社内の働き方改革に遅れをとっていたコンタクトセンター
ネットワンシステムズは1988年の設立以来、最先端技術を取り入れた情報インフラ構築やサービスの提供を行ってきた企業だ。ITシステムの維持・運用が企業にとって重要な役割を担っている中、企業のIT活用促進に寄り添ってきた同社は、24時間・365日体制で企業システムの監視・運用・保守サービスを提供している。
監視・運用・保守サービスを窓口となるのが「XOC(エキスパートオペレーションセンター)」だ。リモートで監視・障害対応を行いながら、必要時には現地対応人員の手配や部材手配を行い、迅速な解決を行う。絶え間ない顧客対応を主体としているだけに、テレワークへの対応がなかなか進まないのが実情だった。
「会社としては以前から働き方改革を行い、在宅勤務ができるようにVDIの導入やCTIのクラウド化するなど一部業務の変更も行ってきました。しかし、コンタクトセンターだけは仕事の性質上、テレワークが進んでいなかったのです。コロナ禍でなんとかテレワーク化できないかということで、急遽オペレーターのトレーニングや機器変更を行いました」と語るのは、ネットワンシステムズ カスタマーサービス本部 エキスパートオペレーション部 部長の広瀬健治氏だ。
テレワークのためのインフラの整備は2019年から行われ、他部署ではテレワークが行われていた。しかし、業務の都合上テレワークには向かないと判断し、出社を前提に動いてきたコールセンターがコロナ禍への対応で急遽全面的なテレワークへと移行することになる。テストから実行まで、わずか1カ月程度。急な移行となったが、稼働してからは特に問題もないという。
オフィス内で「疑似テレワーク」など納得できるまでテスト
「問題が起きたら集まって会話をする習慣があったので、テレワークによって物理的に離れてうまくいくのかという不安がありました。われわれのミッションは障害復旧なので、スピードが求められます。一人で悩むと時間がかかってしまうのです」と広瀬氏。
技術を持つスタッフ同士でちょっとした会話をすれば、つまずいていた部分も解決できる。テレワークになって、今まで集まって解決していたことが、集まることができなくなった時にどうなるのかという不安があった。オンラインで顔を合わせて話すにしても、そのために余計な時間がかかるのでは本末転倒だ。
テレワークになったからといってサービスの質を変えないこと、出社して行っている業務のすべてが継続できることを前提としての検証が行われた。従来のサポートで利用していたツールがすべて利用可能なのか、スタッフがコミュニケーションに心理的な負担や課題を感じることはないのかも重視されたという。
「まず、オフィスの中で離れて座り、疑似テレワークをしてみました。本当に何かあれば近くに人がいて、集まれる状況です。その形でやってみて、できそうだと判断できてから、テレワークに踏み切りました。元々導入されていたWebexなどツールを利用することで、集まって会話で着ないという問題は解消できました」と、広瀬氏は振り返る。
すでにWebexを中心としてツール環境は整っていたこと、スタッフが全員高い技術を持っていたことから、テレワークにまつわる主な課題は心理的な側面と、細かい使い勝手に集中していた。仕事のしやすさをチームごとに工夫し、業務とメンバーによって、朝礼や夕礼でだけビデオチャットを利用する、連絡内容によってチャネルを使い分けるなどで対応するようになった。
「業務時間中はWebexを開いて顔を見られる状態にしておくけれど、普段の会話は文字チャット、電話代わりに音声チャットと、多いところは3つのチャネルを使い分けるなど工夫しています」とネットワンシステムズ カスタマーサービス本部 エキスパートオペレーション部 副部長の工藤英幸氏は工夫を語った。
高性能ヘッドセットで深夜の在宅勤務も無理なく実現
ネットワンシステムズは、BYODを利用できる仕組みも整備しており、自宅にネットワーク環境がない社員もいなかったという。また、会社から貸与しているスマートフォンがテザリングも可能であるため、貸与PCと組み合わせて引っ越しのような一時的に回線の都合がつかない時期も問題なく乗り切ることができた。
しかし、コンタクトセンターの業務に従事する300名強のうち、半数を占めるパートナー企業のスタッフの場合は環境がまちまちだった。
「パートナーに協力いただくことは高い壁になりましたが、各社の管理者と対話し、個々に対応してもらいました。あの状況で出社は避けてもらいたかったので、こちらからモバイルルータの貸し出しなどを行って各社の対応を待ったのです。現在は、パートナー各社に理解いただき、テレワークを実施できています」と広瀬氏は語る。
回線とノートPCだけでなく、ノイズキャンセリング機能も持つ高機能なヘッドセットを全員分用意したのも、成功のカギだ。コールセンターという会話が多く発生する業務であり、24時間対応を行うため深夜の会話も発生する中、家族に負担をかけず高い品質のサービスを提供するためのツールとして予算がつけられた。
「高性能なヘッドセットにしたことで、小さい声でもしっかり伝わりますし、スピーカーではないので家でも使いやすい。電話対応の声が家族の邪魔になるのはもちろん、生活音がお客様に聞こえてしまうことも不安でしたし、実際に適当なスピーカーやイヤフォンでは問題も出ました」と、ネットワンシステムズ カスタマーサービス本部 副本部長の池田和之氏は語る。このヘッドセットも、パートナー向けの貸し出しを行い、効果を実感してから各社で購入してもらうようにしたという。