新進俳優・鈴木仁が実に面白い。甘いマスクに長身を併せ持ち、MEN'S NON-NOの専属モデルも務める鈴木は、連ドラ『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS、18年)や『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ、19年)などの“イケメン枠”で熱い視線を浴びた。近年はその枠を取り払うかのようにフィールドを広げ、個性的な役柄にチャレンジし続けている。

最新出演作は、フジテレビの動画配信サービス・FODのドラマ『ギヴン』(17日0:00スタート)で、映画化もされて話題を呼んだ『ポルノグラファー』シリーズに続くボーイズラブ作品となる。本作で、個性派共演陣とともに繊細な愛を紡いだ鈴木を直撃。撮影秘話や冒険心旺盛な作品選び、今後目指すべき俳優像についても話を聞いた――。

  • 『ギヴン』に主演する鈴木仁 撮影:蔦野裕

    『ギヴン』に主演する鈴木仁 撮影:蔦野裕

■「歌は苦手で自信がないので…」

今回、彼が演じるのは、高校生ながらも優れたギターの腕前を誇る上ノ山立夏。立夏はある日、天才的な歌声を持つ佐藤真冬(さなり)と出会い、ベースの中山春樹(栁俊太郎)やドラマーの梶秋彦(井之脇海)とのインストバンドに引き込む。やがて立夏と真冬は少しずつ惹かれ合っていく。

舞台『オレステスとピュラデス』でも男同士の深い愛を体現した鈴木だが、もともとジェンダーを超えた愛について、まったく身構えることはなかったそうだ。

「俳優の仕事では、自分じゃない人を演じるので、女性に対する考え方は役それぞれによって違うから、何が正しくて何が間違いとかはなくて、全部正しいと思っています。だから、男性を好きになることはもちろんありえるし、そういうところに偏見は一切ないです」

  • (C)キヅナツキ・新書館 /フジテレビジョン

すでにフジテレビ「ノイタミナ」枠で、アニメ化されている本作。鈴木は最初にアニメを見て、役にアプローチしていった。

「音楽ものということで、音楽の部分がどんな感じなのか聴きたいと思いました。また、もともと僕は猫背ですが、立夏もそうで、学校では姿勢が悪く、力が抜けているところはそのままだなと思いました。でも、楽器を演奏するときの熱量はすごいし、僕は音楽をやったことがほぼないので、立夏というキャラクターをイメージしつつ、台本を読んで作っていったという感じです」

ギターの上級者である立夏。以前、映画『小さな恋のうた』(19年)で、高校生バンドのベース役を務め、劇中バンドでCDデビューも果たしている鈴木は、当時の舞台挨拶で「音楽だけはやりたくないと思っていました」と告白していたが、その件については「いや、音楽ではなく、歌はやりたくないと言ったんです。歌は苦手で自信がないので、できれば避けていきたくて」と苦笑いする。

「そのときにベースをやったことで、楽器の面白さはすごく感じました。それで、今回ギターをやることになり、やっぱり新しいことに挑戦することはとても楽しいなと思いました。ただ、今回ギターを触ってみたら、手の動きがすごく複雑なので、いかにどう上手く見せられるかが勝負だなと思い、かなり練習をしたんです。ギターはメロディーを奏でられるし、アコースティックギターなら、アンプを通さなくてもいいので、もっと練習を続けていきたいなと」

  • (C)キヅナツキ・新書館 /フジテレビジョン

■井之脇海の名前を見て「おお!」

真冬役のラップアーティスト・さなりは、本格的な演技初挑戦となったが、鈴木は「彼は初めての演技なのに焦りがないと言うか、全く浮ついた部分がないんです。アーティストとして活動されているので、お客さんの前で披露するライブシーンでは、すごく安心感がありましたが、他のシーンでも、パートナーとして頼もしかったです。もちろん歌はすごいです! きっとこれまですごく努力をされてきたとは思いますが、僕もこんなふうに歌えたら、歌うことも嫌じゃなかったんだろうなと思いました(苦笑)」

また、バンドのメンバーである井之脇海や栁俊太郎との共演も、心から楽しめたという。

「井之脇海くんは、以前からいつか一緒にお芝居をしてみたいと思っていた役者さんの1人なので、最初にお名前を見て、『おお!』と喜びました。井之脇くん自身が醸し出す安心感や包容力が、秋彦役にマッチしていると思いましたし、ギターとしてもやっぱりドラムに頼らないと弾けないので、すごく助かりました。

また、栁さんはモデルの先輩でもあるので、こうしていつもと違う畑でご一緒できてうれしかったです。紙面の静止画ではなく、俳優として映画のなかで一緒に動いて、バンド演奏ができたことで、きっと見てくれる方も楽しんでもらえるんじゃないかと。今回は4人のバランス感もすごく良くて、 恋愛的かつ友情的でもある言葉がいっぱい紛れてるなとも思いました」