「好きなものをこだわって作る」ということは、プロの世界、しかも第一線級で活躍するクリエイターにとっては、なかなか難しいこと。神山監督も「アニメーションって本来、架空のものなので、細かい設定を考えて、一つ一つ発明していく面白さがあるもの。でもテレビシリーズや劇場版もそうですが、基本的にスペシャリストたちに分業化していくことが多いんです。一番楽しい部分を誰かに譲ってやってもらわなければいけないんですよね」と商業作品ならではの葛藤に触れる。

そんななか、本作では湧き出るアイデアを存分に形にしていく作業を楽しんだ。「一つ一つのガジェットの小さなものも、自分で考えないと何も生まれてこないということを改めて感じさせてもらえました。アイデアを出すことは、ときには大変なこともあるのですが、『スター・ウォーズ』というベースはあるものの、ゼロから発明していく作業をして『創作ってこういうことなんだよな』と感じられた時間でした」。

神山監督が楽しんで作り上げた『九人目のジェダイ』。世界中の「スター・ウォーズ」ファン、そしてアニメファンが注目を集めるが「いままで作ってきたものとは違い、本当に全世界の人が観ると思うので、どんな反響があるか、正直想像できないんです」と心情を吐露すると「でも『スター・ウォーズ』は知っていても、アニメーションに慣れ親しんでいない国の方もいると思うので、その方々が、日本のアニメーションを観てどういう感想を持つのかは楽しみでもあります」と期待を口にしていた。

日本のアニメーションは世界中から目標にされる存在。幼少期から良質なアニメーションに慣れ親しんできた日本のファンの目が一番厳しいということも実感している。「割とヒットしたものを作り続けなければいけないなか、目の肥えた日本のアニメファンを満足させるために、新鮮に感じてもらえるものを作るのは大変なことです」と語るが、逆に言えばそんな難易度が大きなモチベーションにもなるという。

劇中、「スター・ウォーズ」の象徴とも言えるライトセーバーが、物語のなかで大きな役割を果たす。神山監督は「ライトセーバーというより、ライトセーバーの使い手同士がガチでチャンバラをするというシーンは、これまでの映画本編のなかでもそこまではないんです」と語ると「正当なライトセーバーの使い手同士が闘ったらどうなるか……ということは、かなりの尺を使って描けたと思います」と出来に自信をのぞかせていた。

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』はディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」にて配信中。

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