コンビ結成14年、お笑いコンビ・マヂカルラブリー(野田クリスタル、村上)の躍進が止まらない。昨年、彼らにとって雪辱戦とも言える『M-1グランプリ2020』では見事トロフィーを手にし、野田はピン芸人の頂点を決める『R-1ぐらんぷり2020』でも栄冠を手中に収めた。
『M-1』優勝劇で同時に“漫才論争”が巻き起こったことは周知の通り。披露した「高級フレンチ」「つり革」のネタでは野田がほぼしゃべらず、村上が状況説明をしながらツッコミ続けるというスタイルが、漫才かどうかで話題になったのだ。
「そもそも僕らの漫才は、そういうレベルじゃない」と無関心だった2人だが、DVD『M-1グランプリ2020 スピンオフ マヂカルラブリー漫才論争へのアンサーLIVE』(8月18日発売)で、何が漫才で何が漫才ではないのか、一つの道筋をつけているという。そんな2人にインタビューすると、漫才論争が巻き起こった時、今の漫才が置かれている状況に対して危機感を抱いたと明かす。チャンピオンの目には今のお笑い界の状況はどう映っているのか。忘れたことはないという上沼恵美子の審査や、コンビの関係についても語ってくれた。
――その独特の漫才のスタイルは、初期から貫いているものなのでしょうか?
野田:スタイルが変わらないというより、これと決めてやっていないので、変わっていると言えば変わっているし、変わっていないと言えば変わっていないです。
村上:自然の変化しかないですね。変えようと思ったことはないです。
――ネタは基本的に野田さんが作っている?
野田:僕がやりたいテーマを持ってきて、村上とやりながら作っていく感じです。「つり革」だと、「つり革につかまりたくない」というのがあり、そこからどう動いていくかはやりながら決めて、それ村上が見てどう思うかみたいな。
――相談をしながら作り上げていくのでしょうか。
野田:相談はしないです。つり革で揺られて床を這いずり回った後、次は当然トイレもあるだろうし、気持ち悪くもなるだろうし、横揺れだけじゃなく縦にも揺れるだろうと。15分くらいでできますよ(笑)。
村上:1回通したらもうできていますね(笑)。
――とはいえ難産の場合もあるのではないでしょうか?
野田:もちろんあります。でもそういう時はネタを変えます。追い詰めず、捨てて別のテーマに行きます。面白いネタはすぐできるので、行き詰まるってことは面白くないんだなと。最近は詰まることはないです。すんなりいくだろうなってわかるようになってきました。
――そのスタイルが最初に世の中に広まったのが2017年の『M-1グランプリ』、審査員の上沼恵美子さんとの一件だったと思いますが、お二人はどう受け止めていたのでしょうか?
野田:もちろん悩みましたし、もう嫌だなとも思いましたよ。知名度が上がればいいものではないんですよ。それはもう炎上と同じなので。
村上:「面白い人だよ!」と言いたかったのに「面白くないでしょ?」だと逆ですから、一番嫌でした。
――それはどう乗り越えたのですか?
野田:切り替わった瞬間はないです。実は昨年の『M-1』は決勝が決まった瞬間、嫌で嫌で仕方なかったですから。ずっと引きずっていて、ああはなりたくないという思いで頑張りました。
――あの一件がコンビにとってプラスになったと感じている部分もありますか?
野田:仕事が増えたことによって、経験値はちょっと上がったのかなと。2017年の時に最下位でちょこちょこテレビに出ていたことがよかったと思います。
村上:すべることもある、それをわかった状態でテレビに出ることは強いと思います。
――あの2017年を踏まえると、昨年の『M-1』優勝は喜びもひとしおだったのでは?
野田:優勝した直後は、忙しくなっちゃうなあと(笑)。でも、優勝はテレビに出ていくためには通らざるを得ない道だと思っていたので、頑張るしかないと思いました。
村上:今夜は寝られなさそうだなと、それを最初に思いました(笑)。ただ、実を言うと、1本目のネタが終わったところがめちゃくちゃうれしかった。上沼さんが高い点をつけてくれて、「ごめんな、そんなことあったっけ?」って。あそこが一番うれしかったです。
――やはり優勝効果は違いますか?
野田:それはもう全然違いますよ。テレビで3~4本の収録が1週間続いたり、これはもう「タレントじゃねえか!」って(笑)
村上:すごいっすよ(笑)。
――チャンピオンキングの称号は重圧にはなっていないですか?
村上:重圧はないです。『M-1』、マジ強いんですよ。仮にスベってもM-1チャンピオンだから、が勝つんですよ。M-1チャンピオンなのにスベっちゃった、じゃないんです。M-1チャンピオンでもスベることあるんだぜ、みたいな。『M-1』はすごい盾になるんです。