木月:クイズ番組って、「ちゃんと真面目にクイズをやるつもりのない番組は、「番組タイトルで『クイズ』を標榜しちゃダメ説」というのもありますよね。それは、クイズ好きな視聴者を裏切ってしまい、かつクイズ嫌いな視聴者を初めからはじいてしまうので2回損するという。
矢野:真面目にクイズを見たいファンが一定層いますからね。『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)だって、いわゆる“おバカブーム”を生み出した印象が強いと思いますけど、ルールがしっかりしてちゃんとクイズをやってるんですよ。前半に賢い人が答えて抜けていって、最後に“おバカ解答”があるから面白いんで、システムが完成されていたんです。だから、クイズ好きでも満足できたんですよ。
日高:ルー大柴さんとダンディ坂野さんが島に行って「私のこと知ってますか?」って聞くコーナーや歌のコーナーもありましたけど、事前のペーパーテストをちゃんとしっかりやっていて、『ヘキサゴンドリル』っていう問題本も出ましたからね。
木月:作り手はそういうことをちゃんと考えてなきゃいけないんですけど、クイズ番組がクイズじゃなくなっていくときがあるじゃないですか。気づいたら、大事な“背骨”を失って、「当てもの問題」のような考えるよすがのない運ゲー企画だけになっちゃっているという。そういうときは大変ですよね。
矢野:テレビ界で視聴率の基準が世帯からコアになって、去年の秋から半年くらい、一気に若者にシフトした瞬間があったんですけど、そのときに大迷走時代があったんです(笑)。若い人たちに見てもらうために、クイズのテーマを「ファミレス」とか「お笑い芸人」とか身近なものに思い切り振ってみたりしたんですけど、やっぱりのれんが違う感じになってしまった。クイズ番組は各世代に一定層いるクイズファンをちゃんとつかんでおかないと共倒れしちゃうんだなというのを、如実に感じましたよね。
木月:そうですね。だから、今一斉に戻してますよね。
矢野:問題として面白くて、解き応えがあって、学びがあって、「へぇ~」と思えてというところを忘れちゃダメだなということなんですよ。
木月:“クイズの神様”にちゃんと向き合わなきゃいけないなって思いますよね。
日高:“クイズの神様”って本当にいますよね。いるときは意識してないんですけど、背くようなことをしたら天罰が下るんです(笑)
■当たるクイズ番組にクイズ好き演出家あり
矢野:僕の経験なんですけど、面白いクイズ番組、当たるクイズ番組は、演出家がちゃんとクイズ好きなんですよ。「僕、普段あんまりクイズ見ないんで、そこらへんは矢野さんにお任せします」っていう演出家がやるクイズって、だいたい外れるんです(笑)。やっぱり「クイズってこういうところが大事だよね」とか「昔見てたこれが面白かった」「クイズってこういう機微があるよね」というところをちゃんと理解されている方じゃないと。僕らは問題を提出して取捨選択される側なので、最終的にジャッジする演出家がちゃんとクイズに愛がある人だと成功すると思います。まさに木月さんがそうだし、『ミラクル9』(テレビ朝日)の畔柳(吉彦)さんもそうだし、『高校生クイズ』の知の甲子園路線を生んだ河野(雄平)さんなどなど。『有吉の壁』の橋本(和明)さんや『水曜日のダウンタウン』(TBS)の藤井(健太郎)さんもクイズ好き。なので、バラエティの中でクイズや謎解きを絡めた企画がとてもお上手です。
日高:『99人の壁』(フジテレビ)は、矢野が作った問題を千葉(悠矢、企画・演出)と日高で争うっていうのをやってますね(笑)。クイズ会議でクイズを楽しんでるような番組って、やっぱり成功してるような気がするんですよね。
矢野:絶対そうですよね。
木月:そこは大事ですよね。それを会議のメンバーが見ていて楽しくなれているかどうかというのも分かりますから。