東京オリンピックによって休止していた大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)が15日、4週間ぶりに放送された。第24回「パリの御一新」(脚本:大森美香 演出:田中健二)はパリ編の終わり。いよいよ明治時代に突入間近、篤太夫(吉沢亮)は「俺が探し求めてきたものはこれだ!」と“1人がうれしいのではなく皆が幸せになる”方法に出会った。
慶応3年(1867年)の大政奉還に端を発し慶応4年(1868年)に始まった戊辰戦争の様子を日本から遠く離れたパリで書状によって知らされるたび、成す術なくじりじりする篤太夫や民部公子こと松平昭徳(板垣李光人)たち。そんな中で篤太夫は国債や社債でお金を儲け、これこそがみんなが幸せになる方法だと悟る。戊辰戦争からの明治維新を描くと殺伐なものになりがちだが、日本とパリの手紙のやりとりで描くことで違う印象になる。時代が江戸から明治へ変わるのと同時に近代日本経済が始まるという明るい未来が篤太夫と共に輝いている。
篤太夫こと栄一がパリに行ってから5年が経過した慶応3年の暮れ、血洗島に杉浦愛藏(志尊淳)が栄一の文を届けに訪れる。民部公司の凛々しい写真と篤太夫こと栄一の洋装姿の写真を受け取った千代(橋本愛)は「なんてあさましいお姿に」と困惑する。あれほど外国人に対して嫌悪を覚えていた栄一の心変わりが千代は理解できない。
翌、慶応4年、正月のパリ、すっかり外国暮らしに慣れた篤太夫のもとに、昨年、大政奉還が行われた報告の書が届く。2月になるとまた報告が来て、大政奉還した慶喜(草なぎ剛)は京都から大阪城に移り、そこに公儀の兵が集結していると記されていた。
日本は戦で荒れているが、パリは優雅。篤太夫はラベンダー色の壁の部屋に暮らしている。血洗島の家族たちからの手紙を読むと、篤太夫の見立て養子になった渋沢平九郎(岡田健史)は文武に励もうとしている。長七郎(満島真之介)がようやく牢を出たが塞いでいると尾高惇忠(田辺誠一)からの手紙。母ゑい(和久井映見)のあたたかい手紙。千代の手紙は「あまりにあさましく見るのもつらきこと」「どうか以前のように勇ましいお姿にお戻りくださいますようお願い申し上げます」と厳しいことが書いてある。そんなことを言えるのは彼女だけ。昔から千代は篤太夫に生きる指針を語っていた。例えば第5回では「強く見えるものほど弱きものです。弱きものとて強きところはある。人は一面ではございません」という含蓄ある言葉を栄一に語っていた。篤太夫は「会いてえなあ」と泣き笑いする。
3月、京と大阪で戦がはじまったという報告が入る(鳥羽・伏見の戦い)。薩摩の兵が砲弾を打ち、慶喜は大阪を発ち江戸に戻り、「朝敵」扱いされたことを知って、いてもたってもいられない篤太夫たち。
4月、成一郎(高良健吾)からの文(3月8日付け)で幕府軍として闘って銃弾で負傷、慶喜は上野寛永寺に蟄居されたという報告が入る。4月には江戸城無血開城が行われる。遠く離れた外国では情報にタイムラグがあり、出来事を知った時にはさらに状況が進んでしまっていることは切ない。