木月:テレ朝さんの編成がすごいなと思うのは、月曜に『お試しかっ!』があったのがなくなって、日曜の夕方に『帰れまサンデー』に移って企画が増強されて、サンドウィッチマンさんが加わって月曜に戻ってくるっていう、これは一体何なんでしょう(笑)。この仕組みが、本当にすごいなと思って。

米田:味がする最後まで噛み続けるという精神かもしれません(笑)

木月:でも、それ絶対いいことだと思うんですよね。演者さんとスタッフのチームの信頼関係を絶やさないで、新企画にして何とかして結局元の枠に戻すというのは。長年やってるスタッフのチームだからこそやってくれることって、あるじゃないですか。「はじめまして」っていうスタッフチームが演者さんの100%の力を引き出せるかは分からないですもんね。

米田:そう思います。『お試しかっ!』でやってた「帰れま10」は、過去には少し数字が落ち着いてきた時期もあったけど、今はまた高視聴率をとったりしてるように、やっぱり良いコンテンツだから、このままなくしちゃうのはもったいないというのが、ずっと編成的にもあったんだと思います。『ナニコレ珍百景』とか『しくじり先生』とかもそうですけど、良い番組なんだから絶対ちゃんともう1回やろうというのを、あんまりカッコ悪いとか思わずに再トライできる文化がある気がします。

木月:それは素晴らしいですよね。土曜の22時台に行った『激レアさん』が、まだ月曜23時台に戻ってくるとか。そういうところが素晴らしいなあ。

米田:そうですね。支持される場や正しく評価される場に戻れるというのは、番組にとってもいいですよね。面白い番組なんだし。

木月:「これで終わっちゃうのか…」とすごくもったいないなと思うことは、よくあるんですよ。サンドウィッチマンさんも、テレ朝さんは長いお付き合いですよね。

米田:『黄金伝説』で2人の企画をやってもらってからつながってる感じで、付き合いは長いと思います。

木月:ブレイクされた後、かなり早い時期からテレビ朝日さんでは冠番組をやられてますよね。うちで言うと、『ただ今、コント中。』という番組は、有川(崇)さんという方がBSフジで『東北魂TV』を長年やってらっしゃったことが基礎にあって成立している番組と聞いています。演者さんとそういう信頼関係でつながり続ける大切さってテレビ局において重要な資産であり、ここぞという時にそれが効いてくることがよくあるんですが、それが評価されたり、大事にしようって方向になることは少ないんですよね。いきなり新番組を始めて、いきなり成功することはほぼ無くて。その成功の裏にあるのは、演者さんと脈々とつながっている信頼関係や、終わってしまった他の番組で培われたノウハウのような目に見えにくい資産のおかげだったりしていて。

■バラエティの演出家は孤独なのか!?

米田:前回のこの談義の記事で、「演出は孤独だ」という話をされていたと思うんですけど、僕はあそこが一番キュンとしました(笑)。僕も全然褒められないし孤独です。加藤さんは『オモウマい店』があれだけヒットしたら、褒められます?

加藤:直接褒められることはあまりないので、Twitterめちゃめちゃ見て慰めてます。

(一同笑い)

加藤:でも、もう1人竹内(翔)と僕の2人で演出をやっているというのもあって、孤独という感じではないですね。プロデューサーや演出、DやADみんなで、「ああしよう」「こうしよう」って雑談してたら、OAが終わってるみたいな感じで。和気あいあいと楽しくやれているので、孤独と思ったことはあまりないです。

米田:僕は結構孤独なんで、こうやっておふたりに『家事ヤロウ!!!』のことを褒めてもらっただけで、しばらくやっていけます(笑)。バラエティって味のすぐしなくなるガムみたいで、数字が良くても次の日にはすぐ忘れられちゃうんですよ。1週間くらい偉そうに局の中を歩きたいのに(笑)。あと、裏に強い番組が来て、編成から「ここはキツいから頼む!」みたいに口説かれるじゃないですか。「『家事ヤロウ!!!』勢いあるから頑張って!」とか、そこの求愛はすごいんですけど、いざやってみて数字(視聴率)がまあまあでも、普通に数字書かれちゃうんですよ。だから、局内に数字を貼り出すときは、「●●%(※裏最強の中)」とか書いてほしいです(笑)

木月:結局我々はそうなんですよね。すぐ次の週が来て、永遠に走り続ける…。

米田:マラソンですね。

木月:加藤さん、ゴールデンのバラエティはマラソンですよ。

加藤:勉強になります(笑)

次回予告…激戦!火7バラエティ演出編~<4> 『ナゾトレ』『オモウマい店』『家事ヤロウ!!!』ライバル番組への本音は…

●米田裕一
1981年生まれ、新潟県出身。東京理科大学大学院卒業後、07年にテレビ朝日入社。『くりぃむナントカ』『いきなり!黄金伝説。』『中居正広のミになる図書館』『陸海空 地球征服するなんて』のほか、『濱キス』~『キスマイレージ』までKis-My-Ft2の全番組を担当。現在は『家事ヤロウ!!!』のほか、『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』『帰れマンデー見っけ隊!!』『10万円でできるかな』で演出を務める。

●加藤優一
1986年生まれ、愛知県出身。豊橋商業高校卒業後、07年に制作会社「マーナイス」に入社し、中京テレビ放送制作部に配属。『PS』『前略、大徳さん』『PS純金』などを担当し、現在は『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』の演出を務める。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。