女優・歌手・声優として幅広く活躍し、謙虚な姿勢や思いやりのある人柄で多くの人から愛されている上白石萌音。初の書き下ろしエッセイ集『いろいろ』(NHK出版/9月25日発売)では、ありのままの思いがつづられており、人となりや生き方に触れることができる。上白石自身も、同書で自分と向き合ったことで気づけたことがあるという。本人にインタビューし、多くの人を魅了する人柄に迫るとともに、戸惑いもあったというブレイクへの本音や、「一生の財産になった」という朝ドラの撮影で得たものなど、さまざまな話を聞いた。
エッセイ集に初挑戦し、「生みの苦しみを存分に味わいました」という上白石。「普段のお仕事は、書いていただいた言葉を発したり、作っていただいた詩を歌ったり、あまり自分で0から生み出すことがなくて、文章を書くってこんなに難しいんだなと。本が好きでいっぱい読んできたからこそ身に染みて感じました」と語る。
自分と向き合ったことで気づいたことも。「思っていたより自分ってすごく面倒くさい人だなと思いました(笑)。また、この人について書きたいという人がたくさん浮かび、人に支えられて生きてきたんだなと改めて感じました」。
面倒くさい人とはどういうことか尋ねると、「どうでもいいことについてすごく悩んでしまうタイプで、3日で答えが出るのに半年悩んだり、うやむやにしがちなんです」と説明。「でも、執筆において根詰めて考えてみたら『なんだ、意外とシンプルじゃん!』って、私はこんなことで悩んでいたのかと思うこともあり、書くと整理整頓されるんだなと思いました」と、書くことで解決したこともあったようだ。
同書の中で「最近なんだかうまくいかない」などと悩みを吐露する場面もあるが、「私、定期的に悩むんです。作品に入る前や入りたては特に悩みがちで、暇になったときも悩んでしまいます。考える時間があると悪いことばかり考えてしまって。実はもっと暗いことをいっぱい書いていて、ボツにしたものあるんです。へらへらしてますけど、実はめっちゃ悩んでいるんです(笑)。でも、みんなそうですよね」と打ち明ける。
たくさん悩むからこそ、人の気持ちも理解できるのだろう。「人の気持ちを考えすぎるくらい考えてしまうこともあって。『もっと楽に生きたほうがいいよ』と言われることもあるのですが、人の気持ちを考えるのは大事だし、悩んでいる自分も自分なのかな」と受け止めている。
そして、自身の性格について「ネガティブ」と言うも、マイナスには捉えていない。「小さいときから暗かったです。音楽が好きだし人も好きなんですけど、ふとしたときに閉ざしてしまって学校に行けなかった時期もあって。メキシコで暮らしたことで変わったり、紆余曲折ありましたが、お仕事を始めてから考えることが多くなりました。でもネガティブって決して悪いことじゃないと思っています。その分、準備ができるし、直そうとは思っていません」
同書では、故郷の鹿児島に帰り、両親や祖父母と過ごした時間についてもつづられている。「一生大事にしたい教えを改めて口に出されてじ~んときました」と振り返り、「『学び続けなさい』、『周りに感謝しなさい』、『故郷を大事にしなさい』など、どれも当たり前ですけど、大切にしたいなと改めて思いました」と、教えをしっかり胸に刻んだようだ。
「学ぶ」ということについては、「人の言動を見ているだけで勉強になる。こうなりたいというのもありますし、こうはなりたくないというのも含めて、すべて勉強だなと思います」との考え。「学び続けている人って魅力的ですし、一生学生でいたい」と語った。