主人公の大志は、非常にポジティブな性格だ。そういう人間を演じると、キャラクターから反対に勇気や元気をもらう効果もあると奥野は言う。「僕はネガティブな人間で(笑)、それは(大志を演じた)今も変わらないのですが、それでも彼のポジティブな明るい面を見ていると、もっと自分でもプラスのことを発言していければ物事が上手くいくかもしれない、そういう風に考え方が変わることはあるかもしれないです」と言う。

俳優としての成長については、「どうでしょうね。第三者に見てもらわないと分からないかも」と謙そんをしつつ、「徐々に人として成長していければなと思っています」と前向きだ。「僕は今までやってきた役で、事前にここまで準備して入った作品はなかったので、1カ月前から徐々に準備できて、役者として良い経験になりました。人として何か成長したかと言われたら難しいですが、これからの役者人生を生きていく中で、今回の経験をして良かったなと思う瞬間が必ずあると思います」。

また、ヒーローを演じることの責任についても考えるという。「ライダーの時に、子どもが観る番組だから子供が観て真似をしてお母さんが注意するようなことはないようにしないといけない。当たり前のことですが、信号を守ろう、食べ歩きをしない、そういうことですが、人として恥ずかしくなく行こうと。プライベートでも恥ずかしい行為はしないよう、それは気をつけながら生きています」。そういった心がけを大変に感じることはないそうで、「辛くはないです。大丈夫です。かっこよくありたいので」と笑顔を見せた。

主演映画『灰色の壁~歯車~』(2021年公開)も控え、出演作が続く。順調なキャリアだが、「心に余裕がある人になりたい」と本音を告白。「今は、作品に入っても次が決まっていないと不安なんですよ。どちらかというとネガティブなタイプなので、何事もポジティブに捉えられるようになればいいなと思っています」と語る。

もちろん、スケジュールが埋まりさえすればいいという単純な思いで仕事はしていない。奥野は、今回の作品のように「絶対出たかった」という強い想いとともに、作品や役柄に全身全霊で挑んでいく。「たとえばLGBT問題や今の新型コロナなど社会的な問題になっているようなことをひとつのテーマとして挙げている作品に携わりたいと思っています。それこそ車いすやパラスポーツというテーマも、もっと知ってほしいと思いますし、僕自身も知らないことが多かったので、もっと深く知りたいなと思うんです」。

■奥野壮
2000年8月21日生まれ、大阪府出身。2017年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにてフォトジェニック賞と明色美顔ボーイ賞をダブルで受賞する。翌2018年にオスカープロモーションに所属し、同事務所の男劇団 青山表参道Xのメンバーになる。そして同年9月、特撮テレビドラマ『仮面ライダージオウ』にて主役の常磐ソウゴ/仮面ライダージオウ役でテレビ初出演にして主演を飾り、注目を集める。同シリーズ劇場版でも主演を務めたほか、ドラマ『ピーナッツバターサンドウィッチ』(20)、『柳生一族の陰謀』(20)など、着実にキャリアを重ねている。主演映画『灰色の壁~歯車~』が2021年公開予定。

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