鈴木は本作に出演したことで、いろいろな発見ができたという。
「言葉じゃなく、音楽を通しても、人の感情って相手にすごく伝わるんだなと感じました。また、立夏という役はモノローグというか、心の声が多かったので、間の取り方や表現の仕方がとても大切だなと感じ、そういう面でもすごく勉強になりました。 今後も心の声と体をリンクさせられるように、頑張っていきたいです」
それにしても、近年はいい意味でイケメンオーラを封じ、ひと癖もふた癖もある役どころで、自分の色を出してきた鈴木。『のぼる小寺さん』(20年)の四条役は冴えないネガティブな高校生役を、初主演映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』(同)ではトホホなメガネボーイを、『ブレイブ 群青戦記』(21年)でもキャラが濃いめのボクシング部の高校生を演じた。
「俳優の仕事を始めたとき、1つのイメージを確立することがすごく大切なことだと思う一方で、僕自身はどちらかいうと、自分が出演していることを気づいてもらえないほど、“全く違う”と思ってもらえるような俳優になりたいと思ったんです。だから作品によって違うと言ってもらえること自体はすごくうれしいですし、これからもそういう方向を目指していきたい。もちろん似ている役もありますが、そういう場合も過去作から何かを持ってくるのはナシにしたくて、全部新しいものとして向き合っていきたいです」
目指すべき俳優像について尋ねると「やるべきことはずっと変わらないと思っていますが、やっぱり1つ1つの役を演じる上で、毎回印象が残る役にしていくことを常に目標としています」 とのこと。
「いろんな役をやらせてもらうたびにどんどん楽しみが増えていくし、自分自身の考えも役を通して気づけたりすることがあるので、そういうことも楽しみにつながっています」と、充実の様子を見せた。
■「ゆくゆくは松重豊さんのようになりたい」
俳優デビューして4年、大きな壁はあったかと尋ねると「壁ですか……。難しいですね」と考えたあと、「できないとは思いたくないんです。もちろん今回も、台本をいただいたときに『ギターか! ヤバい。難しそう。無理かもしれない』とは思うんですが、その壁を上手くすり抜けて、自分の心を開放していかないとやっていけない仕事でもあると思っています。だから、壁を感じつつ、それをどうにか乗り越えて、頑張っていきたいです」と襟を正す。
尊敬している先輩俳優について聞くと「目標と言っていいのかどうかは分からないんですが、すごく好きな俳優は松重豊さんです」と、意外な名前を挙げた。
「松重さんが出ている作品なら面白いと思えるし、楽しさを感じられるので、松重豊さんが出ているなら見てみようと思ってしまう。僕もそういう俳優さんを目指したいです。また、松重さんは身長が188cmもあってカッコいいし、尊敬しています。目指すべき存在というよりは遠すぎますが、ただの憧れだとも言いたくなくて。でも、ゆくゆくは、松重さんのように、いろんな人を楽しませることができるような俳優さんになりたいです」
●鈴木仁
1999年生まれ、東京都出身。16年「第31回メンズノンノモデルオーディション」で準グランプリを受賞し、モデルデビュー。翌年ドラマ『リバース』で俳優デビュー。『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS)、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ)、『TWO WEEKS』(カンテレ)などに出演し、『ギヴン』(FOD)でドラマ単独初主演を果たす。主な映画出演作は『4月の君、スピカ。』『小さな恋のうた』『のぼる小寺さん』『ジオラマボーイ・パノラマガール』『ブレイブ-群青戦記-』など。20年には『オレステスとピュラデス』で舞台初主演を務めた。現在、ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京)にも出演中。