――侑斗の明るい面がデネブとのやりとりで強調される一方で、侑斗の切ない面は良太郎の姉・愛理と接するシーンに表れましたね。もともと「桜井侑斗(大人)」の婚約者でありながら、彼の記憶を失っている愛理にとって、過去から来た侑斗は「良太郎のお友だち」程度の認識でしかありません。侑斗と愛理の微妙な関係性は『電王』のストーリーを引っ張る大事な要素のひとつでした。愛理役の松本若菜さんとの共演シーンについてはどんな思いがありましたか。

愛理さんと侑斗が二人でいるシーンは、通常とは少しベクトルが違う印象です。(桜井のことを)思い出してもらいたいけど、思い出してもらえないというのが切なくて……。若菜さんは僕より年上の女性で、あまり現場で話す機会もなくて、あの頃はなんとなく距離があったかもしれません。だからこそ、画面上から侑斗の“よそよそしさ”が出ていたように思います。今になると、愛理と侑斗の関係性ってキツいな~、侑斗は辛いだろうな~って心の底から思えますけれど、あの当時はそこまでの重さを感じながら芝居をしていなかったですね。

――『電王』テレビシリーズ最終回の撮影を終えたときの心境を聞かせてください。

最後に撮ったのは、デネブとゼロライナーがいなくなるシーンでした。このとき、デネブと一緒にいるのもこれで最後なんだなあ……と思った瞬間、もうガチ泣きになってました(笑)。まさかこの後、何度もデネブと一緒に過ごす機会が来るなんて、ぜんぜん想像してなかったですから。でも、テレビシリーズのすぐ後に撮影した映画『クライマックス刑事』がクランクアップしたときも、現場で思いっきり泣いていたんです。これで本当に最後なんだ……と思うと涙が溢れてきました。まあ同じ年に『さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウント・ダウン』をやるんですけどね(笑)。

――モモタロスだけ単独登場したり、イマジンがアニメになったりして、『電王』のキャラクターはその後も仮面ライダーシリーズの垣根を越えて出没し、作品の高い人気をうかがわせました。中村さんも『超・仮面ライダー電王&ディケイド NEOジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦』(2009年)『仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー THE MOVIE 超・電王トリロジー EPISODE RED ゼロのスタートウィンクル』(2010年)、『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(2015年)と映画作品にゼロノス/侑斗として出演されていますね。

『超・電王トリロジー EPISODE RED』のあと、一度芸能界を離れたんですが、『仮面ライダー3号』のときに俳優復帰をしたんです。劇場での舞台挨拶のとき、ファンのみなさんがあたたかく迎え入れてくださったので、とても感激しました。

――『電王』の放送10周年を記念したトークイベント(2017年2月23日開催)でも中村さんが大泣きされていたのが印象的でした。

あれは佐藤健くんの思いに感動したんです。イベントの前日、健くんからすごい久々に連絡が来て「明日のイベントで生電話したいから協力して」なんて言ってくれたんです。当日、劇場いっぱいに健くんが話している声が聞こえてきたとき、自然に涙が出ていました。

――昨年あたりから、中村さんは『仮面ライダーアギト』(2001年)の賀集利樹さんとの交流が活発になり、お二人でオンラインイベントに出演されたり、東京駅地下街の「仮面ライダーストア」に行かれたりしているそうですね。

賀集さんとは昨年(2020年)Twitter上で知り合って、メールのやりとりをしていくうちに意気投合したって感じです。僕は『アギト』をテレビで観ていましたし、賀集さんが出演していた刑事ドラマとかも好きでしたから、仲良くなれてうれしかったです。

――中村さんが思う「特撮ヒーローの魅力」とは何だと思われますか?

仮面ライダーに限らず、ヒーローにはいろんな「夢」が詰まっています。僕自身、すっかり大人になった今でも、もしかしたら「念」とか使えるんじゃないか、とか思ったりすることがあります。頭がお子ちゃまなもので(笑)。自分じゃない何かに変身して、カッコよく戦いたいっていう気持ちも、捨てきれないんです。

いま僕はバンコレ(バンダイファッションコレクション)さんのモデルをやらせていただいているんですが、この前『機界戦隊ゼンカイジャー』のツーカイザー/ゾックスの衣装モデルを務めたとき、めちゃめちゃテンション上がったんです。もう衣装を着た瞬間、自分がツーカイザーになったような気分(笑)。こんな風に、いつもの自分から別な自分へ「変身」できるというのは、本当にステキだなって感じました。たくさんの人が持っている変身への夢や憧れが、形となって表れている。それが特撮ヒーローの大きな魅力なんじゃないでしょうか。これからも特撮ヒーローを、そして仮面ライダーを愛していきたいと思います。

(C)石森プロ・東映