RAW編集で遊びたくなる
マニュアル写真モードではRAW形式での記録も可能。RAWとは撮影素子で取り込んだ情報を写真として仕上げる前のデータのことで、JPG画像よりも明るさや色合いの調整する余地が大きく残されている点に特徴があります。
RAWが撮れるスマホは珍しくありませんが、AQUOS R6のRAWは元のセンサー性能が良いだけに、遊び甲斐があるものとなっています。プリインストールされている「Photoshop Express」などの画像編集アプリを使ってそのまま編集できるのも、スマホならではの良さと言えます。
なお、RAWのフォーマットはDigital Negative(.dngファイル)で幅広い編集アプリと互換性を持ちます。RAW記録時は「HDRオート」が利用できないため、夜景撮影で明るく撮りたいときなど、RAW記録に向かないシーンもあります。
「テーブルの上の料理」は苦手
AQUOS R6のカメラは良くも悪くもデジカメ的な特性を備えています。そのため、「スマホのカメラ」としてはクセのある仕様となっているところも見受けられます。
1型センサーの備える光学的な特性は、AQUOS R6のカメラの独特の写りを実現するために欠かせない要素である一方で、万人向けのスマホカメラではない理由でもあります。
特に気になるのは、最短撮影距離が長いこと。15cm離れて小物を撮ろうとしても「もっと離れてください」と表示されます。たとえば、テーブルの上の料理を撮るとき、他のスマホよりと同じように構えてもピントが合わず、意図的に少し引いてスマホを構える必要があります。
また、光学的な性質から得られる「自然なボケ」というメリットは、裏を返せば「ボケが入り過ぎてしまう」というデメリットともなります。たとえば手前の小物と、背景の部屋の両方を写したい場合に、背景の方をくっきり写せないということになります。言い換えれば、スマホカメラ的な「くっきりはっきり」な写りを期待しても、AQUOS R6のカメラでは応えられない可能性もあります。
AQUOS R6のカメラは、あくまでも街や人、風景を撮るのに適したカメラと言えるでしょう。近くのものをくっきり写したり、遠くのものを大きく写したりするのは相対的に苦手と言えます。
余談ですが“ボケ過ぎてしまう問題”は、次期モデルで「可変絞り機構」が導入されれば改良が期待できます。スマホではまれな機構ですが、過去には「Galaxy S9」など数機種で搭載されたケースがあります。
UIの“カメラになり切れていない”部分が気になる
1型センサーとライカの監修によって写りがガラッと変わったAQUOS R6ですが、カメラアプリのユーザーインタフェース(UI)は従来のアプリを引き継いでいます。基本のオートモードは押せば撮れる“ザ・スマホ的”なUIで、料理やネコなどに特化した味付けを加えるAI機能も健在です。
一部、改良されている面もあります。たとえばAQUOS R5Gと比べると、マニュアルモードへの導線が改良されており、カメラアプリを開いて横スワイプするだけと、かなり開きやすくなりました。マニュアルモードは、撮影位置の縦横を切り替えた際にボタンが移動する仕様が見直され、より機動的に使えるようになっています。
しかしながら、タップでの操作や表示、設定がスマホを引き継いでいる部分が多く、カメラとしての機動性を求めている人には物足りないと感じられる部分もあります。
たとえば、マニュアルモードで設定できる項目は前モデルと変わりません。ホワイトバランス、ISO感度、シャッタースピード、フォーカス、色合い、コントラスト、明瞭度という7項目で、画面上のスライダーを動かして設定します。
カメラとしてみると、AQUOS R6のカメラアプリは“色気”が足りないとも感じました。マニュアルモードの撮影設定はシンプルな操作方法ではありますが、「パラメーター調整」をしているような味気なさも感じます。ライカらしい深みのある写真を撮るためのフィルター機能も存在しません。
カメラを試用している中で、操作性に改良の余地を感じる部分もありました。特にボタン操作でズームしたいとき、画角の切り替えに1秒ほどボタンを長押しする必要がある上、ズーム時のプレビューの反応速度もAQUOS R5Gと比べて遅くなっています。
王道かつ覇道。スナップを撮りたくなるカメラ
ここ数年のスマホのカメラの進化には目を見張るものがありますが、AQUOS R6のカメラは、スマホカメラの進化の中では印象的なものです。
シャープが選んだアプローチは、デジタルカメラ用の大きなセンサーをスマホに詰め込んでしまうというものでした。画質の追求という面からは王道のアプローチですが、持ち歩きやすさも求められるスマホでそれをやるのは覇道でもあります。
AQUOS R6は重さ207gと重量級で、スマホとしては大柄で厚みがあることは否めませんが、それでもスタイリッシュなボディデザインに1型センサーを格納してしまった妙技には舌を巻きます。さらに、レンズ設計や画質のレビューにカメラの名門、ライカの監修を仰いだことで、スマホ離れした写りを実現できています。
AQUOS R6の写りには、ついこのカメラを通して街を観たくなる、そんな独特の魅力があります。その特性上、スマホのカメラっぽい撮り方は苦手な面もありますが、写真好きな人ならきっとその価値は理解できるはずです。いつも持っているスマホだからこそ写せるシーンがあり、スマホは写真を活かすための手段でもあります。
一方で、ユーザーインタフェースは“スマホ的”な要素を色濃く受け継いでおり、カメラらしいギミック感に欠けるようにも思えました。
カメラとしての“撮る楽しみ”の追求は、ライカブランドで投入された「Leitz Phone 1」に譲る部分もあるのでしょう。AQUOS R6と共通のハードウェアを用いながらも、独自のデザインと専用の撮影モード「Leitz Looks」を備えた“初のライカ製スマホ”にも大いに期待したいところです。
アップデートでカメラ画質の改善を実感
発売からおよそ3週間が経った7月中旬、AQUOS R6のソフトウェアアップデートが提供開始されました。主にカメラ機能などの改善が行われ、HDRやオートフォーカスなどの意図しない事象が修正されています。ビルド番号は、ドコモ版が「01.00.06」(7月12日提供開始)、ソフトバンク版が「S0023」(7月14日提供開始)です。
ドコモ版の発売時のバージョン(ビルド番号:01.00.04)と、アップデート後(同:01.00.06)を比べると、フォーカス速度の向上は確かに体感できました。写りの傾向は大きくは変わらないものの、空をHDR撮影するとメリハリが効いた絵になる印象です。また、電球色の明かりの下で料理を撮ったとき、白いお皿がより適切な色味になるよう改善されたことも実感できました。