3年連続で『NHK紅白歌合戦』出場を果たし、今や国民的スターとなったムード歌謡グループ「純烈」がスーパーヒーローとなり、温泉の平和を守るため大活躍する特撮アクション映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(監督:佛田洋)が、9月10日より公開されている。

  • 左から酒井一圭(さかい・かずよし)、後上翔太(ごがみ・しょうた)、白川裕二郎(しらかわ・ゆうじろう)、小田井涼平(おだい・りょうへい)の4人をメンバーとする、ムード歌謡グループ。2010年6月23日に1stシングル「涙の銀座線」でデビュー。2017年「愛でしばりたい」がオリコン演歌チャート初登場1位、 総合チャート5位を獲得。各地のスーパー銭湯や健康ランドをめぐる地道な活動が実を結び“スーパー銭湯のアイドル”としてテレビ番組に多数取り上げられ、注目を浴びる。2018年リリースのウェディング・ソング「プロポーズ」が13万枚を突破し、この年『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、念願を叶えることとなった。今年(2021年)は舞台公演や映画出演などステージ以外でも活躍を続け、4年連続の『紅白』出場を目指す。撮影:大塚素久(SYASYA)

スーパー銭湯のアイドルとして、全国のマダムを中心に絶大な人気を誇るムード歌謡グループ「純烈」。リーダーの酒井一圭は『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年)のガオブラック/牛込草太郎、リードボーカルの白川裕二郎は『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)のカブトライジャー(電光石火ゴウライジャー)/霞一甲、コーラスの小田井涼平は『仮面ライダー龍騎』(2002年)の仮面ライダーゾルダ/北岡秀一をそれぞれ演じ、当時の「イケメンヒーローブーム」を牽引した。今回の変身ヒーロー映画『純烈ジャー』はまさに「古巣」である特撮ヒーローの世界に、彼らが華麗なる帰還を果たした作品といえる。そして、メンバーの中で唯一特撮ヒーロー作品の出演経験がない後上翔太(コーラス)が、初めてこの映画でヒーローに「変身」するというのも、大きな話題を集めている。

ここでは映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』の公開を記念し、酒井一圭、小田井涼平、白川裕二郎、後上翔太にインタビューを行った。「特撮&ヒーロー&アクション&風呂」といった娯楽要素が満載された本作を、たくさんの純烈ファン、そして特撮ヒーローファンにご覧いただこうと情熱を燃やす4人による、絶妙な湯かげんのホットなトークを楽しんでもらいたい。

――『純烈ジャー』の構想は以前からあったとうかがっていますが、緊急事態宣言を受けて、コンサートなどのイベントがのきなみ中止になり、このピンチをチャンスに変えるという意味での映画製作に乗り出されたというのがすごいですね。やはり「純烈で映画をやりたい」というのは、リーダーの酒井さんから発信されたことなのですか。

酒井:そうです。僕が言い出しっぺで、東映ビデオの中野(剛)プロデューサーや、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)の山本康平くんに相談して、映画の企画を進めました。

小田井:僕は韻を踏むのが好きなんですけど、やっぱり「言い出しっぺ」って「リーダーシップ」と響きが似てますからね。

酒井:なんやそれ(笑)。タイトルを『純烈ジャー』にしたい!というのは僕の要望なんですけど、変身のかけ声「ラブユーチェンジ」は小田井さんのアイデアです。歌番組の楽屋で、マイクチェンジャーを使って純烈ジャーに変身するとき、なんかいい言葉ないかな~って尋ねたら、小田井さんが髪の毛をいじりながら一言「ラブユー」って言ったんです。ラブユーなら「湯」ともからんでいるし、「これや! ラブユーチェンジ! 完璧や」ってことで決まりました。

――ファンの方々もご存じのとおり、酒井さん、小田井さん、白川さんは東映の特撮ヒーローをはじめとする俳優経験がありましたが、後上さんは演技についてはいかがだったのでしょうか。

後上:以前少しだけ、映画には出たことがあったんです。『テコンドー魂~Rebirth~』(2014年)という作品なんですが、このときはセリフがありませんでした(笑)。

酒井:翌年の2015年には、僕と後上の2人で河崎実監督のビデオ作品『電エース中野』に悪役で出たこともあったね。「悪烈」のブリル、カールという役名で(笑)。東京お台場の「大江戸温泉物語」でロケ撮影をしたんだけど、そのとき「いつかはここ(大江戸温泉物語)のステージに純烈として立ちたいな」とか言ってたら、その直後に願いが叶いました。

