14年消えなかった電気を消した日から1年、95%がテレワーク継続希望

こうしてテレワークを開始してから2週間程度で、コミュニケーションに関する課題が現場から出てきた。出社している状態に比べてコミュニケーションがとりづらい、時間がかかるといった内容だ。しかし、しばらくすると収まったという。

「慣れてくると通勤ストレスがなくなる、この状況下に家の中にいられるといったメリットが出てきたようで、当初あったクレームも少なくなりました。深夜勤務できる場が自宅に用意しづらいという声もあったのですが、何とかして場を作ってでも、出社するよりは在宅勤務がいい、となったようです」と広瀬氏は現場の感触を語る。

もちろん、機能面で不満がまったくないわけではない。例えば、従来ならば簡単な図をメモにして見せれば解決できたことが、オンラインホワイトボードでは代替しきれないという声がある。マウスで図を描くのは、メモ用紙にボールペンで描くのとは段違いの手間がかかるからだ。それでも、全体としてはテレワーク継続希望の声が多いという。

「メンバー全員と1on1の面談をしていますが、95%はテレワーク継続希望です。マネジメント面でも違和感はないですね。コンタクトセンターが立ち上がってから14年間、震災の時でも出社して業務をしていた部署です。その消えることのなかったフロアの電気を消す場面に立ち会えたのは印象的です」と、池田氏はテレワーク対応が難しいと感じていた部署がテレワークに全面移行したことの感慨を語る。

課題は在宅勤務ならではの働き過ぎとメンタルケア

さて、テレワークが普及した現在、「残業が多くなる」「働き過ぎてしまう」が課題ともいわれている。しかし、ネットワンシステムズの場合、元々あった顧客対応の区切りをつけるための残業以外、現場での残業は特に増えていないようだ。

「受けた仕事はキリのいいところまではやりたい、という気持ちがあるので多少残業が発生することもあります。働き過ぎの課題は、管理職にありますね。自由度が高まってしまったことで、プライベートとの区切りが難しいこともあります。もともと業務が24時間なので、深夜にエスカレーションが来ることはあったのですが、区切りがつきづらくなった弊害を感じることもあります」と、広瀬氏は苦笑する。

移動時間がなくなったことでミーティングが隙間なく入ってしまう、会議室予約が不要であるため会議が簡単にできてしまうという課題もあるようだ。

一方、現場スタッフとしては通勤負荷がないことで多少の体調不良程度ならば無理なく働けるために欠勤率が下がっている傾向があり、テレワーク継続希望者も多い中、性格的に不向きな人も出てきているようだ。

「一部では在宅が続いていることで心身の不調を訴えている人もいます。こうした人たちをいかにケアするかが課題ですね。現状では、様子を見ながら時々出社させて気分転換をさせるなどしていますが、十分ではないかもしれません」と広瀬氏。

XOCは比較的順応性が高いと社内では評価されているが、それでも全員が在宅状態に快適さばかりを感じるわけではない。コミュニケーションの課題への対応としては、テレワーク開始以来、業務時間以外に毎週任意参加のオンライン飲み会を開催している。

自由な会話だと盛り上がりづらいオンライン飲み会の特性に合わせ、テーマトークが気軽にできる仕組みを作るなど工夫をしながら、1年で44回を開催。継続的な取り組みで、孤独感解消に取り組んでいる。今後はさらに、業務上で個々人が感じるコミュニケーション課題にも対応が検討されそうだ。

国内26組織のみのCOPC認証取得で顧客満足度85%を達成

多少の課題を抱えつつも、概ね成功状態にあるXOCの原則テレワーク化。利用顧客からの評判がどうなのかといえば、こちらも問題は出ていないという。

「私たちのVDI環境はセキュリティもしっかりしており、PCにデータを残す、家で印刷するといったことはできません。それでも不安に感じるお客さまもいるので、PCのカメラを利用したのぞき見防止ツールの利用や、生体認証を利用したセキュリティ強化も考えています」と、広瀬氏。

「こういうことがあったらどうするのか」という顧客の疑問には、都度対応を行っているが、信頼のベースとなるのは「COPC認証」の取得だろう。これは、コンタクトセンターのサービスクオリティや顧客満足度、運営管理手法など多数の項目にわたる基準をクリアした組織だけが取得できる認証で、世界でも69組織、日本では26組織しか取得していないものだ。

「仕事のプロセスを可視化し、目標を設定して一定期間でクリアし続けなければいけないなど、非常に高いハードルの認証です。障害対応のアンケート結果で満足度85%を取得しなければいけない、決まった時間内で連絡を返さなければいけないなど細かな目標を設定しています。従来はお客さまから一定の評価をいただいても、客観的な指標は示せませんでした。国際的な認証であるCOPC認証を取得したことで、アピールできるようになったと思っています」と、広瀬氏は厳しい認証であることを語る。

XOCは、コンタクトセンター業務も行いつつ、技術的な保守を全面的に担当する総合テクニカルセンターだ。電話対応だけでなく、オンサイトの機器交換なども行う。原則テレワークとなった現在も、必要に応じたオンサイト保守は当然継続している。

一般的なコンタクトセンターと比較して複数工程を持っており、業務内容も複雑だ。コンタクトセンター向けのCOPC認証を取得するため、より取得が難しかったという。常に向上し続ける組織にしか取得できないCOPC認証を維持しながらの原則テレワーク化を達成したネットワンシステムズは、今後も細やかな課題解決に取り組みつつ高品質なサービスを提供しつづけてくれそうだ。