徹底した筋肉至上主義。前例のない道は、芸人としては難しいことも多かった。

「例えば漫才師を目指すなら、なんとなく自分の好きな漫才のパターンとかを勉強して、取り込んでいくと思うんです。でも当時筋肉芸をやっている人はいなかったので、どうやっていいのかまったく想像つかなかったんです。基本的に失敗が前提ですよね。そうじゃないと始まらないんです」。

さらに先輩との付き合いという部分でも大きな障害があったという。

「筋トレって真面目にコツコツやらないといけない部分でもあるんですよね。当時の芸人の考え方って、仕事したあと、みんなでご飯や飲みに行って、お話をして、そこでフリートークの技術を上げたり、エピソードトークのネタに使ったりするやり方だと思うんです。でもお酒を飲んだり、遊んでいたりすると筋肉が育たないので、自分はそれができない。すごく不安だったし、怖かったですね」。

一方で、毎日の筋トレ、食事管理など24時間筋肉と向き合える芸人なんて自分以外いない……という自信もあった。「ある意味でライバルがいないんですよね。だから滑っても生き残れたんだと思います。もっと言えば、筋骨隆々だと強くて怖いイメージがあるじゃないですか。そんななか、失敗しまくって滑り倒して突っ込まれたことで、うまく筋肉とお笑いが融合できたのかなとも思うんです」。

そこには先輩芸人の温かい眼差しもあった。「大阪当時の先輩がいま全国ネットでも活躍されています。FUJIWARAさん、陣内智則さん、ケンドーコバヤシさん、小籔千豊さん、サバンナさん、フットボールアワーさん、チュートリアルさんなど多くの先輩に突っ込んでいただけたのは大きかったです」。