俳優の山田孝之が、38歳の誕生日となる20日に朗読CD付き詩集 『心に憧れた頭の男』(ワニブックス 1,980円)を発売した。ベストセラーとなった山田初の書き下ろし本『実録山田』から5年。月刊誌『+act.(プラスアクト)』の隔月連載を一冊にまとめた今作では「山田孝之」がまったく違う姿で現れる。さらに、同書のためだけに山田自らが全79編を朗読した。
今回のインタビューでは、連載を続ける中で詩の見せ方が変化していった背景、詩の創作や映画製作など表現をする上で大切にしている問いかけについて話を聞いた。
詩をつづり始めたきっかけは、映画『クローズZERO』(07)キャストによるブログリレーだった。そこに掲載された山田の文章を見た編集者が「言葉で連載をしませんか?」と声をかけ、山田がそれに応じる形で連載がスタートした。山田は「意識してなかったけど、言葉を作ることが昔から好きだったんだなということに最近気がつきました」と振り返る。
また、2008年から続けた連載が一冊の詩集になるにあたり改めて自身の詩を見返し、懐かしさや恥ずかしさなど「思いつく感情は全部感じた」と言い、「13年ですからね」としみじみ。その一方で朗読作業は「単純にしんどかった」とこぼす。
続けて「なんだろうな……」と言葉を詰まらせながら、「本当に素直に思ったことを書いている。最初の頃は、自分の気持ちであることもまれにあるんですけど、ほとんどが“ボク”という一人の人から誰か一人に対してだったり、世の中と言われる不特定多数に向けてだったり、『そういう風に山田を見てるんでしょ?』 と言っている。“ボク”は逆に“あなた”だったりもします」と、自身がつづった詩の変化を説明していく。
詩集では、必ずしも“ボク”=山田孝之と言い切れない詩から、後半に進むにつれ、山田自身の思いを乗せた詩が現れ始める。それは「長くやっていくなかで、時間の経過があって、生きてる年数分色々なものが自分の中に入ってきたり出ていったり、出ていってしまったり出したり、入ってしまったり入れたり……そうした経験をしながら問いかけることを散々やってきて、もうちょっとはっきり伝えないと、意外と伝わらないものなんだな」と思ったから。
詩で思いを伝えるため、左右のページで鏡写しになった文章、短文と大きなフォントの2個の漢字が並ぶページ、黒の背景に浮かび上がる白い文字など、デザインにも意味を持たせた。
「最初の頃、鏡写しでやっていたのは、ずっと自分の思ってることを書いてるようで真逆ですよってことを表現していた。文字が大きくなったのは、そんなに長く色々と書いても、結局頭でいっぱい考えちゃってわからなくなってしまうから。シンプルな文章にして、その詩の中で象徴的な言葉を2個並べました。ビジュアル的にあんなにデカい字ってあんまり見たことなかったので」
「でも単純に飽きますし、これじゃあ足りないな、もう少し書かないとなと。ビジュアル面をなくして、もう言葉だけに集中してもらおうと思って、後半はずっと黒背景になっている」と説明し、伝え方が変化した要因として「年齢というのか経験というのか、その期間にも多くの人とまた新たに知り合ってますし、多分そういうことで変わっていったと思います」と自己分析した。