――飛羽真や剣士たちが数々の問題や試練にぶつかり、なんとか乗り越えようと奮闘するシリアスな場面が続く中、常にひょうきんなオーバーアクションのスタイルを崩さない芽依の明るさは、作品にとてもよい効果を与えていたと思います。

そのように言ってもらえるとうれしいです。私、いつもオンエアを観るのが怖いんですよ。毎回いただく台本には、だいたい芽依が「笑いを取りにいく」ような場面は書かれていませんからね。オンエア直前になって「私、このとき現場であんな芝居をしていたな」って思い出すんです。たいてい変顔だったり、全身を使った感情表現だったり。そんな私の演技が、シリアスな物語の中に少しの安らぎとなっていれば、すごくうれしい気持ちになります。

――芽依のコミカルなパフォーマンスは、川津さんのアドリブによるものが多いのでしょうか。

監督の現場判断によりますね。諸田(敏)監督だと「ここ、芽依なんかやっといて」と、ほぼお任せでした。でも、私の芝居が監督のイメージと違っていたら「違うんだよなあ」なんて言われるんですけどね。そんなときは「えっ、違うんですか!?」って聞き返します(笑)。いったい何が正解なのか、って思いますよね。

石田(秀範)監督の場合、自由にやっといてっていうときもありますけど、「そこでキックしろー!」とか「手でハートつくって!」とか具体的な指定をしてくださるときがあり、演技にも瞬発力が必要になるので毎回おびえていました(笑)。最初のころよりは、対応力がついたかなと思いますけれど。ちょっと心配しているのは『セイバー』の次のお仕事とかでも、ヘンなお芝居をしてしまわないかなってこと。これからはコミカルでハイテンションなだけでなく、地に足がついたシリアスな芝居もこなせるようにもしていきたいです!

――川津さんが『セイバー』に出演する前と今とでは、ご自身にどんな変化が起きましたか?

もともとそんなに暗くはなかったのですが、『セイバー』が始まって半年ほど過ぎたとき、周囲の方たちから「すごく明るくなったし、積極的にコミュニケーションとってくるようになった」と言われることが多くなりました。まったく意識していなかったので、ちょっと驚きましたね。でも、うれしかったです! 芽依のキャラクターに引っ張られて、自分自身がいい変化をしたのかなって。ただ、芽依を演じる機会がなくなれば、元に戻るのかなあと心配もしています(笑)。役柄がプライベートの性格にも影響を与えるなんて、いい役をもらうことができたなって思っています。

――役を演じられたご本人だからわかる、芽依の“いいところ”を挙げてみてください。

芽依って、めちゃめちゃ気遣いの人だと思っています。気を遣いすぎて、ときどき空回りしちゃうこともあるんですけれど(笑)。飛羽真や倫太郎(演:山口貴也)の言葉を信じて、何の疑いもなく一緒についていくところからも、人が好きで、人を信じる力がしっかりあるキャラクターだと思いました。

最初のころは、あまりにもハジケた感情表現ばかりなので、この役どうなっちゃうんだろう? 飛んでっちゃって帰ってこないんじゃないかって心配していたんですけれど、飛羽真たちと同じく、物語が進むにつれてだんだん成長していくことができたのではないかと思ってます。いうなれば、私自身が芽依と一緒に成長できたかなと……。ちょっと“お姉さん”っぽいところもお見せできましたし、かけ離れた性格でもないので、演じていてもやりやすかったです。役と素のギャップに悩むなんてことはまったくありませんでした。

――誰に対しても物怖じせず、とりあえずアプローチをして相手の“懐に飛び込んでみる”といった肝の据わり方も芽依の魅力ですね。第37章では、世界を無に帰そうとしたこともあるバハト(『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』で初登場/演:谷口賢志)の心を動かそうと、ユーリ(演:市川知宏)が芽依のコミュニケーション能力に期待したこともありました。

あのシーンはすごかったです。映画であんなに怖かったバハトにあんな言葉をかけられるのは芽依だけですよね。演じている自分がいちばん怖かった(笑)。第37章の台本を読んだとき、ここはぜったいにコメディーのパートだと思っていて、自分なりに覚悟を決めていました。初めて『セイバー』に参加された柏木(宏紀)監督からも「ここ、期待してるよ!」なんて言われ、目でも圧をかけられましたし(笑)。それでも、コメディーシーンのお芝居は楽しいですし、バハトの谷口さんもすごくいい感じにあしらってくださって、すごく印象に残った撮影でした。

――TTFCのスピンオフドラマ『仮面ライダーセイバー×ゴースト』『仮面ライダースペクター×ブレイズ』の2作でも、飛羽真や倫太郎と共に芽依が『仮面ライダーゴースト』の各キャラクターとコミカルな出会いをする場面が楽しかったですね。

『ゴースト』キャストのみなさんとは「初めまして」とご挨拶した直後、いきなり撮影という感じでした。『ゴースト』の先輩たちはみなさん大人で、演技も落ち着いているんですね。『セイバー』チームとしては、失礼のないようにしっかり自分たちの役回りを固めておこうと心がけました。でも『セイバー×ゴースト』でのジャベル(演:聡太郎)と芽依がコミカルなかけあいをするシーンは、自由にやらせていただきました(笑)。

――仮面ライダー50年、スーパー戦隊45作を記念した映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』で、芽依は飛羽真やユーリと一緒に『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に行くそうですね。ゼンカイジャーのホームというべき「駄菓子カフェ カラフル」のセットに入られたときの感想はいかがですか。

最初はどうなるんだろう?と心配していましたが、意外とすんなり世界になじんで、特に困るようなことはありませんでした。映画の撮影をしているとき、テレビシリーズのほうはいよいよラストスパートで、すごく“重い”雰囲気のシーンが続いていたんです。でも、映画では「みんなで力を合わせて悪い奴をやっつけるぞ!」みたいな、明るく楽しく熱血なムードでしたから……。『セイバー』キャストみんなが戸惑っていたと思うんですけど、ここはもう『ゼンカイジャー』の空気に乗っかっていけばいいんじゃないかってことになり、テレビシリーズのことはいったん横に置いといて、映画の楽しい雰囲気に全力で取り組みました。