日本テレビ系『金曜ロードショー』(毎週金曜21:00~)で、きょう8日に本編ノーカット・地上波初放送される映画『今日から俺は!!劇場版』。この中で、隣町の極悪高校の頭・柳鋭次役として出演しているのが、柳楽優弥だ。

16日にスタートする同局系ドラマ『二月の勝者 -絶対合格の教室-』(毎週土曜22:00~)では冷徹な塾講師役と、全く違った顔を見せる柳楽に惚れ込んだのが、両作を手がける高明希プロデューサー。

「本当に振り幅が大きい役者さんなので、すでに様々な作品でいろんな顔を見せてらっしゃるんですけど、まだまだ底知れない感じがあるんです。これがまた妙に癖になって、もっと見たくなる役者さんですよね」という柳楽の魅力や、『二月の勝者』というドラマに込めた思いなどを聞いた――。

  • 『今日から俺は!!劇場版』(左)と『二月の勝者』に出演する柳楽優弥 (C)西森博之/小学館 (C)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会/(C)NTV

    『今日から俺は!!劇場版』(左)と『二月の勝者』に出演する柳楽優弥 (C)西森博之/小学館 (C)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会/(C)NTV

■『今日から俺は!!』に他局ドラマのキャラで

高Pが柳楽に鮮烈な印象を受けたのは、2014年に放送された柳楽主演、福田雄一脚本・監督のドラマ『アオイホノオ』(テレビ東京)。「あの作品の何が良かったかと言うと、私の中ではダントツ柳楽優弥さんで、彼が真ん中にいて展開させていく吸引力がすごいと思ったんです」と熱弁する。

一方で、この作品をきっかけに福田監督と仕事がしたいと思い、オファーして制作されたのが『スーパーサラリーマン左江内氏』(17年)。ここでのタッグに手応えを感じ、『今日から俺は!!』(18年)へとつながった。

その間、柳楽にも別の作品でオファーし続け、スケジュールの都合などでタイミングが合わなかったが、ようやく実現したのが『今日から俺は!!』第3話でのゲスト出演。なんと『アオイホノオ』で演じた焔モユルの役柄で登場するという局を越えた福田作品コラボで、「すごいミーハーなファン心理も働いてしまって…」と本音もありつつ起用した。

その後、『今日から俺は!!劇場版』の制作が決定。原作の「北根壊高校編」でストーリーを作ることは早々に決まっていたが、北根壊高校の頭・柳鋭次役のキャスティングにあたって、高Pが「3話で柳楽さんが出ていなければオファーできたんですけどね」と言ったところ、福田監督から返ってきたのは「絶対に柳楽くんがいい!」という迷いのない言葉だった。

一度出たキャストが、同じ作品に別の役柄で再度出演することはできないという暗黙のルールに対し、「それはそれ、これはこれですよ」と割り切った福田監督。高Pは「そういう発想の仕方もあるのか」と理解し、柳楽のマネージャーにオファーすると「面食らわれていたんですが(笑)、『そこまで求めてくれるのはうれしい』と言っていただいて」ということで、再び『今日俺』の世界に柳楽が登場することになったのだ。

  • 『今日から俺は!!劇場版』より (C)西森博之/小学館 (C)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

■想定外のセリフの読み方に「ゾクゾクっとする」

柳楽演じる柳の髪型は、肩にかかるロン毛。地毛ではなくカツラを付けていたが、「最初の衣装合わせのときに、どうしても“ムロさんPart2”(※)になってしまったので、ナチュラルでカツラ感をなくすために、何度も作り直してもらいました。だから、ムロさんのカツラよりお金かかってます(笑)」とのこと。

(※)…ムロツヨシ演じる高校教師・椋木先生は、ロン毛の金八先生の風貌をしている。

そうした“側”の作り込みがある一方で、セリフを入れたときの役作りに驚かされたという。

「役者さんって、台本を読んで汲み取る能力がすごい人たちなんですけど、柳楽さんは“このセリフをどう読んだら、役柄を自分にフィットさせられるのか”という感覚がちょっとずば抜けてるんだろうなと思いました。私も、台本を作る過程で何度も読んでいくうちに、『こう読むだろうな』という想定のもとで現場に行くんですけど、多くの役者さんはそれを超えてきてくれて、やっぱりすごいなと思わされるんです。でも柳楽さんの場合は、『えっ? そう読む!?』っていう全然想定してなかった読み方をされるんですよ。一瞬ビックリするんですけど、その役柄にマッチしていて、ゾクゾクっとする経験を現場でさせてもらって、やっぱり底知れない俳優さんだなと思いました」

『今日から俺は!!劇場版』で、それを感じた場面を聞いてみると、「各シーンでもそうなんですが、トイレで泉澤祐希さん演じる森川悟を守るフリをして『お前ら何やってんだよ』って入ってくるシーンは、いやらしくやるのかなと思っていたんですけど、全然違うパターンを持ってきたんです。『このほうがこの先何をするんだろう…っていうヒヤヒヤ感を出してくれるな』と思って、モニターを見ながら福田さんに『柳楽さん、やっぱりすごいですね』って言ったら、福田さんがすごく大きくうなずいていたのが印象に残っています」と明かしてくれた。

柳楽と福田監督との相性は「もうツーカーですね」と抜群。「ナイフの細かい持ち方とかはディスカッションしていましたけど、『ここをこうしてほしい』『ああしてほしい』というのをわざわざ言語化しなくても、台本を読んで汲み取ってくれる役者さんという信頼が出来上がってると思います」と印象を話す。

  • 賀来賢人=『今日から俺は!!劇場版』より (C)西森博之/小学館 (C)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

■賀来賢人や磯村勇斗が熱望「もっと絡む共演を」

『アオイホノオ』で高Pが特に印象に残ったのは、柳楽の“心の声”だった。「モノローグって、下手だと本当に目も当てられないので、『きわどい手法だな』と、私はそれまで敬遠ぎみだったんです。しかし、『アオイホノオ』のモノローグは本当に見事で、説明としてではなく、ドラマ演出としてしっかり成り立っていたので衝撃でした」といい、「それがあって、『今日から俺は!!』は、『アオイホノオ』のように心の声をぜひ生かしてほしいと福田さんにリクエストしました。価値観を変えられるほど、素晴らしかったです」と狙いがハマった。

『今日から俺は!!』で共演した賀来賢人や磯村勇斗は、柳楽に対して「もっと絡む共演をしたい」「芝居でガッツリやりたい」と熱望していたそうで、「対面する役者さんをそれだけ惚れ込ませていたんです」と、その魅力の裏付けを実感したそうだ。