映画『新聞記者』(19)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したことも記憶に新しい韓国の女優シム・ウンギョン。10月15日にスタートするNHKドラマ10『群青領域』では、日本のドラマで初主演を務める。チャーミングなコメディエンヌから、心の傷を抱えた繊細なヒロインまで、幅広い演技力を兼ね備えるシム。彼女の絶え間ない努力や役への真摯なアプローチ方法に迫ると共に、音楽活動への夢についても話を聞いた。
『群青領域』で重責の主人公を演じることについてシムは「最初にお聞きした時はびっくりしました。日本のドラマで主演の機会をいただくとは思いもしなかったので最初は信じられませんでしたが、頑張るしかないと思い、責任感を持って撮影に臨んでいます」と語る。
『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞して以降、日本の作品への向き合い方に変化はあったのか? と尋ねると「これまでよりも自分が責任感を持って向き合わなければいけないと思うきっかけになりました」と告白。
「自分がこれから現場でどのように成長していけるかと、そのために何を努力するべきなのかは、ずっと考えています。例えば日本語も頑張って練習していますし、お芝居に関しても、より深く役に入り込まないといけないなと。やはり役については、演じる自分が一番知っておかないといけないですし、自分からも監督にアイデアを出して、話し合いながら演じられたらいいなと思っています。そういういろいろなことを気づかされました」と明かす。
本作でシムが演じる主人公キム・ジュニは、絶大な人気を誇る5ピースバンド「Indigo AREA」のキーボード。バンドのアリーナ公演が決定したあとで、ジュニの恋人でバンドのボーカルでもある河西陽樹(柿澤勇人)が突然、脱退宣言をする。そこで茫然自失となり、SNSの標的にもなったジュニは、すべてを投げ出して海辺の町へとたどり着く。
その見知らぬ町でジュニは様々なことを体験していき、人々とのふれあいのなかで、心も再生していく。コロナ禍で、多かれ少なかれ誰しもが生きづらさを感じる今、ジュニが放つメッセージはきっと多くの人の心に刺さるはずだ。
ジュニ役を演じるにあたり、「人間としてのジュニと、アーティストとしてのジュニの悩みを分けて考えました」という。「私も役者としての自分と、人間としての自分がいるので、すべてではないのですが、似ているところもあるんじゃないかなと思います。特に自分の仕事に関して、ジュニが持っている熱量や悩みは、私も共感できる部分がありました。また人間としての苦しみや悲しさについては、きっとジュニは最初にどう乗り越えていけばいいのか、分からないまま生きていたと思うので、そこから希望や勇気を出して、どう成長していくかということで、役として演じる幅広さも感じています」
タイトルの『群青領域』とは、心の奥にある「誰にも侵されたくない領域」を意味する。シムはその意味について、演じながらずっと考えてきたと言う。
「今もずっと考えていますが、撮影しているなかで少しわかってきた気もしますし、そういう領域は存在すると思います。少し矛盾しているかもしれないですが、自分の弱さ、弱みなど、自分のことを誰かに認められたいという気持ちがそこに含まれていて、そういうものが共存していると私は捉えました。とても深いですね。きっと誰しも心の片隅にそういう気持ちや悩みを持っているのではないかなと。だからそういうメッセージが観る方々の心に響いたらいいなと思っています」