最年少13歳から最年長23歳までそろった15人が参加した富士山合宿からさらに意識したのは、彼らと“信頼関係”を築くことだった。
「僕も彼らと同じ方向を向いて、一緒にやっていかないと意味がないと思いました。信頼関係をこちらから作っていく必要もあります。アーティストしての僕をリスペクトしてくれている部分はあると思いますが、一プロデューサー、一社長としての一面はそんなに知らないはず。だからこそ、信頼関係を作っていく必要があると思いました」
技術的なアドバイスから内面性に関わるものまで寄り添いながら語りかけるSKY-HIに、参加者ひとりひとりが絶大な信頼を寄せている様子が実際に伝わってくる。
それが結果として、通常のオーディション番組と一線を画すものに印象づけているのだ。ギスギスした空気感はゼロ。参加者同士の絆さえも深めていた。
「脱落してしまった参加者たちが得たものは“仲間”だったと答えてくれているんですよ。ライバルに対して、あり得ないコメントかもしれませんが、事実です。撮影クルーも『この空気感は他のサバイバル番組では見たことがない』と口をそろえて言っていました。でもそれは決して、生ぬるいものではありません。プレッシャーと緊張、不安が常に彼らの中にありました」
■「指導方法は間違っていないはずです」
数千時間に及んだカメラ映像から丁寧にその様子がまとめられたHuluの完全版は、SKY-HIと参加者の記録ドキュメンタリーとして楽しめるはず。1カ月にわたって行われた富士山合宿、再び集結した追い込み合宿ではボーイズそれぞれの心の内まで見えてくるようである。中でも本気の男泣きシーンは必見だ。
今の時代に求められた育成プログラムとして参考にできる場面も多い。
「僕は当事者でもあるので、彼らが抱えている不安や不満、コンプレックスやいら立ちが手に取るように分かるんです。韓国のK-POPに対して立ち向かうしかないことも言語化して伝えていきました。(指導することに)難しいと思う時もありましたが、オーディションを通じて、彼らは爆発的に伸びていき、合宿のラストは驚異的なパフォーマンスを見せてくれました。指導方法は間違っていないはずです」と語る言葉は、確信に満ちあふれていた。
最終デビューメンバーは、才能を潰さず伸ばすSKY-HI流の指導から導かれた結果でもある。その発表を見逃すわけにはいかない。
<メイク> Megumi Shiizu
<スタイリスト> Yuji Yasumoto