16日にスタートする柳楽主演の新土曜ドラマ『二月の勝者』は、コロナ禍の影響で放送時期が延期されていた。もともとは昨年7月のスタートを予定しており、柳楽へのオファーは、『今日から俺は!!劇場版』の出演が決まった直後だったという。
「これも柳楽さんがやってくれたらすごく面白くなると思ったんです。映画が控えてる中で節操ないと思われるかな…とも考えたんですけど、福田さんの『それはそれ、これはこれ』という言葉を借りて、マネージャーさんに『全く別件なんですけど、映画の公開時期にやる連ドラの主演をオファーさせてほしいんです』とお話ししたら、それもまたびっくりしながら『ありがたいお話ですね』と言っていただき、成立しました」
柳楽が演じるのは、最強で最悪のスーパー塾講師・黒木蔵人。「合格のために必要なのは、父親の“経済力”そして母親の“狂気”」など、辛辣な言葉を突きつけるキャラクターだ。
この役をオファーしたのは、「黒木はセリフでキツいことを言っているんだけど、その言葉がちゃんと意味を持って深みのあるものにしたいと思っていたんです。柳楽さんがやってくれることで、ちゃんと生きた言葉になる信頼感があるし、柳楽さんの底知れなさがリンクすると思いました」という意図から。
さらに、「現場に来るまでに、すごく考えて役作りを完成させてくる人なんですが、それを対面する役者さんの前で捨てられる人でもあるんです。井上真央さん、加藤シゲアキさん、岸部一徳さんといったそうそうたる共演者がいて、彼らと向き合う中でどういう黒木になっていくのか、私も楽しみですね」と期待を示した。
クランクインは、“二月”の雪が降る中、入学試験会場の門前で井上真央とともにたたずむ場面。撮影は真夏だったが、ダウンコートを着ての撮影で、「ものすごく汗をかくので、ダウンの中に、通気性の良い、体にピタッとフィットする服を着てたんですけど、その姿でより筋肉が盛り上がっているのがよく見えて『いいガタイに仕上がったね』って言ったら、『スーツを着た時のシルエットを計算して体作りをした』ってドヤ顔してました(笑)」と、現場の様子を報告してくれた。
『今日から俺は!!』では笑顔の裏で狂気を見せる恐怖の不良生徒、『二月の勝者』では本音主義で鋭い洞察力を持つスーパー塾講師を演じ分ける柳楽。
他の作品も含め、これだけ幅広い役柄を任せられる俳優として、「本当に稀有な存在だと思います」という高Pは「まだ31歳で若いですから、どんどんこういう人が主役を張っていけるドラマ界になっていけばいいなと思います」と大きな期待を寄せている。
■『女王の教室』の“アンサードラマ”に
『二月の勝者』は、放送予定が1年3カ月延期となったことで、キャラクターのブラッシュアップも行っていったそう。
「塾講師の方を取材していくと、『自分たちは教育者じゃありません』というスタンスを取りながら、誰よりも教育のことを考えてらっしゃるというのをすごく感じたんです。逆に学校教育の現場が、いろいろな制限や親御さんからの意見などの問題があって、なかなか難しくなっている状況がある。その中で、中学受験という1つの目標に対して子供たちをどうしてあげるのが一番良いのかというのを考えられる塾講師の皆さんの姿が、まさに教育とリンクする部分だと思ったときに、井上真央さん演じる佐倉の目線にかつて教育者だったという肩書きを乗せることで、原作の見応えはもちろんそのままに、ドラマとして訴えかけるものがまた変わるんじゃないかと、この1年でなりましたね」
また、かつて土曜ドラマ枠で放送された『女王の教室』(05年)の“アンサードラマ”にしたいという狙いも。天海祐希演じる冷徹な教師が、教室の独裁者として立ちはだかり、児童たちの自立心を引き出していく作品だったが、「あれから16年が経って、あの時代に問いかけたものが、今の私たちに置き換えたときにどうなっているのか。そういうものに応えていけるドラマになればいいなと思っています」と意識している。
ちなみに、塾の生徒役で多くの子役が出演するが、この中には『スーパーサラリーマン左江内氏』で主人公の息子・もや夫を演じた横山歩の顔も。「オーディションは次屋(尚)プロデューサーが担当したのですが、もや夫が入ったと聞いて『やったー!』と思いました(笑)。あれから4年経って大きくなってますから、楽しみですね」と目を細めた。
●高明希
1984年生まれ、神奈川県出身。07年日テレ アックスオンに入社し、11年に『らんま1/2』でドラマプロデューサーデビュー。以降、『35歳の高校生』『スーパーサラリーマン左江内氏』『今日から俺は!!』『親バカ青春白書』などをプロデュースし、10月スタートの新土曜ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』では企画プロデューサーを務める。