何度も見たあの映画、HT-A9の音で体験すると……

選んだタイトルは「スターシップ・トゥルーパーズ(BD版)」。Dolby AtmosでもDTS:XでもないリニアPCM 5.1chだが、軽く100回は見ている映画だからこその気付きがあるはず。見た目にはチャリオットバグ(ブレインバグの運搬係)推しなのだが、音が地味だから除くとして、滑空するホッパーバグの様子をきちんと再現できるかどうか。それを100型の大型スクリーンで確かめたかったのだ。

まずはチャプター13、そのホッパーバグが突然姿を現すシーンを見た。いまどきのイマーシブオーディオと比べるとサラウンド成分・空間描写は控えめだが、5.1chでもスクリーンの前方から後方へ、後方から前方へとヤツの飛ぶ様子がはっきりわかる。ウォリアーバグが怒涛のごとく押し寄せ、ホッパーバグが乱舞するあのシーンも迫力じゅうぶん、100型スクリーンに引けを取らない鳴りっぷりだ。低域もしっかり、サブウーファーなしでも爆発音に圧がある。

驚いたのは、聴取エリアの広さ。高校生の娘にも鑑賞に付き合ってもらったのだが、ソファーの端に1mほど間隔を開けて座る彼女にも、ホッパーバグの飛ぶ方向が音でわかるという。バーチャルサラウンドではなかなかむずかしい“家族でサラウンド”も、HT-A9なら実現できそうだ。

ここ数年、シアターシステムの試聴で必ず確認している「インターステラー」(4K Ultra HD Blu-ray版、音声はDTS-HD MasterAudio 5.1ch)のワームホール突入シーンも、突入直前と直後の空間の変化を見事に鳴らし分けた。こちらではオプションのワイヤレスサブウーファー「SA-SW3」を組み合わせたが、ワームホール通過中の地鳴りのような低音もよどみなく再現、緊迫感を盛り上げてくれた。

細かいことをいえば、セリフの定位が微妙にズレて感じられたが、それは音場最適化設定をやり直すか手動で微調整すればいい話だ(方向/高さ/サブウーファーの調整項目が用意されている)。文字通り、ポンと置いただけのセッティングでこれだけのサラウンド感が得られるというのは、ちょっとトクした気分にさせられる。

22万円前後というプライスタグは、少々高めに感じられるかもしれない。だが、AVアンプと7.1ch分のスピーカーをそろえたときのコストを考えれば、むしろ割安感がある。「360 Reality Audio」もサポートしているから、Amazon Musicなどで配信されている3Dオーディオ音源も楽しめる。リビングで気軽に楽しめて、使わないときは片付けられるサラウンドシステム、おうち時間の充実には格好のアイテムとなりそうだ。