――役柄そのものへの反響も大きかったんですね。実は『桜の塔』脚本家の武藤将吾さんと田村直己監督に取材した際には「関さんの演技力にびっくりした」「本当に真面目で芝居が好きなのが伝わってきた」との声もありました。“お芝居”への思いを教えてください。
声優の養成所では「声優は声色を変えるだけじゃだめだ、ちゃんと演技を学べ」が講師の方の口癖で、実際に舞台演劇を学ばされていました。その経験から、僕は自分で劇団を作って30年近くお芝居をやっています。やはり「声優=声色を変える人」という印象が強いのか、ドラマを見た方に「お芝居“も”できるんだ」と言われることがありましたが、僕の中で声優と俳優は地続きにあるものです。
――声優も俳優も“演技をする”という意味では同じ仕事だということですね。
ただ、『桜の塔』の現場はとてもあたたかく迎えてくださったので居心地は悪くなかったんですけど、アニメとドラマでは勝手が違うので緊張しました。特に、最初に見せた演技でどんどん進行が決まっていくというドラマのスピード感に戸惑いましたね。あと誰も間違えないんですもん!(笑)。もちろん僕ら声優も間違えないですけど、不慣れなドラマの現場で「どんな感じかな?」とドキドキしていたら、誰もNGを出さずどんどん進んでいくという(笑)。
――牧園課長の出演シーンである捜査会議には大人数が参加されていました。
アニメではスタジオの中に声優しかいないけど、ドラマでは目の前にカメラマンさんたちがいるのでプレッシャーを直接感じました。やっぱりこういった形で参加して……勝手にプレッシャーを作り上げちゃう部分もあるじゃないですか。
――「あの“声優・関智一さん”はドラマの現場でどう出るんだろう!」みたいな(笑)。
そうなんです(笑)。間違えたときも「皆怒ってないかな?」って勝手に自分で作ったプレッシャーに潰されそうになってました(笑)。皆さんは絶対に何も思ってないんですけど!
――先日は『ボイスII 110緊急指令室』(日本テレビ系)の初回ゲストとしても出演されていましたが、今立て続けにドラマへ進出されている理由はあるのでしょうか。
僕は『ゴレンジャー』をはじめ、テレビドラマに憧れてお芝居を始めて、たどり着いたのが声優。原点である俳優業も、チャンスがあるならやりたいとずっと思っていました。ご縁があって『桜の塔』で足を踏み入れたからには、色々経験して、自分の中で「俳優業をやった」という足跡を残したいなと思っています。お話を頂けるなら、スケジュールが合う限り積極的に参加していきたいなと。どんなお仕事でも間が空くと忘れてしまうから、なるべく続けてやりたい。もうすぐ50代に突入しますが、この歳で新しい挑戦をさせてもらえる刺激的な機会に感謝しています。
――声優や俳優のほかにも、同人活動やYouTubeなどたくさんのことにチャレンジされている関さんのエネルギッシュな姿に「人生、楽しそう!」と思っている方も多いと思います。モットーがあれば教えてください。
声優という軸を持ちつつ、「そのとき一番楽しいと思ったことを一生懸命やる」です。同人活動は、先にやっていた声優さんに「とても面白いし向いてると思うよ」と勧められて、やり始めたら実際に楽しかった。コロナ禍になるまでは、座長を務める劇団のメンバーを連れて毎回コミケにサークル参加していました。YouTubeも同じで、きっかけは人に勧められたこと。ほかにもそばやうどんを打つこと、模型の原型を作ること、たくさん好きなことがあります。人から勧められたことにもまずは挑戦してみて、実際に面白かったらさらに一生懸命やってみる。俳優業も含め、これからもたくさんの刺激を受けて“新たな自分”にどんどん出会いたいです。
1972年9月8日生まれ、東京都出身。1991年、海外アニメ『レポーター・ブルース』農夫役の吹き替えで声優デビュー。2005年、リニューアルされた『ドラえもん』で骨川スネ夫役に選ばれ代表作の1つに。出演作は『機動武闘伝Gガンダム』ドモン・カッシュ、『新世紀エヴァンゲリオン』鈴原トウジ、『カードキャプターさくら』木之本桃矢、『ふたりはプリキュア』メップル、『Fate』ギルガメッシュ、『のだめカンタービレ』千秋真一、『PSYCHO-PASS サイコパス』狡噛慎也、『鬼滅の刃』不死川実弥、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ハドラー、『呪術廻戦』パンダなど多数。劇団「ヘロヘロQカムパニー」の座長を務め、舞台の活動も行う。演出や脚本も手掛け、CDをリリースするなどの音楽活動も。特撮ファンとしても知られ、『スーパー戦隊シリーズ』にも数多く関わる。
由緒ある学校・五星学園(いつぼしがくえん)を舞台に、主演・ジャニーズJr.の美 少年たちがヒーローとなり魔人を利用して壮大な野望の実現を目論む学園長に立ち向かう“戦隊ヒーロー”と“学園ドラマ”が融合した新ドラマ。TELASAでは放送日の9時から先行配信されており、全話一挙配信も。
ドラマのメイキング風景などを収めたオリジナルスピンオフ『特撮美 少年』。関が講師を務める「ヒーローサマーフェスSP 関智一のスーパー戦隊 ヒーロー講座」は14日(25:05~※関東ローカル)に同局で放送され、完全版が21日、28日の2週にわたってTELASAで配信される。