最新主演ドラマ『私の正しいお兄ちゃん』は、古川が原作と脚本の両方に惚れ込んだ作品。大学生の理世(山谷花純)が、アルバイト先で、両親の離婚のため生き別れた兄の面影を持つ海利(古川)という青年に出会い惹かれていく。ところがある時から、海利は殺人者かもしれないという疑惑を抱くようになるという純愛ラブストーリーだ。

「もともと僕自身、サスペンスというものがすごく好きなジャンルなんですが、本作もすごく見応えのある内容で、展開が全く想像できないんです。また、恋愛パートも絡んでいきますが、殺人事件を絡めた状態で繰り広げられていくので、すごく美しくもスリリングで、切ない内容になっています」

ミステリアスな青年・海利役について、「自分の心の葛藤として、正義とは何かをずっと自問自答しているんだろうなと。真っ直ぐな部分を貫きたいピュアな青年が少しずつゆがみ始め、とある殺人につながったことで、歯車が狂い出す。とても孤独な青年で、心が痛いなあと感じました。だからこそ、自分がすがれるもの、頼るものを探して生きていくなかで理世と出会い、本当にかけがえのない存在になっていったのかなと」と話す。

本作の主題歌「指先、手」は、主演を務めた古川ならではの思いを込めた楽曲となった。「音楽を志した時から自分の楽曲がドラマの主題歌になることが夢だった」というだけに、思いもひとしおだったに違いない。「本作をテーマに描くことができたので、より作品に近づけたものができたのではないかと」と手応えを口にした。

また、ミュージカルの歌唱と、シンガーとして歌うことは全く違う行為だそうで、そこは難しい作業でもあったよう。「歌の中にも男女の登場人物がいて、その人たちにどういうことが起きて、どうやって前を向いて行けるようになったのかというドラマを、曲の中でも書きたいと思いました」

■コロナ禍で改めて感じた「人って弱い生き物なんだ」

理世役の山谷花純については、「まだ24歳ですが、僕が同じ年齢のとき、あんなにしっかりしてなかったなあと思います。芸歴が長いので、キャリアとしてはあまり変わらないんです。年下ではありますがとても経験豊かでしっかりしていますし、仕事をすごく楽しんでいらっしゃるということを、間近で感じています」と感心しきりだ。

「僕も昔はお芝居を純粋に楽しんでいたのですが、経験を積んでいく中で、もちろん今も楽しい一方で、頭で考えるようになっている部分もあります。だから、山谷さんのように楽しむことが一番大事なことなんじゃないかなと、改めて思いますし、目の前にそういう姿勢の人がいると、やっぱり刺激をもらえます」

  • 『私の正しいお兄ちゃん』完成発表会で“肩ズン”を披露する古川雄大(左)と山谷花純 (C)フジテレビ

また、孤独な理世と海利が共鳴し合っていくという物語について、「お互いに足りない部分を補うことで愛を深めていく」と受け取ったというが、今はコロナ禍だけに、非常にシンパシーを覚える。

「人って弱い生き物なんだなと、つくづく感じました。何かにすがるというか、弱みを見せあうことで、背中をさすってもらえるというわけではないけど、そういう存在を求めることは、恋愛の重要な要素を占める気がします」

古川自身もコロナ禍で「人間って1人では生きていけない」と痛感したそうだ。

「僕は1人で生きていけるタイプだと思っていたのですが、そんな僕でさえ寂しく感じるぐらい、やっぱり人と人とのつながりって大切なんだなと思いました。何気ない会話をするだけでも、すごく救われているところがあったんだなと気がついたんです。たとえば、『おはよう』の挨拶1つとっても、気持ちがちょっと前向きになれる瞬間があったんだなと。そんな人と人とのつながりを大切にしようと思っていた中で、この作品に出会えました。恋愛だけではなく、家族の話でもありますし、多くの方に見ていただきたいです」

●古川雄大
1987年生まれ、長野県出身。07年にドラマ『風魔の小次郎』で俳優としてデビューし、同年12月にミュージカル『テニスの王子様』で初舞台に立つ。その後『ロミオ&ジュリエット』(13年)、『黒執事』(15年)、『モーツァルト!』(18年)などのミュージカルに出演し、脚光を浴びる。20年にはドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ)、『エール』(NHK)、映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』などの話題作に出演。21年『女の戦争~バチェラー殺人事件~』(テレビ東京系)でテレビドラマ初主演を果たし、10月期ドラマ『恋です! ~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)に出演、10月15日配信スタートの『私の正しいお兄ちゃん』(FOD)で主演を務める。