9月20日から2週間の育休を取得したフジテレビの榎並大二郎アナウンサー。夕方のニュース番組『Live News イット!』(平日版 毎週月~金曜15:45~)のメインキャスターを務めているが、帯番組の男性キャスターが育休で番組を休むのは珍しい事例とあって、大きな反響があった。
この2週間を「激動でした…」と振り返りながら、多くの学びがあったという榎並アナ。小さな命を守る重圧や、周囲のサポートの必要性、そして一層強くなったという妻への感謝の思いなど、貴重な経験を通して感じたことを明かした――。
■“見えない部分の家事”が見えてきた
――育休はかなり前から取ろうと考えていたのですか?
そうですね。以前から漠然とは考えていたんですが、妻が妊娠してより想像力が膨らんできたので、その頃には取得しようと思っていました。アナウンス室の上司に「妻が妊娠しました」と報告したら、「おめでとう!」と言われた直後に「育休はどうするの?」と先に提案してくれて、「取りたいと思っていました!」と相談することができました。
――帯番組のメインキャスターを休むとなると、各所の調整が必要となりますよね。
それでも、『イット!』の番組側も「育休は取ったほうがいいよ!」と言ってくれて、育休を取ることについてのハードルは全くなかったんです。いい会社だなと思いました。
アナウンス室の先輩も、仕事をしてる時はパパ・ママの顔を見せないですけど、自分がいろいろ相談したら、「これはこうしたほうがいいよ!」とすごくアドバイスを頂けて、助けを求めたら何でも教えてくれる職場環境なんです。『イット!』には育児をしながら仕事をされている頼りになる先輩もいて、本当にすごいなと思います。
――育休中は、どんな気持ちで番組をご覧になっていたのですか?
台風、自民党総裁選、小室圭さんの帰国など、2週間で大きな出来事があって、世の中が激動しているなと思いましたが、家庭の中でも激動でした…。
――家庭の中でも!
もう育児と家事で、こーーんなに1日があっという間に経ってしまうんだというのを感じました。
――奥様とは役割分担を決められたのですか?
僕が沐浴や入浴をさせて、そこから妻に渡して授乳して寝かしつけるという、夜の流れは決まっているんですけど、それ以外は決めずに、この2週間で家の中について何がどうなっているのかを把握しようと思ったのですが、妻の管理能力がすごすぎて!
何となく置いてあるタオルも、「何でいつも三つ折りしてから二つ折りにするんだろう?」と思っていたら、それが狭い家の中でベストなポジションを苦心して見つけ出した黄金比だったりするんです。自分は適当な畳み方をしていたので、「乱していたんだろうな…」と反省しました。本当に“見えない部分の家事”が見えてきましたね。
――それまでは奥様に注意されることもなかったんですね。
育休に入って「これはこうやったほうがいいんだよ」と教えてもらい、研修させてもらうような感じでした。
■SNSで得た“つながっている感じ”
――育休最終日のインスタグラムで、育児の楽しさの一方で、「小さな命を守らなくてはならない重圧も大変なもの」とつづっていたのが印象的でした。
泣くときは何で泣いているのか分からないですし、顔を真っ赤にして全力で泣き叫ぶので、それはそれで焦るのですが、逆に静かなときのほうが不安で、息をしているのかなとずっと確認して目が離せないんです。生まれたばかりで体はまだグニャングニャンですし、ちょっとでも何かあったらこの命がどうなってしまうんだろうと考えて、不安になりました。本当にシンプルに「この小さな命を生かし続けなければいけないんだ」と思いました。
――「パートナーや地域社会など周囲の協力が必須であると強く感じました」とも書いていましたね。
うちは幸い自分が育休をとってそばにいることができて、実家のサポートも受けられる環境にあったのですが、「ワンオペ育児」という言葉もあるように、こんなに過酷なことは、1人でも欠けるととんでもないことになるなと思ったんです。育休をもっと取りやすくするということも含めて、社会の助けが必要だと。1人で抱えていたら、赤ちゃんは守れるかもしれないけれど、お母さんを守れなくなってしまうというのを感じました。
――インスタグラムで育休中の様子を公開されて、アドバイスなどいろんなコメントが寄せられていましたが、そうしたコミュニケーションも広い意味で「社会の助け」という感覚はありますか?
みなさん、親戚みたいにいろいろコメントしてくださって(笑)。最初に投稿したのが『イット!』を見ながら寝かしつける動画だったんですが、「まず立ったほうがいいと思います」とコメントを頂いたり、各家庭のいろんな子育ての仕方があるなと思って、その選択肢を提示してもらいました。
何より、励ましの言葉や、「自分の子育ての頃が懐かしくてほっこりします」といったコメントで“つながっている感じ”がものすごくあったんです。やっぱり新生児の時期は外にも出られないので、どんどんつながりがなくなってしまうと思ったときに、SNSで温かい励ましの言葉をもらえるだけで、もうありがたかったですね。