シャープの最上位スマホ「AQUOS R6」。全体の使用感をチェックした前回の「AQUOS R6レビュー(外観・機能編) - 最高にエッジの効いた最上位スマホ」に続いて、今回はライカとの初のコラボレーションで設計されたカメラ機能をじっくりレポートします。

  • ライカ監修カメラを搭載したシャープの最上位スマホ「AQUOS R6」

AQUOS R6は、スマホのカメラの枠を超えた

AQUOS R6はスマホのカメラとしては最大級の1型CMOSセンサー(有効約2,020万画素)を搭載。さらに、ドイツの光学メーカー・ライカの監修により設計されたレンズは「SUMMICRON(ズミクロン) 1:1.9/19 ASPH.」と名付けられています。その描写力は、これまでのAQUOSスマホとは一線を画しており、良くも悪くも“スマホ離れ”している印象です。

  • ライカの「SUMMICRON」の名を与えられたレンズを搭載

7枚構成のレンズが作り出すトロッとしたボケ味は、独特の味わいを醸し出しています。重みのあるディテール表現は、あたかも被写体がそこにあるかのように、質感を写し取ります。

  • AQUOS R6で撮影。スマホらしからぬ自然なボケ表現が魅力

  • 1型センサーをフルに使った超広角レンズの焦点距離は、35mm判換算で19mm相当。構図を選ぶセンスが問われる画角だ

  • 明暗差が激しい場面だが、樹木の質感と照りつける日差しの双方を綺麗に捉えている

AQUOS R6のカメラが本領を発揮するのは街を写したとき。雨に濡れそぼれる花びら、重厚な金属のアーチ、歴史を刻む煉瓦造り……そんな街の何気ない風景をこのスマホを通して“観る”と、新たな発見があることに気付きます。その日そのときの空気感を記憶するような、歯ごたえのある描写はスマホのカメラの中では希有なものと言えるでしょう。

実のところ、AQUOS R6のカメラが“スマホ離れ”しているのは当然と言えるかもしれません。この描写力の要となっている1型のセンサーは、本来スマホ用ではなくコンパクトデジカメのために作られたものです。

そこに組み合わせるズミクロンレンズは、シャープが自社で製造するスマホ用のレンズです。そこにライカの監修によって描写力を高めつつ、1型センサーを搭載したコンパクトデジカメよりもずっと薄いボディに収まる構造を実現しています。

  • 1型センサーにあわせて作られた7枚構成のレンズ

  • AQUOS R6製品体験会で展示されていた分解イメージ。カメラユニットが大きな面積を占めていることが分かる

モノクローム写真がカッコよく撮れる

ライカとのコラボレーションがAQUOSのカメラに与えた変化は、彩度を落として撮影すると、よりはっきりと意識できます。

陰影をキリッと描写するコクの強いモノクロームの写りは、今までのAQUOSスマホにはない、AQUOS R6が初めて獲得したものです。モノクロへの強いこだわりのあるライカの技術者の監修があってこそ実現したものでしょう。

  • モノクロで撮ると見慣れた街も違った風景に見えてくる

  • 階調表現の豊かさはAQUOS R6ならではの魅力

  • 前ボケもいやらしさがなく、味わいがある

なお、AQUOS R6の標準カメラアプリには「モノクローム」の専用モードは存在しません。マニュアル写真モードで「色合い」を0に設定して撮影する必要があります。AQUOS R6のカメラの写りは確かに大きな変化があったものの、カメラアプリ自体は従来のユーザーインターフェースの延長線上にあり、“ライカ的”な機能は見当たりません。

AQUOS R6にモノクロモードが存在しない理由は、ライカブランドのスマートフォン「Leitz Phone 1(ライツフォン ワン)」があるためだと思われます。ソフトバンクから発売されたLeitz Phone 1は、AQUOS R6と共通のハードウェアを持ちながら、ライカらしいデザインと専用の撮影モード「Leitz Looks」を備えています。

ナイトモードが実用的に

スマホのカメラらしい機能としては、ナイトモードの機能向上が顕著です。前世代(AQUOS R5G)のナイトモードは手持ちで撮るとブレることが多く、白飛びしやすい傾向にありました。

AQUOS R6のナイトモードは、1秒ほどの手持ち撮影で真っ暗な環境でもくっきりと撮影可能。手ブレ補正が強力なため、しっかり構えれば手持ちでもブレずに撮影できます。白飛びも抑えられ、明るいイルミネーションをくっきりと撮影できました。

  • 街灯だけの薄暗い道で撮って驚いた1枚。レンガの風合いもちゃんと記録している

超解像処理で6倍ズームに対応

カメラアプリの表示の上では「1倍」となる画角は35mm判換算で24mmと、スマホのカメラとしては一般的な広角です。広角寄りの設定では、1型センサーを端まで使って35mm判換算19mmで撮影可能。アプリ上では「0.7倍」表示となります。

  • カメラアプリのユーザーインタフェース。画角アイコンをタップして切り替えるか、長押しで6倍までの倍率を選択できる

カメラアプリでは1倍、2倍、0.7倍をワンタップで切り替えられるほか、画角切り替えボタンを長押しして0.7倍~6倍(152mm相当)で画角を設定できます。カメラが1つしかないため、ズームはいわゆるデジタルズームになります。ただし、3~6倍の望遠ではウルトラレゾリューションズームという、AIによる超解像処理が働き、画質を整えています。

  • 超広角(19mm相当、表示上は0.7倍)

  • 標準画角(24mm相当、表示上は1倍)

  • 2倍ズーム時

  • 6倍ズーム時(152mm相当)

6倍でズームでも得られる画像は滑らかで、ソフトウェア上の処理が上手く機能しているように見受けられます。とはいえ、細部のディテールは甘めな印象で、さすがに望遠専用のカメラを搭載するスマホには勝てないだろうという印象です。

強力な動画撮影時の手ブレ補正

AQUOS R6は動画の手ブレ補正も強力になっています。横ブレに特化した手ブレ補正機構を導入し、手持ちでもジンバルで撮ったようにスムーズな映像が撮影できます。

なお、前世代のAQUOS R5Gでは「8K撮影」に対応していましたが、AQUOS R6の動画撮影機能は最大4K/60fpsまでの対応となっています。スペックの数字だけを見ると性能が下がったように感じますが、むしろより実用的な見直しと言えます。

AQUOS R5Gで撮る8K映像は暗くなりがちで、実用的なシーンは日中の屋外のみに限られました。また、8Kで撮っても再生機器に転送する手段に乏しく、「8Kで撮った映像の一部をフルHDで表示する」というニッチな用途に特化していました。

一方、AQUOS R6は最大解像度こそ4K対応となっていますが、明るくブレも少なく撮影できるため、映像としての美しさではAQUOS R5Gの8K映像を上回ります。また、AQUOS R6はソフトウェアで映像を8Kにアップコンバートする機能を備えており、「8Kテレビでは8K動画を観たい」というユーザー向けの手段が残されています。ちなみに、AQUOS R6で撮った映像ではないホームビデオなども、動画の形式さえ対応していれば、この機能でアップコンバート可能です(動画ファイル1つにつき最大1分間まで)。