徳川幕府を守るため結成された新選組は、新政府の台頭によって仲間たちが次々散っていく中、北海道に渡ってまで戦い続けて来た。土方を演じる町田啓太が劇中披露したまっすぐな太刀筋のように、その死に様は鋭く純粋で尊く、彼によって徳川の終わりもまたその姿のように見えた。最後まで諦めず命ある限り燃やし尽くした満足感のようなものがあった。徳川の王子ではないもののまるで王子のようで、徳川の戦いの終わりをまるで星が燃えながら落ちて消えるようにこれほどまでに繊細に美しく描いた物語はあっただろうか。
『青天を衝け』に土方が登場した時、どちらかといえば沖田総司が合いそうかなとも思ったが、回を増すごとに重い責任を背負ったたのもしさも感じられるようになった。年齢的には土方も町田も三十代前半で近いのである。町田には『ベルサイユのばら』のアンドレも似合いそうだなと感じた。
演出は、桜田門外の変、円四郎暗殺と時代の節目となる凄惨な出来事を担当してきた村橋直樹氏。第26回はチーフ演出・黒崎博氏が自然の美をふんだんに使ったロケーションを中心にしたことに対して、第27回はスタジオ撮影であることを逆手にとるかのように趣向を凝らし劇的な空間を作りだした。
「うわぁ~!」と泣きながら走る成一郎。彼は武士に憧れ武士として死ぬまで戦い続けようとしたが生き残って武士の想いを伝える役割を担う。こういう人もいないといけない。確かに生き残るほうがつらいかもしれない。これからが地獄だと思うが篤太夫は生き延びた成一郎に尽力することが史実でわかっているからちょっと安心ではある。
篤太夫は刀をそろばんに持ち替えようとした人物ながら決して徳川を裏切ったわけではなく、散っていった者たちの想いも背負い、経済でみんなを平等にする時代を作ろうとしている。パリで2万両を4万両に増やした凄腕の持ち主として大隈重信(大倉孝二)に一目置かれるほどの篤太夫。お金を増やす才能、うらやましい。
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