世界中に熱狂的なファンがいる「スター・ウォーズ」シリーズの生みの親であるルーカスフィルムと、日本のアニメクリエイターたちがコラボした映像企画『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がついに配信された。世界に誇る日本の7つのアニメスタジオが、それぞれの“ビジョン”で描いた「スター・ウォーズ」の新たな物語。本作で『九人目のジェダイ』を手掛けたProduction I.Gの神山健治監督が、作品への思いや企画を通じて感じたアニメーション作りの原点について語った。
神山監督と言えば「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズなど、世界的にファンが多いアニメーション監督。その一挙手一投足は大きな注目を集めるが、そんな神山監督が「なによりも自分がどんな『スター・ウォーズ』を観たいか。そこ1点で考えて作りました」とファンとしての視点を中心に置き『九人目のジェダイ』を作り上げた。
本作は、『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』のあとの世界が舞台。「銀河に平和は訪れたのか」という問いかけから、スター・ウォーズの原点でもある冒険譚を別の主人公で描いた意欲作だ。
神山監督は13歳のときに映画を観て「スター・ウォーズを作る人になろう」と野望を抱いていたことが現実になったことに「とにかく自分が『スター・ウォーズ』の制作の片隅に携われることが大きな喜びでした」と語り、いわゆる商業的なターゲティングから離れ、ファン目線で物語を構築した。
「エピソード9」のあとの世界を描いたことについては「なるべく誰も知らないスター・ウォーズギャラクシーの片隅で起きている物語にしたかった」と構想を明かすと、「でもまったく正史と関係ないものも嫌だった。過去はすでにしっかりと設定が作られているので、必然的に未来を描こうということになりました」と説明する。
今回描かれた約22分の作品は、その先を想像させる壮大な物語のプロローグとも言える内容だ。「別の作品でもそうなのですが、僕が脚本を書くときは、キャラクターのバックボーンを含め、過去未来の双方向にある程度掘っていくんです。今回『スター・ウォーズ』ファンとしては、自分だったらこんなのが観たいなという思いを入れていくうちに、大きく膨らんでしまったので、短編用に部分的に切り取り、その過去と未来が行間から香ってくるような作りにしました」。
制作に入る際「世界中のファンが、それぞれの『スター・ウォーズ』エピソードを持っているし、そのなかにクリエイターもいると思う。当然プレッシャーはありました」と正直な胸の内を明かしていたが「でも今回は、そのプレッシャーを『スター・ウォーズ』を作るチャンスをもらえた喜びが凌駕していました。好きなものを作ろうという思いはブレなかったです」と力強く語る。