声優とアイドルのハイブリッドユニットi☆Risの9周年ライブ「i☆Ris 9th Anniversary Live ~Queen’s Message~」が11月7日、千葉・幕張メッセにて開催された。この公演はi☆Risのデビューシングル「Color」リリースからちょうど9周年にあたる日に開催された記念すべきライブ。9年間培ってきたパフォーマンス能力を土台に、ワンマンライブでは初となるトロッコなどの試みも交えて、誰もがハッピーに楽しみ尽くせるライブを作り上げた。
●楽しさと高い技術で、序盤からぐっと惹き込むステージング!
まずは華やかなBGMに乗せたOP映像で、メンバーカラーと同じ色をした5つの光の筋が赤絨毯の上の9つの扉を開けて王宮の廊下を抜けてライブロゴを形成する……が、そのロゴにノイズが走って一気に映像が逆回転し、ステージの3階部分に玉座に座った5人が登場。
同時に「幻想曲WONDERLAND」のイントロが流れ始め、いつもの通り久保田未夢のセリフからスタート。バレエのエッセンスも入ったふわっとした振付も相まって、Queenらしく魅了できる曲からの幕開けというのは、いいチョイスだったように思う。また2サビ明け間奏の後半部分は、今までは若井友希がサークルの中心から森を切り開くような展開だったが、5人体制初披露となった今回は5人全員でゆっくり周回しながら観客のクラップを煽るものに。
1曲目らしく場を盛り上げる役割も担っていた。ちなみに恒例・久保田によるラストのひと言は「9周年i☆Risちゃんおめでとう!これからもまだまーだ、大きいステージに立てるように頑張っていくのでよろしくなー!」と意気上げるものに。
そのセリフ後、流れ始めたのは「ありえんほどフィーバー」のイントロ。スモークと逆光で一瞬ステージが見えなくなった瞬間に早くもマントを外して軽装へと早替えし、”Queen”から”女王様”へと姿を変えてブチ上げディスコチューンを披露する。
しかもただアガるだけでなく、パフォーマンスではしっかり魅了。2番に入ってからは、特に芹澤優がセリフ部分でピンポイントに鮮烈な印象を残す。また茜屋日海夏も全体的には美しく歌声を響かせつつ、そこに様々な表情を乗せることでよりぐっと惹き込んでいく。そして大サビでは5人の歌声が、もう一段パワーを増したものに。
これは自分たちのパフォーマンスによって、声は出せずとも観客がノッた姿を目の当たりにしたからこそのものだったのではないだろうか。それに続いたのは、初披露となる最新シングル収録曲「5STAR☆(仮)」。イントロでは、この曲の作詞も手掛けたリーダー・山北早紀が「みんなで一緒に手叩いて盛り上がっちゃいましょう!」と呼びかける。
今の5人を表現したあらたな自己紹介ソングであるこの曲、特に各々がフィーチャーされるセリフ部分ではそれを具現化し、魅力を倍増させていく。開催前にサビの振付動画がUPされたのもあってか、早くもサビでは強いファンとの一体感が生まれていったうえに、ラストは5人で円陣を組み、そのうしろの階段には5色に染まった☆が映し出されるというエモさも兼ね備えた最高の初披露に。
曲明けのMCでは、改めてデビュー9周年を自ら祝す5人。そのうえで「今日はまだまだ楽しいことがたくさん待ってる(茜屋)」などと期待させつつ、そのうちのひとつ・こちらも初披露の最新シングル収録曲「Cheer up」からライブ再開。K-POP調の軽快なリズムに乗せたダンスは、とにかく手数が多いにもかかわらず切れ味は抜群だ。
もちろん個々の技術もしっかりとみせつつ、2番になると芹澤・茜屋が腕で作ったアーチを山北がスッと抜けて出てきたりと、チームワークも乗せたパフォーマンスに。そんなダンスをこなしつつ、大サビでは茜屋・若井がぐわっと迫ってくるような迫力あるフェイクを聴かせたりと、ここまで9年の足跡の結晶のような1曲として形にしてくれた。
