奈良県のローカルテレビ局・奈良テレビが、公式Twitterで手描きのイラストなどを用いた番宣ツイートを投稿し、ジワジワと話題になっている。バラエティ番組『ゴッドタン』の佐久間宣行プロデューサーや、ドラマ『共演NG』の大根仁監督、さらには『アノニマス』に主演した香取慎吾など番組関係者も反応し、SNSというデジタルツールでのアナログな温かさが魅力になっているようだ。
なぜ、このようなユニークな取り組みが生まれたのか。同局の担当者に話を聞いてみた――。
■発案者が異動後もスピリッツを受け継ぐ
奈良テレビは、全国ネットの系列に属さない「独立局」と呼ばれるテレビ局。自社制作番組だけではタイムテーブルを埋められないため、多くの番組を友好局であるテレビ東京から購入している。
一方で、従来のホームページでの広報だけでは番組を話題化させることが困難な中、Twitterで番組編成担当の“生の声”を届けたいと考えていたのが、この取り組みを発案した、前任者の松谷隆史氏(現・報道制作部)。番組を購入する立場では、出演者の入ったバラエティやドラマの場面写真を自社のTwitterで掲載することが難しいことから、“手描きのイラスト”というアイデアを思いついた。
最初に投稿したのは、19年1月25日放送のドラマ『フルーツ宅配便』をプレビューした感想を手書きポップ風に描いたもの。松谷氏は乃木坂46のファンで、それからは乃木坂メンバーが出演するドラマを中心にイラストを描いて、地道に番宣ツイートを行ってきた。
その松谷氏が編成部から異動になると、番組内容チェック(プレビュー)担当の平田美保氏(08年入社)が引き継ぐことに。お笑いが大好きな平田氏は「プレビューという天職のような業務を毎日こなす中で、面白かった番組を家族や友人、社内にまで触れ散らしていたことと、工作好きというのが抜てきの理由だと思われます」ということで白羽の矢が立ち、「前任者の『写真がダメなら絵を描く!』というパンクスピリッツを投稿に込めて取り組んでいます」と意欲的に臨んでいる。
■担当者3人で三者三様のスタイル
この熱が伝わったのか、『ゴッドタン』で投稿したピン芸人のシェイク・ヒロシのイラストツイートに対し、佐久間Pが「奈良テレビの愛ある番宣大好きなんだけど、シェイクヒロシ似てなさすぎる笑」(20年9月15日)と反応。徐々に多くの人の目に留まるようになってきた。
そんなお笑い番組やドラマを中心に描く平田氏に加え、奈良県が大好きで19年に入社した清水美里氏は、奈良県が取り上げられる番組を積極的にイラスト化。「はじめは、放送地域である奈良県の人に向けて番組の告知をすることが第一の目的でしたが、奈良テレビのTwitterを見てくださる方が増えてきた今、Twitter告知を通して全国の人に『奈良テレビ』という地方の放送局を知ってもらうきっかけになれば、大変うれしく思います」と、やりがいを語っている。
さらに、松谷かすみ氏(19年入社)は、プレビューした番組の見どころをまとめてイラストに文字を添えるほか、歌番組『洋子の演歌一直線』の出演者と曲目リストを黒板に書いた写真をツイート。このように三者三様の色を出して、バラエティ豊かなアカウントを構成しているのだ。