特撮ドラマ『仮面ライダージオウ』(18)で主人公の常磐ソウゴ/仮面ライダージオウを演じ、俳優デビューして3年、奥野壮がNHKドラマ『超速パラヒーロー ガンディーン』(6月26日スタート、NHK総合 毎週土曜18:05~ ※全3話)で再び特撮ドラマに挑む。しかも今回は、車いすのヒーローという斬新な役どころ。「ジオウの経験がなければ、難しかったかもしれないです」と本作の撮影を述懐する奥野にインタビューし、役作り秘話、特撮作品での経験、俳優としての成長や理想の自分など、さまざまな話を聞いた。
奥野演じる主人公・森宮大志は、パラ陸上のトップアスリートを目指して頑張る高校生。役作りで肉体改造に挑戦し、筋トレで5~6キロ体重を増やして撮影に入った。「王道の筋トレで、上半身のありとあらゆる部位を鍛えました。1日1時間くらい集中して行い、それを1カ月間。乳酸パンパンという感じでした(笑)」。
日常生活で使う車いすを借り受け、それでの生活に加え、競技用の車いすでレースの訓練もした。「車いすだとトイレに座るときなどの乗り換えが大変で、どうしても足を使ってしまう。ダントツで坂がきつく、一緒に住んでいる兄の手を借りることが多かったです」と苦労を回想。また、競技用車いすは「早さが全然違う」と言い、「スピードが出るので怖い。コーナーでどれだけ減速せずに曲がれるかなど、実際にやってみないとわからない難しさがありました」と語った。
その役作りは大変ながら、「充実していました」とも。鍛錬を通じて、役に近づく達成感もあったようだ。「徐々に(上半身が)大きくなっている感覚を楽しんでいました。一緒にレースを走る方たちの体がめちゃくちゃ大きいので、そこに入って行かなければならなかった。僕はもともと華奢で1カ月やそこらでは近づけないことはわかっていたけれども、できるだけ近づけようと体作りを始めました。でもだんだん鍛えていくなかで結果が目に見えてわかってきたので、楽しいなと思いました」。
特撮ドラマのヒーロー役は、俳優デビュー作の『仮面ライダージオウ』に続いて2度目だが、当時の経験を今回「生かせた」という。「1年半、ライダーを経験したことで、アクションはもちろん、怪獣が現れた時のリアクションや何かに驚くリアクション、そういった特撮ならではのリアクションなどは、以前の経験があったからこそ撮影を止めずにスムーズにできたと思います」と分析。また、芝居のテクニカルな側面だけでなく、マインド面にも生かされた。「たとえば、目の前に10メートルくらいの怪獣がいますと言われても動じず、瞬時に対応できるのは、特撮をやっていたからだと思います。想像することにつまずかなかったです」。
主人公の大志は、ひょんなことから強化スーツに身を包み、車いすのスーパーヒーロー「ガンディーン」として地球を侵略する者と死闘を演じる。車いすのまま怪獣めがけて突進してゆくキャラクター。本作の制作統括・西村崇氏は、奥野の起用理由について「ライダーは選ぶ理由にはなっていないです」と言いつつも、「ライダーで1年間、鍛えられた演技力の確かさは感じました。奥野さんはオーディションでしたが、演技力はもちろん、顔つきもよかったんです」と彼のヒーローとしての実力に太鼓判を押した。
その奥野は、「ヒーローは改めてかっこいいと思いました」と2度目の感想を語る。「もちろん変身した姿もカッコいいのですが、内に秘めているもの、その人の心などが映像として観られるので、人の心を動かす真っすぐなところがいいですよね。子どもから大人までどの世代の人が観ても応援したいな、なりたいなと思ってもらえるようなヒーローは魅力的だなと思います」。
もしも以前の経験がなければどうだったか聞くと、「ひるみはしなかったと思いますが、ジオウの経験がなければ難しかったかもしれないです。やはり特撮は撮影方法がちょっと違っていてアフレコや変身もある。いないものを想像で作らなきゃいけないし、特殊な部分がやはり多い現場なので、その時々でどうしようと思ったかもしれません」と答えた。