とにかく光のあるほうに生き続けた円四郎。彼の口癖・江戸弁の「おかしれえ」も彼の生き方を端的に示している。

円四郎の「おかしれえ」精神に似た感じの言葉を発している幕末の志士がいる。長州の攘夷派・高杉晋作である。大河ドラマ『花燃ゆ』で高良健吾が演じていた人物で、高良は「高杉を演じたので長州側の気持ちもわかるし、今回は喜作側の気持ちもわかる。両方の気持ちがわかるということに役立っています」と語っている(マイナビニュース 2021/03/14「『青天を衝け』高良健吾、大河ドラマの面白さ実感「役が成長する感覚」『花燃ゆ』経験も生かす」より)ほどで、この時代には重要な人物である。

高杉の辞世の句「おもしろき こともなき世を おもしろく」と円四郎の「おかしれえ」に近いものを筆者は感じる。「面白くない世の中を自分の心持ち次第で面白くする」精神である。幕末は時代の終わりと思うととかく血なまぐさいイメージがつきまとうが、暗く思い詰めるばかりではなく、こんなふうに状況を面白く捉えようとしていた人たちもいたのである。

高杉は今のところ『青天を衝け』には出てきていないが(禁門の変の時には投獄されている)新しい時代に向けて役者が揃ってくる。15回で薩摩の西郷隆盛(博多華丸)が登場し、第17回では長州藩士・井上聞多(福士誠治)や伊藤博文(山崎育三郎)も登場した。彼らが新しい時代に向けて活躍していくことだろう。

第16回はお休みだった徳川家康(北大路欣也)コーナーで、「大事な徳川の家臣が次々と亡くなり~」「尊王攘夷運動が最後の盛り上がりを見せていました」と語るとき、背後で蠢く黒子のようなダンサーたちの持った球体が戦うように動き、やがて消える。次に「新しい人材が出てきました」と紹介するときは、ひとつの球体が灯る。時代の移り変わりをコンテンポラリーダンスで見せるセンスの良さは見逃せない。

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