坂上は1967年に生まれ、わずか2歳で劇団入り。子役デビューして”天才子役”と称された。しかし順風満帆とはいかず、人生の酸いも甘いも噛み分けてきた。54歳になった今、坂上が思う動物の魅力とは何か。
「反省材料、ですかね。うちの子たちを見ていると、人間っていうのはなんと卑しい生き物かと思います。例えばパグゾウがソファの上に寝ていて、マルちゃんは僕の膝の上に来たい。人間ならパグゾウを避けて僕の膝の上に来るかもしれないけど、あの子たちはパグゾウを踏んで最短距離で来たりする。でも、踏まれたパグゾウがそこで『何するんだ!』と怒らない。寛容さと言いますか、気にしない。学びが多いです」
犬のみならず、猫からも学びが少なくない。「猫は、犬と違ってご飯を共有できます。うちは大勢いるからかもしれないですが、『私が、私が!』とゴハンへの執着が少ない。自分のゴハンを他の子が食べても何も言わない。一方人間は、大なり小なり自分が得することを考えている。僕くらいの年齢になっても欲がゼロなわけではない。そういう現場を見ていると、欲深いのはどうなんだろうと日々思い知らされます」と語った。
犬や猫は、血のつながってない子たちと勝手に兄弟にさせられて共同生活を送っているのに、本当にうまく共生する。「それって人間みたいに『私が、私が!』となったらできないです。たしかに『僕のことをかわいがって』という欲はありますけど、次男坊が甘えているときは、他の子たちは我慢している。六男坊が甘えているときは七男坊がやきもち焼いている。お互いうまくバランスが取れています」
この先、愛する動物たちとどのように関わっていきたいかと尋ねると「プライベートでは、僕の年齢も考えるとおそらく今の子たちで終わりかなという気がします。今の子たちのお世話をして、きちんとお見送りまでしないといけません。『どうぶつ王国』ではワンちゃんや猫ちゃんを保護できる土地を買って、コロナ禍でだいぶ遅れましたけど(動物保護活動向けの)ハウスの着工作業に入れます。つらい思いをしている子たちを保護しながら、もう1回人間のことを信用してもらって、里親さんを探して……と動物保護は引き続きやっていくでしょうね」と話した。
だからこそ、今回の映画『リクはよわくない』への思いもひとしおだ。
「動物と一緒にこれから暮らしたいと思っている方々がいたらぜひ見ていただきたいです。逆に、動物と暮らしていてペットロスになった方々にも見てほしい。ペットロスになるくらい、動物に対して思い入れがある方々だと思います。僕は『もし苦しんでいる子がいたら、一緒に暮らしてあげてもらえませんか?』と言う立場なので、ぜひ見て頂きたいです」
坂上のとどまることを知らない動物愛は、苦難に陥る動物たちの助けとなりそうだ。
1967年6月1日生まれ。東京都出身。3歳で劇団に入団してデビュー。テレビドラマ『下町かあさん』(72)を皮切りに国民的子役として活躍。以降、ドラマ、映画、舞台と多くの作品に出演し、97年には映画『30-thirty』で監督デビュー。舞台の脚本・演出も手がける。2009年には、キッズアクターズスクール「アヴァンセ」を設立し、自身の子役経験を生かした独自の指導方法で評判を集めている。また、『バイキングMORE』『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)でMCを務めるなど多くのテレビ番組にレギュラー出演中。著書に『偽悪のすすめ』『パグゾウくんとシノブくん。』(講談社)など。