具体的なアドバイス

それでは具体的なアドバイスをみていきましょう。

まずは家族のマネープランを立てる

お子様が小学校に入学するまでにマイホームを持ちたいと考えていらっしゃるDさん。お子様は今5歳ですから、すぐにでも購入したいということだと思いますが、住宅ローンの借入額によっては今後の家計に大きな負荷となる可能性もあります。早急に、かつ慎重に検討していきましょう。

そこでまずDさんご夫婦にやっていただきたいのが、長期的な家族のマネープランを立てることです。

ご家族構成を拝見すると、ご主人は定年まで約13年で、一般的には老後資金の準備を本格的に取り組みたい年齢です。一方、お子様はまだ5歳と小さく、これから支出が増えていくようになります。ほかにも今後、車の買い換えなども何度か必要になることも考えられますし、お金がかかるイベントが次々訪れます。

これらのことを考えないまま住宅の購入価格を思案するのは賢明とは言えませんし、住宅ローンを組むのもリスクを伴います。一度、家族のライフプランとそれに伴うお金の出入りを時系列に書き出してみてください。書いているうちに、次のような疑問も出てくると思います。まだよくわからないことは大体のイメージでかまいません。

  • ご主人の定年時(60歳)には退職金は支給される? そうならば、見込み額はいくら?
  • ご主人の会社では役職定年などのように、実際の定年前に給料が下がることはある?
  • ご主人は定年後、再就職などで働く予定はある?65歳の年金開始までの無年金期間はどうする?
  • お子様の進学希望は? 私立? 公立??
  • 必要な進学資金の額によっては、奨学金の利用も考える? 自己資金だけでまかないたい?

ライフプラン表やキャッシュフロー表は、日本FP協会や多くの銀行がひな形をホームページ上で提供しています。そのままダウンロードして利用してもいいですし、これらを参考に自分で作っても構いません。大切なのは長期的に考えることです。ご夫婦の老後まで書いてみてください。

家計を見直し、月々先取り貯蓄をする

ライフプラン表やキャッシュフロー表を作成すると、貯蓄の必要性を感じられると思います。それぞれの目的別に、計画的に準備していくためにはボーナスに頼らず、月々の家計から貯蓄に回していくことが大切です。現在の収支を拝見すると月に2万円の黒字の状況ですが、さらに黒字を増やして貯蓄に回せるよう、家計の見直しをしてみましょう。

たとえば、食費が8万円で少し高めのようですが、外食やデリバリーなども含まれているのでしょうか。あくまで多くの世帯の平均値ですが、総務省の家計調査(2020年)によると、3人家族(世帯主が60歳未満の勤労者世帯)の1カ月の食費平均額は約7万4,000円です。外食の回数を減らせないか、食材に無駄な買い方がないかなど確認し、節約してみましょう。

保険料も高めのようです。お子様が小さいため保障を厚くされているかと想像しますが、かけ過ぎではないか、加入内容をもう一度確認してみてください。遺族年金や高額療養費制度など、公的保障もあります。住宅ローンを組む際には団体信用生命保険に加入するようになりますので、その後は死亡保障を削減することは可能です。保険料も節約できます。

また、お子様の保険料(1万円)は学資保険(こども保険)でしょうか? 教育資金目的で加入されているのでしたらいいですが、もし死亡保障や医療保障をかけられているのであれば解約してもいいでしょう。

その他、レジャー費はボーナスから出し、月々の家計では組まないようにするなど、さまざまな費目で節約の工夫をしてみましょう。「先取り貯蓄」をしておけば、残った手取りで生活を工面しなければなりません。節約心もより沸いてくるのではないでしょうか。

ローン返済額は維持費も含めて今の家賃内に納まるように計画

ではこれから、住宅購入について考えていきましょう。最初に検討していただいた、ご主人の退職金や定年後の計画等によってもローン返済計画が変わってきますが、意識していただきたいのは次のポイントです。

定年後のローン返済は避ける

住宅ローン返済額と維持費を合わせて、現在の家賃(12万円)内に納める

今の貯金を全額頭金につぎ込まない

ご主人が定年時にはお子様は18歳で、大学進学時期に重なります。Dさんは49歳でまだまだ現役。労働収入は見込めますが、お子様の進学後の学費や自分の老後資金の準備も必要です。仮にご主人が60歳~65歳まで無収入だとすると、ローン返済を続けるのは厳しいと考えられます。

マイホーム購入後は固定資産税をはじめ、さまざまな維持費がかかります。ローン返済額を家賃額に合わせてしまうと、今より支出が増える計算になります。Dさんの収入が今より増えれば別ですが、今の収入額のまま支出が増えるのは避けなければなりません。購入後の維持費を住居費として月々貯めていき、ローン返済額と合わせて今の家賃額を超えないように計画してみましょう。

これらを踏まえ、今すぐ住宅ローンを組んでも返済期間は13年。月々貯める維持費は物件によっても変わりますが、仮に月3万円だとするとローン返済月額は9万円です。金利上昇リスクを極力抑えられるように「金利は10年固定金利特約型1.35%」「ボーナス払いなし」「元利均等払い」の条件でシミュレーションすると、借入可能額の目安は1,280万円です(※監修者試算に基づく)。

これに頭金を加えた額が購入可能な物件価格となりますが、頭金としていくら入れていいかは家族のマネープランにもよります。ただ、住宅購入にかかる諸経費と緊急予備資金(生活費6カ月分)も確保しておくことが必要です。

緊急予備資金はDさん世帯の場合は約260万円、仮に諸経費を100万円、緊急予備資金以外に置いておきたい貯金額が200万円だとすると、頭金として入れられる金額は240万円(800万円-260万円-100万円-200万円)になる計算です。

この場合、物件価格は1,480万円となります。金利や親からの援助などの条件によってはもう少し物件価格を上げられる可能性もあります。Dさんの収入が上がるのを待って、もう少し頭金を多めに入れる方法もあります。希望する物件を見つけるのが難しいかもしれませんが、さまざまな方法を検討しながらマイホーム購入のご希望が叶うよう願っています。


今回の相談内容と皆さんの家計簿に似ている部分があるようでしたら、ぜひともFPの方のアドバイスを参考にしてみてくださいね。