俯瞰の類義語として使える4つの言葉
次に類義語についてみていきましょう。俯瞰の代わりに使える言葉としては、「展望」や「瞰視」、「鳥瞰」や「大局」などの言葉が挙げられます。
展望(てんぼう)
「展望」には俯瞰と同様に、物理的な意味の「遠くまで見渡すこと」「眺め」「見晴らし」と比喩的な意味の「社会の動きや物事の行く末を見通すこと」という2つの意味合いが含まれています。
物理的な意味として使う例
・ヘリコプターから広がる眼下の展望は圧巻だ
比喩的な意味として使う例
・将来に対する展望がない
・これからの時代の展望を有識者に聞いた
前者は実際に目の当たりにしているものではなく、どうなっていくかわからないものを見通している様子が表現されています。また、後者の例では実際に遠くまでよく見える様子が表されています。
展望と俯瞰の大きな違いは、展望が幅広く見渡す様子に対し、俯瞰は高いところから見下ろしている様子を表している点にあります。
瞰視(かんし)
「瞰視」という言葉の意味を調べると、「見下ろすこと」「俯瞰(ふかん)」と出てきます。俯瞰と同様の意味を持っていますが、物理的な意味しか持っておらず、比喩的な意味として使えないのが俯瞰との大きな違いです。
・高層ビルの最上階から下界を瞰視する
・飛び込み台からプールを瞰視する
上記の例が「瞰視」の使い方ですが、一般的にはあまり使われない言葉です。
鳥瞰(ちょうかん)
「鳥瞰」とは、「上空の高い地点を飛んでいる鳥が上から広範囲を見下ろすこと」「全体を見渡すこと」です。鳥瞰的という表現もよく使われます。
・鳥瞰的視点を常に持って仕事にあたるようにしよう
「鳥瞰的」は「俯瞰的」と同様の意味で用いることが可能ですが、ビジネスシーンでは「鳥瞰的」という言い回しよりも「俯瞰的」という言い回しの方が一般的です。
大局(たいきょく)
「大局」の意味は、「物事の全体の成り行き」という意味と、「囲碁における勝負が決まる重要な局面」という2つの意味がありますが、俯瞰と類似の意味として使われるのは1つ目の「物事の全体のありさまや、成り行き」という意味です。
・革命によって変わる時代の大局を見る
・大局的見地に立つ
どちらも全体像や全体の見通しから本質をとらえようとしていることがわかります。
俯瞰の対義語
続いて、俯瞰の対義語をご紹介していきます。広範囲を見渡す俯瞰の対義語としては「偏狭」「近視眼的」「仰視」などが挙げられます。
偏狭(へんきょう)
「偏狭」とは、「度量が小さく自分だけの狭い知見にとらわれること」という意味です。
・偏狭な考え方をしているせいで、全体像が見えてこない
・偏狭な性格は好かれない
特徴は、主に性格や考え方などを表す言葉として使用されることです。
近視眼的(きんしがんてき)
「近視眼的」とは、「全体像が把握できておらず、目先の細かい部分しか見えていない状態」のことを表す言葉です。
・近視眼的な考え方のせいで選択肢が狭まっている
全体を包括的に見る俯瞰に対して、限られた狭い範囲を見る視点ということで比喩的な意味における俯瞰の対義語として使われます。
仰視(ぎょうし)
「仰視」とは、「あおぎ見ること」です。
・大きくそびえ立つ像を仰視する
・大きな時計台を仰視する
「仰視」は実際に物体を見ていることから、比喩的な意味としてではなく、物理的な意味としての俯瞰の対義語としてよく使われます。
俯瞰の正しい使い方を理解しよう
物理的な意味と比喩的な意味の2つの意味を持ちあわせている俯瞰。ビジネスシーンではよく使われる言葉です。そんな俯瞰には、既に「見る」という意味が含まれていることから、「俯瞰で見る」と言ってしまうと二重表現になり、日本語として間違った表現になってしまいます。
ビジネスシーンでよく使われる言葉だからこそ、このような間違いをしないよう、正しい意味や使い方を理解したうえで適切に使えるようになりましょう。