――仮面ライダー、スーパー戦隊の歴代ヒーローを向こうに回し、怪人軍団を率いて襲い来るアスモデウス役は、テレビドラマで個性的なワルなどを演じることの多い演技派俳優・谷田歩さんが起用されました。キャスティングの決め手を教えてください。

これまでに「仮面ライダー」「スーパー戦隊」のどちらの作品にも出たことのない方に来ていただこうと思っていました。谷田さんは、テレビドラマでの役柄を観ていても、非常にいいお芝居をされていると以前から思っていました。歴代スーパー戦隊レッド、歴代仮面ライダーを相手にして戦わなくてはならない「大きな悪」なので、そういったスケールの大きさを芝居で表現できる方がいいなと思っていて、谷田さんに来ていただきました。画面を観てもすごく力強い演技をされ、期待を上回る大ワルになってくださいました。アスモデウスの変身後の姿も、とても力強いデザインにしてもらったので、見るからに「強敵」という感じになりました。

――物語のカギを握る“謎の少年”役は、かつて天才子役として活躍し、今やりりしい17歳に成長された鈴木福さんが演じられていました。映画の中でも特に重要なキャラクターで、福さんの確かな演技力もあって強い印象を残しました。

お名前が挙がったとき、「ああ、この役ならやっぱりそうだよな」と思いましたよ。とても重要な役でしたし、福さんに演じていただいてよかったです。僕が抱いていたイメージにもピッタリでした。

――劇中には、石ノ森先生が当時描かれた、仮面ライダー、秘密戦隊ゴレンジャーそれぞれの決定デザイン画が効果的に使用されていますが、両ヒーローは生まれた年も違いますし、企画の経緯も異なっています。実際に石ノ森先生が『仮面ライダー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』を創造した「事実」と映画は別なものと考えたほうがよいですか。

確かに世に出てきた時期などは違いますけれど、もしかしたら石ノ森先生の頭の中にはこの2つのヒーローを発想するヒントが頭の中にあったかもしれないですよ。現実の世界での石ノ森先生をめぐる出来事と、まったくかけはなれたフィクションというつもりでは作っていないんです。

――田崎監督は1971年の『仮面ライダー』をリアルタイムで観ていたとうかがいました。当時、まったく新しいヒーローとして生まれた仮面ライダーにどんな印象を持たれていましたか。

小学1年生でしたから、完全に『仮面ライダー』直撃世代ですね。第1話「怪奇蜘蛛男」からテレビで観ていましたよ。あのころを思い出すと、なんだか「とてつもない番組が始まったな」という気持ちがありました。同じ年に放送開始した『帰ってきたウルトラマン』(円谷プロ)が健康的な太陽の下で戦うヒーローだとすれば『仮面ライダー』は全体的に暗い、日中戦っていても常に暗さをともなう特殊なムードがありました。

本当はこれ、子どもが観てはいけないんじゃないかという感じでしたが、子ども心にそんな怖さに惹かれて、毎週観ていましたね。そのうち、本郷猛に代わって一文字隼人が仮面ライダーになって、だんだんムードが明るくなってきた。そういったシリーズのうねり、変化も含めて、子ども心にはかなり刺さった作品でした。

仮面ライダースナックのオマケでついているカードを、みんなが集めて大ブームになったのもよく覚えています。そのうちスナックを買い過ぎ、食べきれなくなって、カードだけ取ってスナックを下水に捨てる行為が出てきて社会問題になるんです。あとは、高いところから「ライダーキック」と叫んで飛び降りて、怪我をした子どもが身近なところにいました。まさに、全国の子どもを巻き込んでものすごいブームを起こしたのが『仮面ライダー』なんです。

――1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』を観たときの印象はどうですか。

『秘密戦隊ゴレンジャー』になると、小学校高学年だから、そろそろヒーローものを卒業じゃないけれど、だんだん観なくなる年頃にさしかかるんです。子どもの4~5年は大人に比べてとてつもなく長いですからね。黒十字軍とイーグル組織との諜報戦であったり、機密の奪い合いであったり、スパイアクションをマジメにやっている部分と、仮面怪人とかナゾナゾとかのコミカルな部分があり、『仮面ライダー』とはまた毛色が変わっていて、明るいヒーロー像が打ち出されていましたね。メカニック特撮をふんだんに使っているところでも、この後の東映特撮ヒーローの流れを決めた重要な作品だと思います。

――予告編公開時にも話題になりましたが、今回は『仮面ライダー』の初期エピソードに登場した仮面ライダー1号、通称「旧1号」が登場し、アカレンジャーと一緒に怪人軍団に戦いを挑むそうですね。旧1号のマスク・スーツ造形がかなり当時のイメージに近くて、迫力すら感じました。

今回、すべての仮面ライダーの“はじまり”の姿として旧1号を出そうという話になったんです。マスクもスーツも、もともと展示イベント用に作ったもので、そもそも動くように作られていないんです。だからこそ、ディテールに力を入れていたんでしょうけれど、それが動いて、アクションするというのはなかなか珍しいことだと思います。現場で造形管理の人たちがこだわっていたのは、深紅のマフラーの長さと、風を受けてのなびき方、そして風がないときに肩の左右どちら側に降りているのか、といった部分でした。細かな見せ方をつないで、『仮面ライダー』放送当時の旧1号のイメージに近づけようとしました。

――スーパーヒーローの殲滅をはかる、悪の怪人たちが大勢出てくるのも、こういったヒーロー集合映画の醍醐味ですね。田崎監督が特に印象に残った怪人はいますか?

インパクトがあるのは『秘密戦隊ゴレンジャー』黒十字軍の「野球仮面」ですね。今回も、先頭きって走ってきますから。野球仮面は、ここ数年の「ヒーロー大集合」映画にはずっと出ている皆勤賞の怪人です。倉庫に入れては出され、入れては出されという感じ。

僕が懐かしいなと思ったのは『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)に出てきた「ドロドロ」。彼らの勇姿をぜひご覧いただきたいですね。FRPや硬質ウレタンで出来ているヒーローキャラクターと違って、怪人はラテックス製のやつが多いのですが、ラテックスは経年でどんどん腐っていくので、現存率が低いんですよ。また、『POWER RANGERS』のため海外へ送って、日本に残っていない場合もありますし。今回の映画に出てきた怪人たちは、厳しい選抜や生存競争を潜り抜けてきた、猛者ぞろいということになります。