ラリータ:ネタの収録のときって、スタッフが誰も笑わないんですよ。これはすごく悩んだんですけど、千鳥さんの言うことが、スタッフが面白かったというフィルターと逆になることもあるから、もう僕らで判断するのはやめようと決めて。千鳥さんの判断に寄せるために、スタッフは何にもリアクションしないんです。だから最初に「笑わないんで、すいません」って言うんです。
木月:その誰も笑わない収録現場の状況でやりきる芸人さんもすごいですね。
ラリータ:すごいです。これは本当に申し訳ないと思います。
樅野:OA見るまで、ウケてるのか分かんないんですよね(笑)。俺もOA見て、久保田(かずのぶ=とろサーモン)のネタでチャイルドマシーン(※1)がイジられてるの知ったからな(笑)
(※1)…樅野氏の芸人時代のコンビ名
ラリータ:あれは僕と久保田さんから樅野さんへのメッセージですよ(笑)
樅野:最初、ラリータさんあそこ使わないって言ったのに、安心して見てたら出てきたから、酒吹き出したもん!
ラリータ:「やっぱあそこ戻そうよ」ってなりましたから(笑)
樅野:こわっ!
木月:あと、番組が何で急に歌から始まるんだろう?って思いました(笑)
ラリータ:今って歌から始まる番組なんてないじゃないですか。1回しか放送しないと思ってたから、15秒無駄な時間を作ろうと思って、ちょっと特徴的なオープニングを作ってほしいって担当してくれたディレクターにお願いしたんですよ。それで樅野さんに歌詞(※2)を書いてもらって。
(※2)…「♪出てこいクセスゴ芸人団 繋がれた鎖を引きちぎって 暴れろクセスゴ芸人団 やりたい放題にやっていいぜ “1人で膝を抱え不安で泣いている少年よ” “ワシらが笑顔にするぜ!”」
樅野:ああいうの好きだから、すぐLINEで2パターン送って。
ラリータ:それを混ぜて使いました。
木月:一気にレギュラーになりましたよね。
ラリータ:本当にすぐ決まりました。今でも驚いてるけど(笑)
木月:フジテレビが求めていたんですよ。
ラリータ:いやいや、求めてない(笑)。求めてたらあんな急に発注来ないですもん。中目黒の駅前で、樅野さんに「助けてください!」って言ったんだから(笑)
樅野:でも、俺らの頃の芸人のさっくん(佐久間一行=日谷ヒロノリ)とか、もう中学生もそうだし、あのへんの子たちが生き生きしてるのがものすごくうれしいですね。
■芸人たちのモチベーションは千鳥の反応
ラリータ:千鳥さんって、どっちもボケでどっちもツッコミができるから、ネタを見てのコメントが面白いんですよね。あと、恐ろしく仲がいい。収録してると、それがあふれ出てくるんですよ。だから、ゲストをなるべく足さないようにしてます。
木月:『千鳥の対決旅』(フジテレビ)では千鳥さんを筆頭に出演者の皆さんの着想がすごいんですよ。その場で対決の内容を作ってくださいってお願いするんですけど、ロバート秋山(竜次)さんが「石人間」ってボケ始めたのをきっかけに、じゃあ「いかに石人間になれるかを競おう」って (笑)。こういうのを面白がる世界観を一瞬で作れるのが千鳥さんのすごさだと思います。
ラリータ:あと、芸人さんがみんな異常に千鳥さんのことを好きですよね。
木月:それはありますね。
樅野:後輩から大悟の悪口って1回も聞いたことないんですよね。だから本当に好かれてるんだろうなと。裏表なく、本当に愛されてるんだと思います。
ラリータ:それはすごく感じますね。『クセスゴ』でも、ウケた・ウケなかったより「千鳥さんがどういうふうに言ったんだろう」ってすごく気にする芸人さんもいますから。みなさんのモチベーションは、そこなんですよね。僕らスタッフはネタ芸人さんを応援しているだけです。ご覧いただいている皆さまも一緒に応援してくれたらうれしいですね。
樅野:でもラリータさん今、日本一ネタ見てるんじゃないですか?
ラリータ:本当ですよ(笑)。『クセスゴ』と『有田P おもてなす』もあって、『冗談騎士』(BSフジ)もあって。でも、有田さんに言われたことに「なるほど」と思ったのに、次の日に『クセスゴ』の収録したらまた思ったのと違う感じになったりして(笑)。もしかしたらADのときのほうがお笑い分かってたかもしれないです。今が一番分からない(笑)
木月:それぞれのお笑いがありますもんね。
ラリータ:だから本当に、芸人さんはすごいなと思いますよ。
樅野:作家になって思ったのは、会議によっても違うんですよ。あっちで面白いと思ったことが、こっちではシーンとなるから、そこは1個ずつ早くチューニング合わせるという術を、売れてる放送作家さんみんなできてるんだと思います。キャスティング案1つとっても全然違いますからね。こっちでは「いいねえ」となる人もこっちでは「なんでそいつ出すの?」ってなるし。
次回予告…~お笑いディレクター&放送作家編~<2> すごいことをやっていた…『笑っていいとも!』秘話
●名城ラリータ
1976年生まれ、沖縄県出身。日本大学芸術学部卒業後、00年フジクリエイティブコーポレーションに入社。フジテレビのバラエティ制作センターに配属され、『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』『ココリコミラクルタイプ』『もしもツアーズ』『全国一斉!日本人テスト』などを経て、現在は『全力!脱力タイムズ』『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)、『冗談騎士』(BSフジ)、『有田P おもてなす』(NHK)を担当。
●樅野太紀
1974年生まれ、岡山県出身。95年からお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活躍するも04年に解散し、放送作家に転向。現在は『ミュージックステーション』『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『関ジャム 完全燃SHOW』『かまいガチ』『まだアプデしてないの?』『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)、『有田P おもてなす』『わらたまドッカ~ン』(NHK)、『有吉の壁』(日本テレビ)、『プレバト!!』(MBS)、『アウト×デラックス』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』(フジテレビ)などを担当。『しくじり先生』で第41回放送文化基金賞・構成作家賞、『両親ラブストーリー~オヤコイ』で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞。
●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。