白川:そんなお台場の大江戸温泉物語も、今年の9月5日で閉館されるとのこと。あのステージにはいろいろな思い出がありますね。

酒井:後上さんはそんな感じで、ほとんど芝居の経験がないままやってきましたから、佛田洋監督も、共演する女優さんはベテランで固めておかないと心配だと思ったんでしょうね。相手役として、あの『おしん』(1983年)で有名な小林綾子さんを連れてきた! 「おしんVS後上」ですから、すごいなって思いましたよ。

小田井:小林綾子さんと共演した感想はどう?

後上:綾子さんはとても優しい方で、カメラが回っているときも回っていないときも、ずっと僕のことを気遣ってくださいました。何より感動したのは、僕たち純烈の出演する番組をずっと追いかけてくださったこと。合間に僕たちが生放送の歌番組に出演したときなんて、翌日撮影でご一緒させていただいたら「観たよ! 昨日の番組!」とお話をあちらから振ってきてくださいました。僕からすると、そんなにまでチェックしてもらえるとうれしいですし、自然と会話もはずみましたね。役の上では綾子さんが教師で、僕が元教え子なんですけど、実際にも先生みたいな存在でした。

――酒井さん、小田井さん、白川さんは東映特撮ヒーローを久々に演じることで“古巣”へ帰ってきたというお気持ちがあったと思いますが、後上さんは何事にも初めての経験が多かったのではないでしょうか。

後上:実は、僕も“古巣”というか、15年前にタイムスリップしたような感覚を映画の中で味わったんですよ。

酒井:高校生時代の出来事を描く「回想シーン」があったね。

後上:高校生のときは髪を染めていたので、ウィッグを4~5種類用意していただき、昔の僕はこんな感じだったなあと思い出しながら選びました。顔には濃い目のファンデーションを塗り、日焼けした感じも出してね(笑)。塗りながら「もうちょっと黒みを強く」とか「日サロで焼いたみたいな赤味もほしい」とか、メイクの方たちと役を作っていったのが、とても楽しかったです。

――妖しい美女占い師・桶川アリサ(演:出口亜梨沙)と出会い、後上さんが「運命」を感じるシーンで、とつぜんミュージカルのように2人が歌い踊り出したときは驚かされつつも、ムード歌謡グループならではの「歌とダンス」を映画の中でもぞんぶんに見せていこうという意図が伝わってきて良かったです。途中、酒井さん、小田井さん、白川さんがいきなり現れて、後上さん、出口さんを盛り立てる演出もコミカルですばらしいですね。

小田井:ミュージカルの撮影では、ほんとに大勢のスタッフさんがライトの調整をしたり、スモークをたいたり、地面に水をまいたり、セッティングにものすごく時間をかけていたのが強く印象に残っているんです。3~4時間はかけてたんとちゃうかな。あの一連の作業を経ているのを知っているからこそ、僕らも頑張らなアカンなって思いましたし、とても価値のあるシーンになったなと思います。

白川:あそこで僕らが歌っている「君に会うために」という劇中歌は、メロディーがよかったね。

後上:作曲をされたのが『ハリケンジャー』の主題歌を歌っていた高取ヒデアキさん、そして編曲が籠島裕昌さん。作詞はうちのリーダー(酒井)なんです。めちゃめちゃ美しいメロディーに乗せて、わりととんでもない歌詞が飛び出すので、曲と詞のミスマッチぶりもポイントなんじゃないかと思います(笑)。

酒井:「プロだとあとくされないし、気持ちいい~」とか「純烈なんて、どうでもいいのさ~」ってやつやね(笑)。あの歌詞は僕が後上さんをイメージして、というより後上さんそのものを歌いあげようと思って書きました。あの曲だけは歌詞が先=「詞先」で、私が書いた詞を一言一句変えずに高取さんがメロディーに乗せてくださり、ああなったんです(笑)。

後上:純粋に、お風呂に入れば気持ちがいいって意味ですよね(笑)。

白川:あのミュージカルシーンに顕著ですけど、この映画って酒井一圭の「おもちゃ」のような作品じゃないかって思いますね(笑)。

酒井:そりゃそうだよ。あなたたちを使って俺が思いどおりに遊んでいるんです(笑)。