Uber Japanは9月9日、オンラインカンファレンス「MaaSが変えるモビリティの未来」を開催した。イベントの第1部では、同社に加えて国土交通省、日本航空、WILLERが参加して、政府と各事業者の視点から、モビリティの高度化を目指す取り組みについて述べられた。

基調講演「日本版MaaSの推進に係る最新の動向」国土交通省

現在は人口減少の進行に伴って、公共交通機関の利用者数も減少傾向にある。全国の約7割のバス事業者は一般路線バス事業が赤字となっており、特に地方では、公共交通機関の存続も困難となっている。一方で、マイカーを利用できない学生や高齢者においては、買い物や通院に行けないことがQOL(生活の質)低下にもつながるため、公共交通機関に頼らないと生活できない場面もある。

こうした課題を受けて国土交通省では、公共交通機関の活性化を進めたいという。また、同省ではカーボンニュートラルも重要な取り組みの1つと捉えている。こうした背景を受けて、同省の総合政策局 モビリティサービス推進課 課長補佐 石川雄基氏は「今後の公共交通機関の在り方に関する議論に対する回答の1つとして、MaaSがあると考えている」と述べた。

  • 国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 課長補佐 石川雄基氏

MaaSはフィンランドなど北欧を発祥として広がってきた考え方である。しかし、欧州と日本では公共交通機関の運営形態が大きく異なっており、単純な輸入は難しいのだという。欧州では都市の交通局が公共交通機関を運営しているため、交通機関の種類を超えた連携が比較的容易である一方で、日本は複数の民間業者が公共交通機関を運営しており、同一の地域内でも複数業者がサービスを提供していることは珍しくない。

そこで同省は、MaaS関連データの連携に関するガイドラインを作成した。異なる事業者同士が一体となってMaaSに取り組む際には事業者間の連携が必要となるが、同ガイドラインは、データ連携を円滑かつ安全に行うために留意すべき事項を整理して、事業者間の連携促進を図るための方針を定めたものだという。

また、地方自治体の取り組みについては予算支援も進めている。令和3年度には12地域の事業を採択した。取り組みの初期段階で必要となる資金を支援するという。キャッシュレス決済や混雑状況を可視化するソリューションの導入支援など、モビリティの高度化を促進する狙いだという。

石川氏は「MaaSは多くの議論が交わされている段階であり、話者によってさまざまな認識があると思う。MaaSは何らかの課題を解決するための手段として使うべきであり、企業間や企業と行政が共通の認識を持って課題解決に取り組めたら」と述べた。

「Uberが考えるモビリティの未来像」Uber Japan

Uberは移動を通じた機会創出をミッションに掲げており、人や物の移動をテクノロジーで支援する。同社が提供する配車アプリは世界71カ国1万以上の都市で利用可能であり、国外であっても使い慣れたアプリで配車できることが特徴であるという。

同社はこのアプリについて、さらなる利便性の向上を目指して、複数のサービスを1つのアプリに統合した「スーパーアプリ」の構築を狙う。日本国内においては配車アプリで食料品配達にも対応しており、他国では同アプリからマイクロモビリティの利用や荷物配達も可能であるとのことだ。

タクシーの輸送人員および営業収入が減少傾向にある中で、同社のモビリティ事業ゼネラルマネージャー 山中志郎氏は「テクノロジーによって、タクシー業界を再び活性化できると思っている。当社の配車アプリがその起爆剤になれば」と語る。具体的には、生活者の移動におけるファーストマイルおよびラストマイルの交通に対して、アプリ配車によるタクシーの利用が大きな効果を果たすという。

  • Uber Japan モビリティ事業ゼネラルマネージャー 山中志郎氏

現在、国土交通省において、タクシーの需要と供給をリアルタイムに測定することで運賃を動的に変化させる、ダイナミック・プライシングの実証実験が予定されている。同氏はダイナミック・プライシングが実用化されることで、オフピーク時の運賃を引き下げが可能になり、さらにタクシーを利用しやすくなると考える。さらには、利用者の増加によって事業者の利益改善にもつながり、タクシー運転手の労働環境改善も見込めると展望を語った。

同社は今後、公共交通機関と配車サービスの連携を目指す。1つの配車アプリで、現在地から目的地までの移動に必要な、配車や公共交通機関の料金をまとめて支払うといった利用法を見据えており、実際にサービスの提供を開始している国もあるという。生活者に対する移動の利便性が拡大することで、事業者の壁を超えた双方の利用拡大にもつながるとのことだ。