ前に横一列に並んだところでその並びのままぐっと客席奥に向かう。ワンマンライブ初となるトロッコを満喫しながら、近くのファンへと手を振る5人。
立ちながらだったり、普段ステージのへりでよくみられるようにしゃがんで手を振る久保田がいたりと、ここにもそれぞれの”らしさ”が出る。終盤には5台のトロッコが客席後方通路に並ぶと、続く「ブライトファンタジー」で改めて客席を縦横無尽に移動していくi☆Ris。Bメロの歌唱中、一瞬激しめにトロッコが揺れたように見えた際にも茜屋の歌声がブレない点から、改めて培ってきた歌唱力の確かさと強さ、間近でファンを喜ばせる力の礎を感じさせられた。
また、客席中央部の通路で5台のトロッコが並んでからの1サビ明けには、トロッコをシャッフル。再び場内に散らばると、それぞれがひとり用の小さなお立ち台に到着。☆の形を連想するように配置されたその上で、本当に久々となるファンの間近でのステージを展開すると、「Thank you forever!」のイントロ中には5人の立つスペースがスタンド席の高さまでリフトアップ。今度はそのスタンドのファンと視線を交わしつつ、ときにはアリーナも見下ろしながら、柔らかく温かな歌声でファンやメンバー同士への想いを届けていく。
その高さは2-Bメロ中にさらに上がり、スタンド席最上段のファンとも目が合わせていく。そして終盤では姿勢を変えて互いに向き合いながら歌唱し、Dメロではなんと、リーダー・山北が一瞬声を詰まらせる場面も。気づけば客席はメンバーの立つエリアに合わせたイメージカラーに染まり、さらにそれを星々のようなミラーボールの光が照らすという、形容し難いほどの美しい光景が生まれていた。
それに続いたのは、ちょうど9年前の11月7日にリリースしたデビュー曲、「Color」。前半部分を歌唱しながら各々メインステージへと戻り、2サビは横一線に並んでのパフォーマンスをみせると、5人体制になったことでコール部分が気になっていたファンも多かったであろう、2サビ後の間奏へ。
場内に流れたそのコールには、イエローが残っている。そして同時に、この曲は照明が6色で構成されていたことに気づく。もちろん虹をイメージした曲のグラデーションにはイエローもあるが、前述した「5STAR☆(仮)」や「Thank you forever!」では今の5人になぞらえた5色で構成されていた。にもかかわらず、デビュー曲でコールにも照明演出にも残ったイエロー。それがまた、特に長期間のファンの胸を熱くしてくれたのではないだろうか。
ライブも終盤。改めて後方に行けたことやリフターでスタンド席にも近づけたことを喜ぶ5人。また、「Thank you forever!」で声を詰まらせた山北を芹澤が若干イジりつつも、芹澤自身も「”七福万来”(※デビュー7周年ライブ)の『Thank you forever!』が好きすぎて、今日あの映像を観ながら練習しちゃった」と愛着をうかがわせた。
そして9周年で、また大きなステージへと立てたことについてファンやスタッフへ改めて感謝したところで、本編ラスト曲「Goin’on」へ。ポンポンと跳ねるリズミカルさもありつつ温かい曲を、メインステージでダンスも織り交ぜながらの披露。この大舞台で、5人からの感謝に続けて本編ラストにこの曲、胸を熱くしたファンは少なくなかっただろう。「終わらない...」のフレーズを持つこの曲で本編を締めくくってくれたことにもまたひとつの想いを感じさせられたところで、歌いきった5人はそのままステージを降りる。
●最後まで充実しっぱなしのステージがさらに高める、”10年目”への期待
それから程なくして、メインスクリーンには5人からのファンに向けた、直筆の”Queen’s Message”が。手紙を通じて想いを届けてからは、一気に楽しさの充満したアンコールへ!
まずはイントロ中に5人がステージ3階部分にリフトUPで登場しての、「ドリームパレード」から。手書きのメッセージ後に、まだまだ未来へと駆けていく姿の込められたこの曲という構成は、たまらなくこの場にハマりすぎている。だがステージ上の5人には涙はなく、笑顔でパワフルなステージを継続。2サビの終盤「飛び出そうよ」のフレーズでは、振付を利用して久保田がぐっと沈み込んでレスに活用したりと、ファンを巻き込んで思いっきり楽しんでいた。
さて、ここで恒例・ファンをバックに写真撮影……と思いきや、ステージへりに座った5人の前に、突然「Vampire Lady」で用いたローテーブルにケーキが乗って登場。サイレントで9周年をサプライズ祝福するのも、最近のi☆Risらしいといえばらしいシーンかも。
そんなサプライズをおみまいされたi☆Risから、今度は逆にサプライズ発表! 2022年に7th Live Tourを開催することが明かされた。今回は全国8ヶ所にて16公演の開催となるとのことなので、ぜひ楽しみにしていてほしい。
最後にそれぞれ、改めて今の感謝と今後への向上心を語ったところで、ラストナンバーとして披露したのは近年の必殺ナンバーのひとつ「アルティメット☆MAGIC」。2サビ明けには若井の合図でまたも五方に散った5人が、Dメロ直前に素早く中央に集合したりと、会場全体でハチャメチャに楽しむ。だが直後のDメロでは、誰も息を切らしていない。目立ちはしないかもしれないが、最後の最後までこのタフさを自然とみせられるところに、9年間積み上げてきたもののすごさが凝縮されているように感じられた。
そしてQueen5人は揃って3階ステージまで上がって、山北の「10周年に向けて頑張るぞー!」のシャウトとオフマイクでの全員の感謝の言葉に続いて、リフトダウンで城へと帰還。その後、メインスクリーンにはファンをバックにした記念撮影の写真が映し出され、華々しく9周年当日を、そして10周年へ向けた第一歩となる公演を締めくくったのだった。
こうして最後まで楽しませてくれたうえに、セットリストや演出で”Queen’s Message”というコンセプトを見事に形にした、非常に詰まったライブをみせてくれたi☆Ris。最後のMCで、普段あまり自分たちを褒めない茜屋が「本当にi☆Risちゃん、今年1年頑張った!」と口にしていたが、その頑張りが結実したライブになっていたからこその言葉だったのだろう。観る側からも、5人で一丸となって辿り着いたあらたな新しい黄金比で、最後の1曲まで隙のないステージを形作ってくれていたように思った。
そしてもちろんそこには、ファンの力なくしては辿り着けなかったはず。ライブ中にも口上をクラップで再現したりと一切手を抜かずに支え続けたからこそ、活気あふれた空間が誕生したはずだ。だからこそ思う。この5人とこのファンなら、10周年もその先も、思いのまま楽しみ続けられるはずだ――と。
●「i☆Ris 9th Anniversary Live ~Queen’s Message~」
2021.11.07@幕張メッセ イベントホール
【SET LIST】
M1. 幻想曲WONDERLAND
M2. ありえんほどフィーバー
M3. 5STAR☆(仮)
M4. Cheer up
M5. イノセントイノベーション
M6. Vampire Lady
M7. Baby…
M8. One Kiss
M9. Summer Dude
M10. 12月のSnowry
M11. Happy New World☆
M12. ブライトファンタジー
M13. Thank you forever!
M14. Color
M15. Goin’on
EN1. ドリームパレード
EN2. アルティメット☆MAGIC