さらにその跳ね感をよりポップに変えた「イノセントイノベーション」で、場内を元気にアゲていくi☆Ris。この曲で要注目なのは1-Bメロ。5人が縦になってのスタートからひとりずつズレて飛び出していくフォーメーションをこなしつつ、山北がハモをしっかり歌っていくさまは、楽しさと技術の高さを同時に感じさせるポイントだ。また、3-Bメロでのちょっと尻すぼみにした、若井のあざとかわいい歌声も大サビ後の投げキッスも含めて、キュートさをみせてくれたポイントだ。
歌唱後には直前の「イノセントイノベーション」を受けて、「今回は変化球も入れてたりする」と若井からさらに楽しみ募らせる発言もありつつ、「今のところ(今年の)ツアーでやった曲、ある?」と久保田からは鋭い指摘。改めて5人への、称賛の拍手が巻き起こる。
その他衣装紹介等を経て、ライブは「Vampire Lady」から中盤戦へ。ライブ用のイントロ中に登場した高貴なローテーブルに、5人座っての歌唱からスタートする。2番以降は2階部分とメインステージに分かれてパフォーマンスを展開すれば、2サビからはちょうどその間・階段の中腹に山北が立ちセンターを取り、セットを活用した立体的なフォーメーションチェンジも交えた披露に。
Dメロでは各々歌声にセクシーさも感じさせると、そのムードをさらに増幅させた「Baby...」へ。大人びた表情で展開するダンスの切れ味は増し、楽曲の雰囲気も相まって魅せる1曲に。Dメロ明けのダンスタイムも、フォーメーションチェンジも含めて非常にレベルもクオリティも高く、さらなるパワーアップを感じさせるパフォーマンスだ。その直前のDメロの芹澤のソロは、声がクレッシェンドになりながらせつなさも徐々に増していく、
この曲の歌声の面でもっとも強い印象与えたポイントとなった。さらにもう1曲続けたのは、オトナさは残しつつも爽やかなポップナンバー「One Kiss」。ファルセットも用いつつ伸びやかに歌い上げる若井のボーカルワークも非常に良好で、楽曲世界にぐっと惹き込む。この曲はサビでもソロパートがリレーされていく曲で、それに合わせてセンターを取るメンバーも次々と入れ替わっていく。そのスムーズさでのチームワークの良好さを含め、視覚的にも楽しませてくれる曲となった。
歌唱後には暗転し、「Summer Dude」のMVを彷彿とさせるメンバー登場の映像を挟み、衣装の上にスカートを履いた5人がその「Summer Dude」を披露。5人体制初の曲ということもあり、この曲でもセンターを明確にしたフォーメーションチェンジが次々行なわれていくなか、この夏生まれた爽やかポップなナンバーをキラキラな笑顔でみせていく5人。
サビでの波を思わせる振付も、この曲ならではのものだ。また、2-Aメロでの山北の「ずっとこのままいれたらいいな」のソロパートで5人が肩を組む振付も、このタイミングではよりグッとくるもの。9周年で見たいあらたな一歩を踏み出した曲を、いい流れのなかでみせてくれたように思う。
……と、ここだけでも満足度は高かったのに、そのままこの曲のアンサーソングにあたる新曲「12月のSnowry」も、CDリリースに1ヶ月も先駆けてなんと初披露!せつないミドルバラードにベールのように美しいハーモニーが重なっていくことで、その美しさが楽曲のもつ悲しさをより引き立てる。
ボーカルの面では芹澤の歌声にあるほのかなハスキー成分が、この曲と結びつくととてつもないせつなを生む。またダンスの面でも、大サビで山北と久保田が手を合わせて対称になる振付など美しく魅せる部分も多く、最後に雪降る映像をバックにしたラストまでせつない世界を見事に作り上げてくれた。