埼玉・春日部のスナックで夜の世界へ足を踏み入れ、25歳で銀座の店でナンバー1になり、29歳でママに。クラブだけでなく、美容事業の経営にも乗り出し、さらには動画やSNSで発信するなど、コロナ禍でも止まることのない菜々江ママのバイタリティはどこから来るのだろうか。小池は「やっぱり自分の仕事が好きで、誇りを持っていることだと思います」と見る。

「全然職種は違うんですけど、私は女優をやり始めた時期に『グラビアをやってた人が…』とかいろいろ言われて、『何でそういうこと言うんだろう?』ってきょとんとしてたんです。私は過去の仕事にも全部誇りを持ってやっていたから。きっと、菜々江ママも『春日部? 田舎のスナックでしょ?』とか、嫌味を言われていたと思うんです。それを受けて、恨みつらみや悔しさだけで走ると間違った方向に行って、嫌な奴になる可能性もあると思うんですけど、そっちにパワーを注ぐんじゃなくて、『何を言われたって私は恥じてないわよ!』という初心への誇りが根底にあるから、何をやっても腐らないんじゃないかなっていう気がしています」

さらに、「自分に自信を持つとか、誇りを持つってなかなか難しいし、意識しないとできないことだと思うんです。でも、それを繰り返すことで、いつの間に気持ちの強い人間になって、堂々とした立ち居振る舞いになるものだと思うので、菜々江ママにもっともっと過去のエピソードを聞きたいですね」と、興味とリスペクトが尽きない。

■舞台で思いがけず涙「この仕事が好きなんだ」

1年以上に及んでいるコロナ禍だが、その中での自身の変化を聞くと、「生活の中でいかに無駄が多かったんだなと思って、シンプルになりました」という小池。それに加え、「自分は仕事に依存してる部分があったなと気付かされました」とも語り、仕事への向き合い方を見つめ直す機会になったようだ。

「1度目の緊急事態宣言のときに、みんなガッツリ休んだじゃないですか。あのときに、仕事をしていない自分の生き方というのを、すごく考えましたね。その結果、この仕事を離れたとしても、ちゃんと自分の人生を生きていく考えを持たないといけないなと思って、頭の中がすっきりしたんです。その分、仕事の大切さとか、自分がこの仕事を好きなんだって、改めて思えるようになりました」

特にそれを感じたのは、先日まで上演された舞台『日本人のへそ』でのこと。「千秋楽で涙が出たんです。今までは終わったら『ウェ~イ!』『やったー!』っていう達成感とかうれしさが大きかったんですけど、お客様を見たら感謝の気持ちと、自分はやっぱり舞台が好きなんだという思いになって。舞台で泣いちゃったのは新人のとき以来初めてで、自分でもびっくりしました」と、心境の変化を明かしてくれた。

  • 検査入院する菜々江ママ (C)フジテレビ

●小池栄子
1980年生まれ、東京都出身。98年にドラマデビュー。08年には主演映画『接吻』で毎日映画コンクール女優主演賞など、11年『八日目の蝉(※)』でキネマ旬報ベスト・テン助演女優賞など数多くの賞を受賞、16年には舞台『グッドバイ』で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。女優として数多くのドラマ、映画、舞台に出演し、『カンブリア宮殿』(テレビ東京)、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)ではMCを担当。今年は映画『地獄の花園』『いのちの停車場』(いずれも5月21日公開)、来年には大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)が控える。
(※)蝉は、虫へんに単の旧字体